エリ・エリ・レマ・サバクタニ
エリ・エリ・レマ・サバクタニ
Eli, Eli, Lema Sabachthani?
2006年1月31日 テアトル新宿にて
(2005年:日本:107分:監督 青山真治)
エリ・エリ・レマ・サバクタニ
真夜中の呪文
「神よ、何ゆえに 我を見捨てたもうや」
Eli, Eli, Lema Sabachthani?
救いなんてない、と知った時に知る救い
救いなんてない。あるのはつかの間の安心という点。
救いという線ではない。
癒しなんてない。あるのは緊張感が解けた一瞬の和らぎ。
命はってやっとたどりつくかもしれないのが癒し。
誰が救ってくれるのか?誰が癒してくれるのか?
誰も見えないものには反応しない。
エリ・エリ・レマ・サバクタニ
釧路の草の短い山の途中で、
青い空の下の草原で、
自殺願望のレミング病の少女は黒い服を着る。
レミング病は視覚から伝染する。少女は黒い目隠しをする。
レミング病を眠らせるのは、爆音のようなロックだけ。
自分が死にたいから自殺するのか、病気だからかわからない。
自然の音を集め、ガラクタを集めた楽器から作られる爆音。
傷をひっかきまわすようなエレキギターの爆音。
病気を眠らせるのは、音だけ。
目に映るものは皆、病気の原因となる。
見てすぐわかるものに救いなんてない。
慰めの言葉は耳に届かない。
エリ・エリ・レマ・サバクタニ
突き刺すような爆音が破裂するとき病気は眠る。
耳から聞こえる破壊音だけが、病気を眠らせる。
私も爆音にうとうとして、目をあけた瞬間に音が見える。
この映画は極端に台詞が少なく、説明的な事はほとんどないのですが、2015年という近未来の設定を釧路の海辺の草原で、有機的な世界で描き出しています。
レミング病という死にとりつかれた少女の宮崎あおいの絶望の表情。それを黙って見つめる男、浅野忠信の無表情。
言葉なんて必要ないのかもしれない。救いの言葉なんて、説明されてわかる救いなんてあるのだろうか、と問いかけ・・・突き放しているようで、求められた「救い」というものを与える人間達を描く、というのが救いになっているような映画。
本当に、青山真治監督は独特の世界観を持っています。