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更夜飯店

Aサイド、Bサイド、シーサイド

2018.08.21 06:41

Aサイド、Bサイド、シーサイド

A Side, B Side, Seaside

2005年10月25日  ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズにて(第18回東京国際映画祭)

(2005年:中国:89分:監督 アーチウ)

中国といっても香港の監督、アーチウの初監督作品。

舞台となるのは、香港からちょっと離れたリゾート島、長州島のある夏です。 長州島というのは、香港からフェリーで40分くらいのちょっと手軽なリゾート地らしいです。

か、かわいい・・・・・なんてかわいい映画なんだ。

これ、といった一本の筋のある映画ではないのですが、出てくるシーン、すべてが詩のようです。

詩っていうか、もう、ぽえむ、ポエム、poem。

香港から、卒業旅行にやってきた4人の女の子たち、友人の結婚式の為に香港から生まれ故郷の長州に帰ってきた1人の女の子。

4人組がAサイド、1人の女の子が、シーサイド(seaside)、と話は一応分けて描かれます。

では、Bサイドとは・・・・?って所が、可愛くて微笑ましくて。

4人組の女の子たちはお金を集めて、VCDを買う。

買うつもりがなく「おまけでついてきてあわてて選んだ」VCDが、北野武監督の『あの夏一番静かな海』

ところが、このVCD、何故かA面しかパッケージに入っていない。

海辺ではしゃぐ女の子たち、子猫を拾ってかわいがる女の子たち・・・そして海では、男の子がウィンドサーフィンをやっている。

このウィンドサーフィンが、とにかくばたん、ばた~~~んと倒れてばかりいるのですね。格好良く帆走なんてしない、帆が立つと思うと、ばた~ん、帆が頭の上にごつ~ん。

若い人をどう見ているか、というのがこの映画の映像でよくわかります。決して、甘やかしてはいないけれど、優しい視線で見つめている。

4人のひとり、ハニーという名前の女の子は、この男の子と出会う。男の子の名前はビター。

女の子たちも色々で、男みたいにして絶対に女の子らしくしない、水着に絶対ならないTT、きゃぴきゃぴしていて、とにかくはしゃいでいる子、クールな子、そしておとなしいハニー。

きゃぴきゃぴちゃんが、バレエか何かで体が柔らかく、ブリッジをしながら、恋人?に携帯で「子猫がいなくなったから、似た猫、調達してちょうだい」とか・・・どうでもいいような風景にユーモラスな発想を上手くとりいれています。

みんなで、買ったVCDを、きゃーきゃー、わぁわぁ、足バタバタ~~~で観るけれど、ハニーは夜、他の女の子が眠っている間、買うはずのなかった、映画『あの夏一番静かな海』をひとりで観る。そしてないB面・・・続きが観たいと思うけれどなかなか見つからない。

シーサイドでは、香港に帰ってきた女の子が、仲良かった2人の男友達と再会して、3人で海辺で遊ぶ。

男の子2人は、食べたスイカの皮を顔にかぶって寝ていたりする。 明るくはしゃいでいるような3人に流れる空気は、もう、学生時代のように自分たちは楽しめない、もう後戻りはできない、という現実をまざまざと思い知らされているような「がっかり感」

10代や若い人の青春映画というと恋愛とか、、、家族とか、、、ありがちな設定を一切描かないで、ぐるぐると同じ所を自転車で回っている子供、夏を楽しんでいる女の子たち、男の子たちをスケッチすることの積み重ねできちんと「青春」を絵で見せてくれます。

やっと見つけたBサイドをハニーが泣き笑いで見るその顔が、なんとも初々しくて、時間軸の使い方の上手さも感心します。

お金かけていないし、これみよがしの事は全くしていないのに、こんなにスマートな映画が作れるって事ですね。

自転車が同じ所をぐるぐるっていうのは北野武の『キッズ・リターン』

多分、この監督、日本映画が好きなんでしょうね。 また、台湾映画の『藍色夏恋』のような空気も感じます。

岩井俊二みたいな感じもするし、北野武の『キッズ・リターン』や『あの夏一番静かな海』と同じ詩情性みたいなものが、さわやかに気持ちよく観られるのでした。

残念ながら、日本で知名度のある人は出ていないので、公開になるかどうかはわからないけれど、映画の質はとても高い優れた映画です。