ビューティフル・ボーイ
ビューティフル・ボーイ
Beautiful Boxer
2005年10月6日 科学技術館サイエンスホールにて(試写会)
(2003年:タイ:119分:監督 エカチャイ・ウアクロンタム)
『アタック・ナンバー・ハーフ』が、実在のオカマの男子バレーボールチームの活躍を描きながら、コメディのノリで明るく楽しく・・・で人気が出た訳ですが、これはそのムエタイ版ではありません。
女の子になりたい男の子、トゥム・・・しかし、最初はお金のために始めたムエタイがどんどん強くなっていくうちに、女性への憧れとムエタイという男社会の中での差別や周りの無理解に悩みながら自分の道を見つけていくというものです。
トゥムはチェンマイの貧しい家の子供。
トゥムが一番関心を寄せるのは、お化粧、メイク。
メイクをしてムエタイをするという、キワモノ的な話題の的になりつつも、ムエタイは無敵。しかも、最初はベタ塗りだった化粧がだんだん上手くなって、ナチュラルメイクになっていきます。メイクも上達していくのだった。
化粧品というのは、値段の高いものは上限なく値段が高いもので、また、これは化粧をしている人はわかると思うのですが、化粧品というのは、何故か、シャドウ、口紅・・・なくなる時はなんだかあれも、これもなくなってしまい、化粧品をまとめ買いした経験があるのでは?
私が、この映画を観た時、正に、「化粧品がない!」状態だったので、トゥムのムエタイのコーチの恋人が、こっそりくれる、メイクアップセットが、ひとつの箱にシャドウから口紅まですべて揃っているもので、トゥム、大感激、観ている私も「ああ、いいなぁ~~~これ欲しい~~~」と変な共感と憧れを持ってしまいました。
トゥムを演じたアッサニー・スワンは、美しいというより、かわいいタイプの顔だちをしていますが、元は本物のムエタイ・チャンピオン。
トゥムがどんどん試合を重ねていく様は、字幕で場所と対戦相手が出る、という具合にリアルにドキュメンタリータッチ。
そして、ムエタイも吹き替えなしの『マッハ!!!!』状態。格闘技の迫力だけでなく、ムエタイ・アクションと呼ばれる流れるような動きや、決め技がむさくるしくないのです。
また、美しい女性、綺麗に着飾る女性に憧れるトゥムの妄想なんかは、可愛らしくもあり、ファンタジックでもあり。
だんだん女性になることへの憧れが強くなって、お金が必要になって、日本の東京ドームでの女子プロレスとのキワモノ試合も受けるようになってくるのは痛々しいような、切ないような・・・でもトゥムは自分の夢を現実させるために来日します・・・実際に1998年にあった試合をを東京ロケでやってます。楽して美しくはなれないのですね。
美しくなりたい、でも周りはキワモノ扱い・・・そんな目に、ちょっとだけ悲しそうに瞳を曇らせるだけで、凛とした表情に戻るところがいいです。
性同一障害に悩む、というのは最近あるのですが、悲惨さよりも、傷つきながらも、ムエタイをあきらめず、女性になることもあきらめず・・・というあきらめないトゥムの強さって別に性別に関係ない強さです。
「男として生きるのはつらいけれど、女として生きるのもつらい」と語るトゥムの心情に、全くなぁ~とつい、ほろりとしてしまいました。
この映画を観た後、化粧品を買いに行ったのですが、妙にコスメ選びに熱心になっている自分がいました。