映画『アステロイド・シティ』:人生の意味を探求する詩的な瞑想。
ウェス・アンダーソン監督の最新作『アステロイド・シティ』の初日上映に参加した体験をシェアいたします。
出演者には、ジェイソン・シュワルツマン、スカーレット・ヨハンソン、エドワード・ノートンなどの常連組。さらにはトム・ハンクス、マーゴット・ロビーまでが名を連ねています。撮影は青い空がウエス色で美しい、スペインで行われたそうです。
ウェス・アンダーソン監督は、独特のシンメトリー、カラーパレット、独自のダイアログスタイルで知られています。私自身は、英会話の先生の推薦で彼の作品を観始めました。特に『フレンチ・ディスパッチ』や『ムーンライズ・キングダム』の世界観には魅了されています。
今回の作品についても、監督の独特の構図とデザインが目立ちますが、映画全体としては「?」という感じでした。特に日本語字幕と長いセリフが多少の負担をかける形となっていました。
日本公開初日ということもあり、YouTubeでの日本人によるレビューはまだ存在しない状況でしたので、外国人のレビューを参考にすることで、より深く内容を理解することができました。
注意:以下、ネタバレが含まれます。
劇《アステロイド・シティ》では、人口わずか87人の砂漠の街アステロイド・シティで開かれるジュニア宇宙科学賞の祭典に集まった人々が、群像劇を繰り広げるという設定です。
印象に残ったシーンを挙げます。
①戦場カメラマンの父(ジェイソン・シュワルツマン)、ジュニア宇宙科学賞候補の息子・三つ子の女の子が、車に乗ってアステロイドシティーにやってきたところからです。車が壊れたので、修理をお願いするところでした。部品を変えて、すぐに修理は完了したかと思いきや、エンジンをふかすと直っていない模様。「これまで経験したことのない、3番目のケースだから仕方ない」みたいな、シーンです。
②戦場カメラマンの父親が、親父(トムハンクス)に電話をするシーンです。「母親が亡くなったことを、子供たちに知らせていないが、タイミングをどうするかで悩んでいる」とと相談すると、親父は、「いつだってタイミングは悪いんだ」と。
この2つのシーンから、諦めの境地というか、受け入れるしかない、みたいな、そんな哲学が伝わってきて、ウディー・アレンを彷彿とさせました。
③ジュニア宇宙科学賞の候補としてやってきた、天才学生たちが、天才ならではの遊びをしているシーンです。天才という共通の仲間だからこそ、楽しめるゲームを楽しんでいるのです。自分がありのままでいられる仲間との一体感、幸せが表現されていて、とても共感しました。
④戦場カメラマンと女優(スカーレット・ヨハンソン)が対話しているシーンです。「悲しみを味わったもの同士だから、共感しあえる」と話し合っているところも、共感の大切さについてを物語っていました。
⑤宇宙人が、ジュニア宇宙科学賞授賞式の日に、宇宙から落ちた隕石を拾いに、地球にやってくるシーンです。戦場カメラマンの父は、すかさずエーリアンを撮影し、翌日大ニュースになりました。
学校では、宇宙人の話で持ち切りに。授業では、水星の話を女性の先生は生徒にしようと準備をしていたのですが、子供たちは宇宙人の話をしたくてしょうがないのです。
先生は、「そのことについては、用意していないから、教えられないわ」と言います。そのやりとりをみていたある男性が、女性の先生の代わりに説明をしてくれて、一件落着。
そこで間髪入れずに、男子児童が急に歌を歌いだし、みんな踊りだすのです。まるで、井上陽水の「夢の中で」のようだわ!と思いました。(笑) 「まだまだ探す気ですか。それより僕と踊りませんか?」え!!!!みたいな展開です。
考えても仕方のないことだから、踊って今を楽しもう!ということでしょうか。
⑥舞台裏シーンでは、戦場カメラマン役の俳優が演出家に「これでいいのか?」と、相談していて、「とにかく続けなさい」というやりとりもありました。
映画のキャッチフレーズは「人生の意味を探求する詩的な瞑想」です。これがこの作品の核心を突いているのかもしれません。
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では、印象に残ったシーンについて、ChatGPTにまとめてもらいましょう。
- 受け入れと諦め: いくつかのシーン、特に劇の初めや戦場カメラマンの父親と親父(トムハンクス)との会話、では「受け入れるしかない」というテーマが強く出ています。運命や状況をどうにも変えられないとき、どう受け入れるか、それが重要であるというメッセージが込められています。
- 共感と一体感: 天才学生たちのシーンや戦場カメラマンと女優(スカーレット・ヨハンソン)の対話では、人々が共感し、一体感を感じる瞬間が描かれています。共通の経験や才能、感情を通じて人々が結びつく美しさが強調されています。
- 現在の楽しみと遊び: 宇宙人が地球に来るシーンや男子児童が歌を歌い出すシーンは、考えても仕方がないことから目を背けて、その瞬間、その「今」を楽しむというメッセージがあります。
- 疑問と探求: 舞台裏シーンや学校の授業、宇宙科学賞の話などは、人々が何を求め、どうあるべきかという疑問に満ちています。その答えは明確ではありませんが、それでも人々は「続けなさい」と励まされ、探求を続けます。
- 人々と環境の多様性: シーン毎に様々な背景や立場の人々が登場しており、それぞれが異なる視点や価値観を持っていることが強調されています。
これらのテーマ性は、人々がどのように「生きる」か、何を「価値あるもの」と感じるかに関連しているようです。それはある種、人生そのものの多面性や複雑性を象徴しているとも言えるでしょう。それぞれのシーンが、このような普遍的なテーマを異なる角度から照らし出していると感じました。
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ウエス・アンダーソン監督作品は、一度や二度の鑑賞では解明しきれないですね。何度も観ることで、その多層性に気づき、それぞれの層がどのように結びついているのかを理解する旅は、ウエス・アンダーソン監督の作品特有の楽しみ方かもしれません!