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更夜飯店

SPL〈殺破狼〉

2018.08.20 07:34

SPL〈殺破狼〉

SPL/殺破狼

2005年11月20日 有楽町朝日ホールにて(第6回東京フィルメックス)

(2005年:香港:93分:監督 ウィルソン・イップ(葉偉信)

コンペティション作品*アニエスb.観客賞受賞*

男の映画です。もう、サイモン・ヤム、ドニー・イェン、サモ・ハン男3人のフィルム・ノワール的アクション映画。

タイトルのSPLって何の事か・・・と解説を読むと、SとPとLは中国の占星術に由来した3つのホロスコープを持ち、お互い相反する運命を決定するものだそうです。

う~ん、誰がSで・・・っていう説明的な台詞はありませんが、3人の男の関係は決して「同じ位置」ではありません。

刑事チャン(サイモン・ヤム)は、マフィアの大ボス、ポー(サモ・ハン)に個人的な恨みもあり、引退を目前にして何とか逮捕したいと熱望している。そこへチャンの後任の刑事マー(ドニー・イェン)が赴任してきて、この3人の男は、対立しながらも常に関係している本当に星のような関係になります。

ここで注目したいのが、男2人の対決ではなく、間に1人はいる、という構成です。

刑事チャンは、マフィアのポーをとにかく憎んでいる。ここで警察とマフィアという単純な対立関係ではなく、刑事マーが、チャンのやり方に疑問を持ち、行動を共にするけれども、仲間意識はない、むしろライバル意識を持っているようだ・・・ということです。

3人の役者がいいのですね。サイモン・ヤムが冒頭、歩く姿の全身のショット、ものすごくスタイルがいいのに驚きます。

そして、でっぷりと太ってあぶらぎってます!という葉巻がお似合いのサモ・ハン。

一匹狼的で、マーシャルアーツの使い手、ドニー・イェン。黒のレザーに黒のパンツ、何故かベルトだけ白です、まぁ、素敵。

そして3人を囲む男達。刑事チャンは、部下が4人いて、特別重犯罪捜査ユニットなのですね。

また、この映画は善悪きっちり描くのではなく、警察であるチャンは逮捕をあせるあまり、ポーの犯罪を捏造しはじめます。

ポーは大勢いる仲間や金を使って、いくら逮捕しても楽々と釈放。家庭ではやっと子宝に恵まれて妻と息子を溺愛。

それを、じぃ~~~~っと見ているマー。

大きなある事件をめぐるストーリーではなくて、まさに「人間関係」を物語の中心にすえています。そこら辺が、派手でかっこいいアクションに気をとられていると見逃してしまうかも。

ドニー・イェンはマーシャルアーツの使い手ということで、ばりばりにアクションします。特に、最初は静観していたけれども、自分の判断で動き出すとそれはそれは、荒っぽいけれど、ばりばりなやり手です。それが後半もううなぎ登りになり、映画ヒートアップします。

対決につぐ、対決。1人倒してもまた、次がいますよ、状態。テンポいいです。

思わず興奮する私でありました。凄いのですよ、本当に~でも同時に、今までがっちりスクラム組んでいたユニットが、バラバラに破壊される事にもつながってしまうという展開にもなってしまうのですね。

ドニー・イェンとサモ・ハンの対決は白眉のシーンですが、サモ・ハンの巨体であの動き!しかもアクションの途中に奥さんから携帯電話かかってきてのどかな着メロだったりして・・

サイモン・ヤムはあまりアクションをしないのですが、その分、頭脳戦をする、という上手い使い分けですね。

途中に、海辺のシーンが出てきます。男達は、何度も青い綺麗な海辺に立つ。それがラストの余韻につながっていて、荒っぽいアクション映画とは一線を画している所がとても好きです。骨組みがしっかりしていて、まさに骨太な映画ではありますが、メランコリックで繊細な所も綺麗に作っているという上手さを感じます。

過去に『トランサー 霊幻警察』など監督しているのですが、大人の男の体と心の対決ってものをここまで見せてくれたのはとても嬉しい。