南極日誌
南極日誌
Antractic Journal
2005年8月18日 よみうりホールにて(試写会)
(2005年:韓国:115分:監督 イム・ビルソン)
南極の夏・・・一日中昼の世界を南極到達不能点をめざして黙々と荷物を引っぱりながら歩く6人の隊員。
出てくるのは白一色の南極だけ。出てくるのは6人の男だけ。という広大で狭い世界を、余計な描写を排して作ってしまったのがこの映画の凄いところです。
そうなると6人の人間関係や葛藤などがよほど上手く描かれないと、観ていてつらいものがあります。一種の舞台劇とでもいいましょうか。
一行の隊長はソン・ガンホ、そして一番若い隊員がユ・ジテ。
ユ・ジテは、冒険家ソン・ガンホに憧れて念願の南極隊に入れたのです。
しかし、ある地点で、80年前のイギリス探検隊が残した「南極日誌」を見つけてしまう。それは絵日記になっていて、同じ6人の隊員、自分たちと同じ姿が描かれているのだが・・・次のページでは、隊員は5人になっている・・・。
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』のような予感をさせる日誌です。
しかし、怖いのはホラー的な部分ではなくて隊長ソン・ガンホが、隊員の命を犠牲にしてまで、なんとしても南極到達不能点をめざす・・・その狂気がどんどんエスカレートしてくるところです。
ひきかえそう、ベースキャンプに連絡して援助を頼もう、色々な意見や対立が次々と起こるので、周りは白一色の世界でも男の精神ガチンコ勝負が見所。
音楽は日本の川井憲次で、壮大な風景に風が吹き抜けるような壮大な音楽がとても合っていますし、脚本の一人はポン・ジュノが参加しています。ロケはニュージーランドで行ったそうですが、白、白、白・・・・白って狂気の色なのかもしれません。
ホラーっぽいなぁと思った予告編ですが、本編で怖いのは、南極日誌のぼやけた絵とユ・ジテ君の瞳に映る日没ですね。
広くて閉鎖的なこの世界。とっても冷却効果ありです。
見終わった後は、うつむき加減で黙々と南極を歩む隊員と同じ、南極歩きで帰ってきました。