ブレイキング・ニュース
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Breaking News/大事件
2005年12月23日 渋谷シアターNにて
(2004年:香港=中国:91分:監督 ジョニー・トー)
この映画は本当はもう一回観てから、書きたかったのです。
ストーリー展開に目を奪われていて、この映像の素晴らしさをもう一回、この目で確かめないと書けない、と思う次第。
2004年の東京国際映画祭のアジアの風で上映されたとき、観に行けなくて、待っていたのよ、待っていたのよ、公開を。
この映画は起承転結ではなく、「承転結結」なんです。
だから映画はいきなり事件が起きる。何故そうなったかは語られません。その部分をクレーン撮影を含めて7分間の1シーン、1カットで見せています。ここで、もう、観ている私はココロは、ぎゅ。
大陸からやってきた銀行強盗団のアジトを突き止めた警察と銀行団のいきなりの銃撃戦。それはまるでその場を見ているように上から横から流れるようにすらすらと「物語ってしまう」・・・う~~~ん、とうなるしかありません。
この映画のポイントは犯人対警察という単純な構図ではなく、警察が冒頭の銃撃戦で市民の信頼を失ってしまった事から、今度はあるアパートに籠城した強盗団を追いつめる様子を、PTU(特殊部隊)の1人1人にカメラをつけ、わざわざマスコミを呼び、香港市民に犯人逮捕の実況中継しよう・・・という目論みがあることです。
警察側(ケリー・チャン)は「最高のショーを作って見せる」とあくまでも強気、強盗団のリーダー(リッチー・レン)はそれに気づくと、逆に「大事件」を見守る観客=香港市民を利用して立ち回る、そして実際、現場にいる刑事(ニック・チョン)は体を張って、犯人逮捕に向かう。また人質になった一家(ラム・シュー)も上手く利用されてしまう。しかも、現場には大陸からやってきた殺し屋(ヨウ・ユン)も混じってくる。
つまり6者がからんでいる「大事件」なわけですね。
指令する警察、強盗団、殺し屋、現場刑事、人質、そしてそれを見守る600万人の香港市民。ほんとに「大事件」(これは実際あった籠城事件をベースにしているそうです)
これだけの要素を91分にきっちり、ぴっちり緊張感と時折ユーモアを混ぜて、てきぱきと見せる手腕というのは、もう他には思いつかないです。
また、これは共同監督が多かったジョニー・トー監督の単独監督であり、監督が得意とする夜のシーンは一切ありません。
そのかわり、大胆なクレーン撮影、狭い所では臨場感あふれるハンディカメラで撮影する、という手法も職人的に上手い。
観ている側としては、話の先は読めないし、時々脱力ものの笑いがあるかと思うと、きりりと構図の決まった美しい映像に目をみはり・・・私も事件を見守る香港市民の1人になってしまいます。
ケリー・チャンはあくまでも警察幹部として、綺麗ではありますが、キリリと凛として「ショーの演出」をはかるという大胆な役を自然に見せていました。履いている靴がヒールの全くない、男性が履くような黒の革靴でかっこいい。
そして、『星願』で「いいひと」だったリッチー・レン(私はこの人が演じた『スォーズ・マン』のリン役が好きなんですが、これはテレビ映画でプロフィールに載っていないのが残念でした。台湾、中国ではまずは大歌手)は、頭脳戦で、警察を煙にまく悪役ということで、「いいひと」イメージをくつがえす、ではなくて、極悪人には見えないという上手い使い方をしています。籠城の最中にエプロンつけて料理しちゃうところなんて妙にほのぼのしてます。
警察がしかけた「犯人逮捕ショー」は一体成功するのか、リッチー・レン達はどういう行動に出るのか、現場の刑事は逮捕できるのか・・・そして話は急展開~~~~~~~
最後の最後まで、尾っぽの先までアンコがびっしりつまった鯛焼きのような美味しい映画です。もう一回観たいんですけど。
ジョニー・トー監督の美学がたまらなく好きっ!