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精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

ツヤキベリアオゴミムシ

2018.08.17 08:14

Chlaenius spoliatus motschulskyi Andrewes, 1927 

オサムシ科 

体長・15mm前後 

分布・北海道、本州、四国、中国大陸、朝鮮半島 

環境省レッドカテゴリ・絶滅危惧Ⅱ類 

全身が煌びやかな緑~赤の金属光沢を帯びる。「黄縁」の名の通り、上翅の縁は黄色く縁取られる。体表面はツルツルしており、他のアオゴミムシ類の大半種のように細毛で覆われることはない。全身が青緑をした日本のアオゴミムシの仲間としては、比較的大型種。何よりも、全身の強い金属光沢がまばゆいほどに美麗で、採集のしにくさもあいまってゴミムシマニアの間では非常に人気が高い。ゴミムシ界のタマムシと言っても過言ではない。

河川敷のヨシ原、ため池の岸辺など、開けた湿地に生息する。開放的な環境であること、地面に泥がむき出しの裸地と草が密生した場所の双方が存在することが、本種の生息に重要なように思える。時に、人工的な埋め立て地にて多数の個体が突発的に得られることもあり、本来、洪水・増水などで河川や湖沼が水没したり氾濫した結果、定期的に植物が洗い流されて更地になるような地面を好む種と思われる。国内での分布は広いが、近年も安定して生息が確認されているのは関東平野くらいと思われる。また、北方系の種のため、西日本ほど発見は至難となる。今世紀以後、少なくとも関西より西でまともな記録などないのではなかろうか。


夜行性で、日中はどこかに隠れている。私はこれまで、本種が確実に生息する場所において、昼間に水辺に打ち上がった流木や石の下を裏返して本種を発見できた事がない。他方、日没直後に水辺の泥が乾いてひび割れた隙間や、ケラが掘った坑道から這い出す個体を見ており、もしかしたら比較的地面の深い所に好んで潜んでいるのかもしれない。

夜間、湿地の泥上を非常に素早く走り回り、他の小動物を捕食する。翅が発達しており、灯火に飛来することもある。常に攪乱される不安定な環境を求めて、頻繁に飛んで移動している様子が窺い知れる。

平野部にある、そうした不安定な湿地環境というのは往々にして、植生の遷移進行や人為的な開発行為により消滅しやすいものである。大きな河川が海へと注ぐ河口域には、しばしば海水の影響を受ける湿地帯(塩性湿地)が発達し、こうした場所も本種にとって好適な生息環境たりえていた。しかし、進行する沿岸域の埋め立てにより、各地でそのような湿地は消滅していった。そして現在、からくも本種が生息している場所も、決して安泰が保証されている訳ではない。

近似種コキベリアオゴミムシC. circumdatus Chaudoir, 1856。ツヤキベリと同様、湿地環境に生息する。その名の通り、ツヤキベリより小型の個体が多いが、時にそこそこでかい個体もいるため、パッと見とても紛らわしい場合がある。ただし、コキベリの方が背面から見たときに胸部の幅がずっと狭い。上翅の黄色の縁取りの内側は黒っぽい紫で、光沢も格段に鈍いので、よく見れば区別は優しい。ツヤキベリよりは遙かに個体数が多く、また南方系の種ゆえに西日本や南西諸島でも見られる。


※引用文献

後日追加。