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更夜飯店

忘れえぬ想い

2018.08.17 10:53

忘れえぬ想い

Lost in Time/忘不了

2006年3月9日 渋谷シアターNにて

(2003年:香港:108分:監督 イー・トンシン)

この映画は、貧乏の映画だと思うのですが、貧乏くさくないのです。

ストーリーだけ追えば、バス運転手の婚約者(ルイス・クー)を事故でなくしたシウワイ(セシリア・チャン)が、彼の残した子供を抱えて、1人バス運転手となって、奮闘、いつもお金がなくて困ってしまっているところに手をさしのべる、バス運転手仲間のファイ(ラウ・チンワン)って事で、綺麗なセシリア、もう、綺麗な格好なんてしません。Tシャツ、ズボン、スカートにしてもGパン生地のスカートにスニーカー。

がっしがっしと歩く。家事もぞんざいで、ミルクをコップに入れるのもじゃばじゃばこぼしてしまう。

家族と疎遠で、1人で意地を張るセシリアの「なんで上手くいかないの?」という必死の表情が、とても美しいし、それを助けるラウ・チンワンも素敵、というよりへなちょこ初心者のバス運転手、セシリアにお手本の走りを見せたり、さりげなく家事をしたり、子供の相手が上手かったり・・・という下心がありそうで、ないような雰囲気をもったラウ・チンワン、誠実そのもの。でも何となく奥手な所がある。

これが観ていて気持ちいいから、あ~・・・とっても貧乏を描いても貧乏くさくないんです。そこが良かったですね。

バスといっても、あの香港の大きな2階建てバスではなくてミニバスで、停留所もない、バス版タクシーみたいなものでお客さんを乗せる、降ろすなんて所はバスというよりタクシーです。そこが興味深い。これは、「私ここで降りる~~~~」とはっきり断言できないと乗れない乗り物です。客の取り合い、警察も取り締まりがきつい、ヤクザもからんでくる・・・そんな所に女手ひとつでやっていけるのか・・・そんな不安をセシリアは、かわいそうというより、「私、やるもん!」という意地でやるところが格好いいです。

でもさすがに「涙の女王」・・・あまりのつらさに、顔をゆがめて泣く時のあの声。ちょっとかすれていて、他の誰にも出来ないあの泣き声。

あれをされたらたまりませんねぇ。ラウ・チンワンでなくても、助けたくなりますが、同時に意地っ張りがすぎて、気が強すぎるという面も上手いです。ちょっと自分でバリアーを張って、他人をわざと寄せ付けないようにしている意地の張り方がいいんです。

綺麗な風景が出てくる訳でなく、家の中や、バスの中、バス運転手の詰め所、市場といった普通の人々、という実感がある映画で、それがまたあま~い部分を上手く緩和している、観ていてとても気持ちいい映画です。

子役の子は原田大地くんという、日本人と中国人のハーフです。う~ん、第2の金城武は原田大地くんか?