旅するジーンズと16歳の夏
旅するジーンズと16歳の夏
The Sisterhood of the Traveling Pants
2005年10月21日 恵比寿ガーデンシネマにて
(2005年:アメリカ:118分:監督 ケン・クワピス)
仲良し4人組・・・の単なる青春恋愛物語ではありませんでした。
確かにそういう要素、エピソードはあるけれども、同じ年でも個性が違う4人の共通点が、「サイズの合う1本のGパン」であるということから・・・つまり、これは「サイズの合う者が選ばれし者」というシンデレラのガラスの靴を現代化したみたいなものかもしれません。
仲良し4人組が、仲違いしながらも友情を結束させていくのならば平凡な映画かもしれませんが、これは、そんな4人がバラバラになる一夏のそれぞれの「物語」
しかし、4人にそれぞれドラマチックな展開や恋愛模様が繰り広げられるかというと、そこら辺は、普通描きそうな感動的な所は意図的に描かないで、4つの話を平行させていきます。その配分の仕方が上手い。どの話を誇張するわけでなく、均等にきちんと描く、几帳面さを感じます。
ギリシャの祖父母の元へ行く子、メキシコのサッカー合宿にいく子、離婚して離れた父の家へ泊まりに行く子・・・・と3人は「夏休みの遠出」に出るのですが、1人だけ、どこにもいかず、スーパーでバイト、家の留守番、子守をする子がいます。
この「どこにも行かないティビー」がとても良かったです。
ティビーはひとりでドキュメンタリー映画を作っている。
題材はバイト先の人々のつまらない生活の記録。
バイトもつまらなそうにやっていて、自分の額に値札をぺたり、と貼ってみたり・・・している所に、ばた~んと少女が倒れているのです。
この倒れている12歳の少女が、ティビーの友というか、仲間になるベイリーですけれど、意識を失って倒れているベイリーがおしっこをもらしている、っていうのに妙に感心してしまいました。
よく気絶するとか、倒れるとか映画に出てくるのですが、実際、急に倒れたりすると失禁したりすることがあります。
そういう所はあまり描かれなかったのですが、このベイリーの倒れ方・・・・なんともリアルというか、この子、大丈夫?という緊張が走るのでした。
このベイリーが、12歳にしては観察力が鋭くて、生意気ではあるけれども、ティビーにつきまとい、ドキュメンタリー映画を作る重要なアシスタントになります。
ティビーになくて、ベイリーにあるもの、それは聞き上手ということ。その辺、ドキュメンタリー映画の本質を突いているような。
さて、このシンデレラの靴である、Gパンは、離ればなれになっている間、1人が一週間はいて、次の友人に送る、というギリシャ、メキシコ・・・と旅するのはこのGパンで、全ての物語を知っているのはこのGパンなんです。
4人はそれぞれの着地点を見つけるけれど、ベイリーが、ティビーから魔法のGパンの話を聞いて、こっそりはいてみるシーンがあります。
さすがに12歳にはダブダブ。それが切ない。ベイリーにはガラスの靴が履けない。
なんだか、ベイリーが主役のような気がだんだんしてきたのですが、4人それぞれ誰に思い入れするか、色々だとは思うけれど、映画は1人に偏らないというバランスの良さがいい映画だし、それぞれの土地の風景の色合いなども微妙に変えている所がとてもいいです。
ささやかな話ではあるけれども、日本映画のような、ウェットさとメロウな部分を感じてしまいました。