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窓を持つツボ「気穴」

2018.08.13 08:37

宮川浩也先生(みやかわ温灸院院長/日本内経医学会会長)は、

ツボには(365穴のうち)、【気穴】(※腎経の气穴ではない)という特別なツボがあり、

  1. 蔵兪(陰経五兪穴の計25穴)と、
  2. 府輸(陽経五兪穴+原穴の計36穴)と、
  3. 熱兪(頭部の熱をもらすツボ+胸中の熱をもらすツボ+胃中の熱をもらすツボ+四肢の熱をもらすツボ+五臓の熱をもらす背兪穴の計59穴)がある。

この気穴は、窓(気の出入口)を持ったツボである。

窓を持っているので皮膚に存在する。

皮膚に存在するのだから、鍼は浅く刺さねばならない。

窓があるのだから、鍼を刺したあとの開け閉めは適切に行われなければならない。

この開け閉めこそが【開闔の補瀉】である。

補法とは、窓を閉じて気の漏出を防ぐことである。

瀉法とは、窓を開いて気の有余をもらすことである。

と、誌上で、気穴の所在と、気穴に対する浅刺や開闔(窓の開け閉め)等の刺鍼の要諦が、〈素問・気穴論篇〉に由来することを詳解されています。

これを根拠に、やはり蔵府治療、すなわち経絡の補瀉調整を行うのは四肢の要穴がその主役であり、浅く刺して鍼口を閉じたり開いたりしなければ、本来の効果を最大限に引き出すことはできないと言えます。

また、背部兪穴は二通りの使い方ができます。

熱兪として使う場合は、四肢同様、浅く刺して窓を開いて排熱するべきです。

例えば、アトピー性皮膚炎を治療する場合は邪熱の排熱が基本となりますが、多くは気分の熱を清熱解毒します。

気分は肌肉に相当します。

肌肉は脾の司りです。

〈素問・刺熱論篇〉に五臓の熱は三椎下~七椎下に反応が現れるとあります。

すなわち診断点であり治療点となります。

脾の熱は六椎下の霊台に出てくるので、霊台を瀉せば脾臓=肌肉=気分の熱を冷ますことができますが、瀉法を行う場合は窓を開ける刺鍼手技を加える必要があるということです。

それで熱兪として作用させることができます。


〈素問・刺熱論篇〉「・・・熱病氣穴、三椎下間主胸中熱,四椎下間主鬲中熱,五椎下間主肝熱,六椎下間主脾熱,七椎下間主腎熱,・・・。」 

もうひとつの使い方として、腰背部の筋疲労をとるのを目的とするならば、虚実寒熱を見極めて開闔の補瀉をする必要はなく、コリ所見(硬結や筋張り)を目当てに置鍼したり、必要に応じて深く刺しても構いません。

頑固な硬結には、お灸がよく効きます。

器質的な変性疾患には、刺絡をする場合もあります。

この論は、初学者だけでなく、中堅~ベテランの先生方にも有意義なものになるのではないでしょうか。


少なくとも、我々経絡治療家にとっては、普段の臨床で何気に行っている本治法で、なぜ四肢の要穴を使うのか、なぜ補法の場合は去ること弦絶の如く抜鍼と同時に鍼口を閉じ、瀉法においては下圧をかけて抜鍼し、鍼口は閉じないのかが、とってもクリアになりました。

また、東洋はり医学会が開発した補瀉の技術は、この気穴に対して最高のアプローチをしているということを、より一層認識することができました。

「補法のテクニック(tonification technique)」

「瀉法のテクニック(draining technique)」

お陰様で、本治法で四肢の要穴に補瀉をする理論的拠り所が、さらに磐石のものとなりました。

宮川先生には、心より感謝申し上げます。

より深く学ばれたい方は、〈素問・気穴論篇〉を熟読してください。


宮川先生には、日本伝統鍼灸学会で何度かお目にかかりましたが、それ以外にも様々な媒体で、宮川先生の教えの一端に触れさせていただいております。

いつも思うのですが、本当に分かりやすくスッと入ってきます。

そんな先生の書籍を1冊ご紹介させていただきます。 

温灸の専門書ですが、冒頭で経脈にも触れておられ、初学者でも経絡や気血が理解しやすい内容になっていてお得です。

特に鍼灸学生のみなさんに読んでもらいたいです\(^^)/

もちろん臨床家にもお勧めです。

是非ご購入されるとよいかと思います。