ルパン
ルパン
Arsene Lupin
2005年10月13日 銀座テアトルシネマにて
(2004年:フランス=スペイン=イタリア:132分:監督 ジャン=ポール・サロメ)
この映画、製作費とてもかけた「大作」なんですけれども、アルセーヌ・ルパンの生い立ちから、ベースは『カリオストロ男爵夫人』で合間に『813』『奇巌城』『水晶栓』といったルパンシリーズのエピソードも盛り込んで・・・とかなり盛りだくさんなのに・・・なんだかユルユル。
ルパン自体が、今でいうヒーローではなく、あくまでも優雅な怪盗・・・貧しい者からは盗まず、金持ちから主に宝飾品をスルリスルリと盗んでいく・・・そして、フランス王家お宝探し、それをはばむ、しつこいカリオストロ男爵夫人と愛する女性との恋・・・こう書くと、やっぱり盛りだくさんのハラハラアドヴェンチャーなんだけど、やっぱりどこか肩の力が抜けている印象がずっとありました。
だから疲れないのです。謎も悪役もルパンもなんかユルユル~~~としていて、もちろん馬車が中心の時代の話ですから、スピード感というのもない。それでいいのです。
ルパンは社交界に出入りして、男爵、公爵を名乗る訳ですけれども、そこはかとなく漂う平民感がいいですね。
もともとが貴族の出ではない、という細かい描き方がいいです。影で努力して、それで華麗なる盗みをするという。
ルパンが自転車に乗るとは、想像もしなかったですよ。
ルパンの行く手を阻む者がいる訳ですけれど、それが、結構しつこく、しつこく、まだいたのか~~って思うくらいしつこく出てくるのが楽しいです。ハイテクな技術なんかない時代の最大の武器は執念とか、しつこさかもしれない、なんて思いました。
なんでもすぐには出来ないから、それなりに時間と手間をかけて、しつこくするっていうのが、本当に原作の世界をわかっていると思います。
私は最初の方と、最後に、まんまとルパンから盗まれても、ぼや~っとしている公爵夫人(?)のとっぽさが良かったですね。古き良き時代、みたいで。
でも最後は意外な歴史的事実に結びついたりするから、よく考えているなぁ。
これがハリウッド大作にならなくて良かった、と本当に思うのです。ああ、良かった。