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下和田税理士事務所

起業後の素朴な疑問について vol2/大原税理士事務所@福岡市

2018.08.23 01:31

 昨日に引き続き、本日は減価償却費について書いてみたいと思います。

 この業界に入って長くなると、ここは理解してもらっているだろうという思い込みが結構あります。お客様から質問されて、初めてこういうところに疑問を持つんだとはっとさせられる事が多々あります。弊所では、考えたこともなかったような事を質問されることもあるため、今後「起業後の素朴な疑問について」シリーズとして紹介していきたいと思います。

 昨日は、借入の返済は費用にならないというお話をしました。お金は出ていくけど、費用化されないため黒字倒産の原因となります。対して、減価償却費は費用計上できるけどお金は出ていきません。その減価償却費について本日は少し書きたいと思います。

 現在、日本の法令では10万円以上の物を購入すると固定資産に計上することと規定されいます。例えば、98,000円のパソコンを購入した場合、消耗品費として一括で費用計上できるのに対して、100,000円のパソコンを購入した場合、備品として資産計上し一括で費用計上することはできません(前回のシリーズ1で紹介した青色申告者の特典として、青色申告者は30万円未満の物まで一括費用計上できます)。

 なぜ10万円のパソコンを購入したのに一括で費用計上出来ないのか?と疑問を持たれるかもしれませんが、2つの理由があると考えられます。通常、10万円以上の物を購入して1年で捨てるという事は無いと考えられます。パソコンでしたら早くて2,3年で買換えということになるのでしょうか。10万円以上の高額商品を購入したらその使用期間で費用配分し正確な期間損益を算出するのが会計的な考え方です。使用期間で費用配分するのが正確な期間損益を算出するには最善の方法ですが、使用期間の決定を個々に委ねると恣意性が介入される恐れがあります。そうしたことから資産ごとに国税庁が耐用年数を定めています。パソコンでしたら4年、普通乗用車でしたら6年といった具合です。この国税庁が定めた耐用年数で資産の取得費を費用配分するのが減価償却費となります。

 もう一つの理由は、利益が出ている時に高額商品を購入して租税回避するのを防止するためだと考えられます。例えば1000万円利益が出ている時に、600万円の車を購入して減価償却制度がなければ、利益400万円に圧縮できますが、減価償却制度があるため1年に費用計上できるのは定額法だと100万円が限度となります。

 600万円の車を購入した場合、定額法だと6年間にわたり100万円ずつ減価償却していくことになります。初年度購入の時に600万円キャッシュアウトし、2年目以降は100万円減価償却として費用計上されますがキャッシュは出ていきません。減価償却は初年度にキャッシュアウトした600万円を6年にわたり回収する効果があります。これを自己金融効果と学術的には言うみたいです。

 開業前や創業したての方が最初に戸惑う減価償却について今回ご紹介させていただきました。