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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

『食べる順番ダイエット』を題材に、私なりの『科学的思考』を書きます③

2018.08.16 21:55

おはようございます。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。

前回の続きです。『食べる順番ダイエット』を題材にして、『私は、こんなことを考えます』ということを書いてます。

特定のダイエット方法に関して意見したいというわけではなく、面白そうな題材を見つけたなって感じです。 


この話を通して、書きたいことは、『少ない前提知識を使って効率的に、非科学的な考え(商品、ダイエット法、治療など)に引っ掛からない方法』です。


 私がこのダイエット法の評価に関して使ったのは、下記です。

  1.  体重減少には、摂取カロリーを減らすことと、消費カロリーを増やすこと以外に科学的に証明された方法がないという知識 
  2. 『反対にして考える』という自分の中の習慣 
  3. 「『代替エンドポイント』と『真のエンドポイント』を分けて考える」という習慣 
  4. 「統計的に意味があることと、臨床的に意味があることの違いを考える」という習慣 


今日は、3に関して書きます。

『代替エンドポイント』と『真のエンドポイント』を分けて考える。


この考え方は、不慣れな方には少しとっつきにくいかも知れません。なるべく医療従事者でない方でも理解できるように書きます。頑張ります。


そもそも、エンドポイントという言葉がそもそもわかりにくい( ゚Д゚)。

エンドポイントは『結果』なんて訳されます。

つまり、


本当に知りたいこと=真のエンドポイント

真のエンドポイントとはちょっと違うけど関連のありそうなもの=代替エンドポイント


です。


代替エンドポイントを調べる意味は、真のエンドポイントがなんらかの理由で集めにくいため、代替エンドポントで推測するしかない(非常にまれにしか現れない症状だったり、調べるために体にダメージの大きい検査をしなければいけなかったり)時に役立つことです。


わかりづらいですよね(+_+)

なので、実例を挙げます。


このダイエット法の真のエンドポイントは、『体重変化』です。

一方、代替エンドポイントは『血糖値の変化』です。


このダイエット法を行うにあたって、「俺(私)は、どうしても食後の急激な血糖値上昇をおさえたいんだ~!!」と考えて取り組む人はいないはずです。みんな、「体重を減らして~!!」と思うから取り組むわけです。

極端に言えば、血糖値がどうなっていてもいいわけです、体重が減れば。。。

でも、血糖値の動きと肥満は関係があるので、血糖値の動きの話をされると「ほ~、なるほど。」とも思うわけです。



さて、私は『食べる順番ダイエット』に関して、初回の記事に下記の内容を書きました。


食べる順番を変えることで、普段の食事内容・量は変えずに、運動もせずに、体重を落とすことができる。

 メカニズムとして、野菜を先に食べることで、血糖値の急上昇を抑えることができ、肥満防止効果がある。


実は、webサイトでメカニズムとして謳われているのは、下線部の部分だけなんです。データとしてどの位の体重減少があったか?とかは書かれていません。


『血糖値の急上昇を抑えることができる』というのはホントに欲しい結果ではありません。そして、血糖値の急激な上昇は肥満と関係は『ありそう』ですが、どの程度のインパクトがあるかはわかりません。極端に言えば、『血糖値の急上昇は抑えられました。でも体重は増えました。』なんてこともあり得るわけです。つまり、結局は『実際に体重変化のデータを、信頼できる方法で集め、解析してみないとわからない』んです(+_+)。


で、医学研究に関わったことがある人間は、おそらく皆こんな見方をします。 「ダイエットに関する研究なら、当然、体重変化を調べているはず。だって、一番インパクトのある真のエンドポイントだし、しかも調べるのが簡単じゃん。でも、その結果を書いていない。ということは、恐らく、真のエンドポイントには効果が無かったんだろう(体重は減らなかったんだろう)」と。 もしも説得力のある体重減少に関わるデータがあるならば書かないわけがありませんので( 一一)。



ちなみに、この時に「何か理由があって、体重変化を調べなかったのかも知れない」とは考えません。なぜかというと、ダイエットにおける体重変化のような超重要な結果の測定を見落とすような愚かな人の示したデータは信頼できないからです。。。なので、書いた方へのリスペクトも込めて上記の様に考えます(「きっといろんな苦労があったんだね。」と同情もします笑)。


では、なぜ、このダイエット法のwebサイトはこの様な回りくどい書き方をしなければいけないのか?

それは、明らかな嘘を書くことは許されないルールになっているからです。


嘘を『書いたら』アウトです。完全なブラックです。でも、都合の悪いことを『書かない』ことは、誠実ではないかも知れませんが嘘ではありません。グレーです。

全部をバカ正直に書かずに、自分の主張を裏付けるようなデータだけを書きたい。この気持ちは、医学研究のエキスパートでない私にも大いに理解できます。


健康食品やダイエット法などの紹介でよくあるパターンかも知れませんが、この様に関係がありそうな『代替エンドポイントの結果』と『顧客の声(体重が2か月で13㎏減りましたみたいなやつ)』を一緒に書くことで、

『体重減少に効果があった。』と書かなくても、相手が勝手に「体重減少効果があるんだ」と考えてくれることを期待してこのような表記になっているんじゃないでしょうか(*_*;。

(通販CMとかだと、小さい文字で「これは個人の感想で、効果を保証するものではありません」とか書いてありますよね(;'∀'))


少し意地悪な見方かも知れませんが、ほぼ無意識にこんな風に考える習慣が付いています。科学的思考という程大層なものなのかはわかりませんが・・・。

なので、多分このダイエット法は特別効果的じゃないんだろうな~と思った次第です。

次回に続きます。


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。 

  理学療法士 倉形裕史