発生学・発達学の誤用に注意しましょう①
おはようございます。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
突然(?)ですが、私は『科学的根拠に基づいたリハビリ』という考え方を大切にしています。
これは、1990年代前半に始まった『根拠に基づいた医療(Evidence based medicine: EBM)』がリハビリにも応用されたものです。
いくつか1990年以前のリハビリと違いがあります。 その違いの一つに『理論的背景(メカニズム)は、とりあえず置いておいて、臨床研究の結果を重視しようよ(^^♪』というものがあります。臨床研究というのは、『実際の患者さんを用いて科学的な手法で行う研究』と考えてください。
で、今日の話。。
リハビリテーションには様々な理論体系があります。
その中には、進化論とか発達学を『権威付け』に利用している理論があります。 私たちリハ専門職はこういった分野の専門家ではありませんから、理論的背景(メカニズム)としてこのような科学的な話が出てくると弱いです。
ただ、残念ながら、その多くはこれらの理論の一部を都合よくピックアップしていたり、誤用しています。
思い出深い例としてこんなものがあります。
以前の職場で、同僚が参加した、『有名なリハビリ理論のセミナー』の参加報告を聞いていた時の話です。(当時の職場には、職場がお金を出してくれて講習会に参加できる代わりにセミナーの内容を簡単にまとめて全員の前で報告するというルールがありました。)
その理論は、簡単に言うと、
『皮膚に刺激を与えることで、脳神経系の働きを改善する』
という理論でした。
そのためのテクニックも含めて教えてくれる講習会だそうです。 このテクニックの対象は、例えば病気や怪我によって、脳の血管が詰まったり、破れたりして、脳の機能にダメージを負った人などだそうです。
その理論的背景として『発生学』が使われていました。
サクッとまとめると・・・
受精卵は、細胞分裂をして
①外胚葉
②中胚葉
③内胚葉
という3つに分化する。
その後さらに細胞分裂を繰り返して、様々な器官になって、最終的に赤ちゃんになって出産される。
で、上記の3つの胚葉は発生の段階で分化して様々な器官になっていく。
『外胚葉は、神経系(脊椎、末梢神経および脳)、歯のエナメル質および表皮(外皮の外側部分)を形成するために分化する。また、口、肛門、鼻の粘膜および、汗腺、髪と爪を形成する(Wikipediaより)』そうです。
↓
脳と皮膚(表皮)は共に外胚葉由来です。ですので、皮膚に刺激を与えることで、脳に変化が起こせるんです!!!
というのがこのテクニックの理論的根拠です。
『ほ~、なるほど。これはしっかりとした生理的根拠があって信頼できそうな理論だ。』と考えてしまった方は、少し立ち止まって、深呼吸をして、私と一緒に考えましょう。
ちなみに、上記の様に考えてしまうことは、珍しいことではありません。きっと多くのリハ専門職にとって「しっくりくる」理論であるので、多くの受講生に支持されているんだと思います。
そして、多かれ少なかれ、古くからある脳機能を改善すると謳うリハビリ理論は、このような発生学や進化論の影響を受けています。
長くなりましたので次回に続きます。
次回は、この様な話を聞いたときに私が感じることを書きます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
理学療法士 倉形裕史