室堂
歴三十年にして棄権は二回。一回は言わずと知れた、「あの日」の敵前逃亡。ゆえに、事実上は一回。忘れもせぬ道志村、初めてのトレイル。たかが二十キロ、となめてかかるに洗礼を浴び。限り尽くせど見えぬ関門に無念の涙。出走するからには完走を、というのが選手の心情。せめて、もう少しの猶予あらば。
霧に見舞われれば足下も見えず、一歩先が断崖だったなんて、ほんとの話。何せ山の天候はきまぐれ。山頂ゴールは保証されぬ以上に、関門の制限時間が何とも酷で。最終関門「室堂」に到達するは閉門の二分前。例年はここが事実上のゴールとなるはずも山の天気は快晴。六年ぶりの幸運に恵まれた以上は。
前人未到の偉業を達成したか如く綴ってみたものの、「室堂」まではバス便ありますゆえ、天候さえ合えばそこから数キロで山頂に。とすると、やはり結果より過程が。
ということで、本題。市が策定する計画の妥当性、進捗、結果等について質問を、との下命はやぶさかならずも、「総合」計画とあらば全ての分野を網羅し。分厚き冊子を片手に三日で仕上げよと。まずは相手を見て。
全五百七十二事業は概ね良好、との自己評価に「あっぱれ」の四文字で終わる訳にもいかず。もっと高き目標を課すべし、と迫るも一案なれど、その前にまず足下はどうか。木を見て森見ず、他が疎かになっては。
コンビニのレジに同じ、IC化といえど未だ現金派も少なからず。ましてやバス利用者に老齢多く。精算時にまごつくは周囲に迷惑。予め釣銭を用意して。釣銭は自動払いというけれども機械とて万能にあらず、不測の事態に備えて乗務員に渡されるは両替用の小銭。額とて少額のはずが、突如廃止の宣告あって。苦情の際は本庁管理課の直通を記した名刺を渡せ、というけれど、それで済むはずなく。
小銭の着服とて無きにしも非ず。少額とはいえ、一つのミスが大々的に報道されるから発覚前に給食費の未納が如く自腹で、なんて行為が行われていないとも限らず。ならば、いっそ乗務員から手持ちの現金を取り上げてしまえ、ってのは些か短絡的というか、発想そのものがどうなんだ、と。仮にそうだとするならば乗務前後の点検を徹底すれば防げる話。
いや、部外者が何をか言いわんや、当局側に立派な言い分があるやもしれぬ。ならば、貼紙に理由を付すべきであって、それすら示せぬというのはやはり示すに示せぬ事情、示すは不都合、もしくは、有無を言わさぬ意思表示としか。
理由が付されぬ一枚の貼紙に見る両者の関係。完全に上から目線で下僕が如き扱い受けるは屈辱以外の何物でもなく。彼らとて奴隷じゃあるまいに。百歩譲って本庁が示した方針に口は挟まぬにせよ、告げる過程があまりにも杜撰というか。いらぬ火種をまくばかりか、自ら好んで油を注いでいるようにしか見えず。
所詮は殿様商売、その一例を以て売上が下がるようには見えぬも。その距離感が埋まらぬ限り、いかなる目標も色あせて。計画のまえにまずはそのへんから。
(令和5年9月5日/2803回)