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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

世界大戦へ14-デイリーテレグラフ事件

2023.09.04 11:29

ビョルケの密約だけでなく、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世は、自分の思いつきを軽々しく発言することが多々あった。例えば1904年にベルギー国王レオポルド1世が訪独したとき、一緒にフランスを攻めようと言ったそうだ。その数日後今度はオランダ女王の夫に向って、ドイツはイギリスを攻めると言った。

そのような舌禍がついに国際問題となったのが1908年10月28日に起こった「デイリー・テレグラフ事件」である。独皇帝はイギリスで休暇中に、懇意のワートリー英大佐と話したことが新聞に載った。新聞は確認のため原稿をドイツに送ったが、チェックするべき宰相ビューローは休暇で、たらいまわしにされて下級官吏が承認のサインをしてしまった。

この記事の問題は、ボーア戦争への列強の介入を独皇帝がさしとめたとか、軍艦の建造は極東の国への対策だとか、自分はドイツの少数派の親英だとか、国家機密を知人としゃべっていることや、イギリス、ドイツ世論もわき返り、皇帝は落ち込んで本気で退位を考えるほどだった。

独皇帝の気質もあるが、国際関係におけるドイツの立場が表れているといえる。ドイツは急速に大国となり、国民は大国と思っていたが、列強としては新参で植民地も出遅れている。そのギャップが独皇帝のチグハグな大言壮語となった。ドイツはますます孤立し、日本もドイツ贔屓を見直すようになった。