乱歩地獄
乱歩地獄
2005年12月6日 テアトル新宿にて
(2005年:日本:135分:監督 竹内スグル、実相寺昭雄、佐藤寿保、カネコアツシ)
江戸川乱歩の世界を映像化するのも難しいものです。
やはり、小説のファンが脳内映画を作り上げてしまうから、どんな表現をしても、「気に入らない」になることが多いようです。
また、乱歩を知らない人が、観たら、「気持ち悪い」と。もともと乱歩の世界は、気持ち悪いもの、グロテスクなもの、淫靡なものなのです。
私は、4人の監督が作り上げた世界、どれも好きです。
『火星の運河』『鏡地獄』『芋虫』『蟲』の4編です。
どれも原作の設定を脚色して、エッセンスだけ取り出したようなものになっています。
4編に共通しているのは、すべて浅野忠信が出演していること。しかし、役柄はそれぞれ違っています。
私は、一番長い『鏡地獄』が特に良かったです。監督の実相寺昭雄は過去に『屋根裏の散歩者』も映画化しています。
ここでは、浅野忠信は、明智小五郎役。
次々と女性が殺される事件。最初のクレジット文字が全て鏡文字になっているのがいいですね。
そして成宮寛貴が、怪しい人物となるのですが、決定的な証拠がない。
鏡をたくさん使った撮影。鏡の怖さと美しさが出ているのがいいです。鏡地獄とは、内面が全て鏡になってしまった球体に入ってしまう男の狂気を描いた短編ですが、ここはあくまでも、犯人探し。
画面が斜めになっている構図、たくさんの鏡、狂気の成宮寛貴・・・・幻想的でどこかじっとりとしたムードが良いです。
『芋虫』では、手足を切られた男(大森南朋)とその妻(岡元夕紀子)とのゆがんだ愛情とそれを見つめる男、松田龍平。それをまた、眺めている明智(浅野忠信)
岡元夕紀子の美しさと妖しさがとても印象的です。
それぞれの監督が作り上げた乱歩の世界。楽しむというより興味深く観ました。