現代思想2-ベルグソン「生の哲学」
2023.08.28 11:18
1907年アンリ・ベルグソンの「創造的進化」が上梓された。ベルグソンは客観よりも主観を重視する、例えば人間にとって時間はゆっくりすすんだり、遅くすすむと感じることがある。科学的な考え方では人間の内実が捉えられない、と批判する。啓蒙とか科学といっても上から人間に与えるだけではないか。
ベルグソンは人間の内的な生命にこそ光をあてるべきと考える、例えば虹は7色だといってその虹の美しさが捉えられるわけでもない、人間を内側から捉えねばならないのだ。「創造的進化」ではダーウィン的な進化論を外的に捉えただけど批判し、生命の内的衝動こそが進化の原因であると提唱する。
なんとまあ啓蒙主義への総攻撃である。啓蒙主義から発した科学技術が発展したが、人間の精神、生命の充実にはつながらなかった。貧者は飲んで日頃のうさを晴らし、ブルジョアは歓楽や外国旅行を楽しむだけである。刺激と享楽がいや増していっただけである。
「神が死んだ」欧州で、その代わりにギリシャ時代のルーツを求め、ナショナリズムが勃興する。そして皮肉なことに「生の充実」のために戦争を願うまでになる。第一次世界大戦が始まると皆「祖国」のために団結し、祖国を守ることに生きがいを感じるというまでになった。