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伝える技術、消えた学問「レトリック」

2018.08.17 06:59

 何かを相手に伝えることは、とても難しい行為だ。自分自身も本当に自分の真意を伝えることは苦手だ。間違った受け止め方をされたり、伝わったと思っていても、検討違いな誤解を受けたりする。

 

 人類史においてレトリックという説得術があった。大昔は、数学や天文学のようにこの学問の研究が盛んに行われていたが、現在はこの学問は消滅してしまっている。ローマのキケロからアメリカを独立に導いた開拓者たちまで、この数千年の間、リーダーにとってレトリックは必要な学問であり、技術であった。この「人生の武器として伝える技術」という書籍にはレトリックを用いた説得の技術があますことなく記されている。


個人的にこの本は、とても読み難かった。事例がアメリカの政治的な事例を用いているため、また基本は英語をベースとしたコミュニケーションを紹介しているためだと思う。しかしながらベーシックな部分のレトリックの技法は、これである程度頭に入れることはできる。

但し、このレトリック法を使いこなし人々を動かしていくのは、かなりの至難の技だろう。おそらく体系をな学んでも、これを実践するには其れ相応の訓練が必要だと感じる。


レトリックのベースにあるのは、3つだ、

1.エートス(人柄)

2.パトス(感情)

3.ロゴス(論理性)

この3つを用いて、相手に共感してもらい行動を促す。しかし頭ではわかっていてもなかなか実践するのは難しい。


またこの3つを使用する前に、伝えることの定義付けもしっかりと行わなければいけない。

・会話、議論の目的と時制を定めること

・強調したいのは、上記の3点のどれなのか

・説得に適したタイミングと手段を考える。

これらを定義して、はじめてエートス、パトス、ロゴスを用いて説得していく。

 

 とてもざっくり纏めると以上のような趣旨の内容だが、詳細なテクニックもかなり細かく書かれている。たとえば、論理の誤りの見抜き方。たとえば、相手の能力の見極め方など。たしかになるほどとは思うが、果たして自分がこれらを上手く扱えるかというと、とても修行が足りない。会話に夢中になり、これらのレトリックを駆使する余裕なんて全くないのが実情だ。

ただ、そうは言っても、例えば講演会の動画などを、この本を読んだ後に視聴すると、全く見方が変わる。自分自身がすぐ実践することはできないにせよ、伝え方が上手い人を論理的に分析することは、とても勉強になる。

是非一度、古来の人々が研究し続けたレトリックの技術を参考にして頂ければと思う。


最後にとても参考になったレトリックを紹介したい。


非難:過去形で語られる

価値:現在形で語られる

選択:未来形で語られる


つまり、何かを選択してもらう時、人は未来形で語る。非難をするということは過去を語っているということ。また価値については現在のことを称賛と糾弾することに他ならない。

未来を語ることは、レトリックとして大きな武器になり得るということだ。

より多く未来を語っていきたいものだ。