「古志」郵便句会(8月)を終えて
2023.09.09 21:00
先月の「古志」郵便句会から特選句をいくつかご紹介します。
(Photo by Reuben Rohard)
「古志」郵便句会はオンライン句会に参加できない方々のための、
郵便による通信句会です。
砂日傘もどればいつも母がゐし 関君子
子どもこの頃のなつかしい記憶が詠まれています。
家族で海水浴に行ったときの様子ですが、
母は海に浸かることなく、
ずっとビーチパラソルの下で子どもたちを見守っているのです。
一方、子どもたちは海で泳いで疲れては、
パラソルの方に戻っていくわけですが、
かならずそこには母が待っていてくれる。
その安心感とほのかな哀愁。
なんとも味わい深い一句です。
パラソルの下には、
いまもなお、あの頃のままの母が待っていてくれるような、
そんな気持ちにさせられます。
(Photo by Luise and Nic)
命日の西瓜上出来まつ赤だぞ 春日美智子
ある人の命日。
その今は亡き人が、みずから畑に作っていた西瓜ではないでしょうか。
みごとな西瓜に育ったのです。
西瓜の出来の良さを誇らしく思うなかにも、
この立派な西瓜をその人に見せたかった、
食べてほしかったという無念が滲んでいます。
如何にせむ一天不壊のこの暑さ 加藤妙子
〈一天不壊(いってんふえ)〉をもってきたことで、
すでに勝負アリではないでしょうか。
今年の酷暑が的確に表現されていますし、
格調も高いです。
漢語をもってくると、一句の中で浮いてしまいがちですが、
むしろ響きと字面の暑苦しさが内容と相まって、
相乗効果をもたらしています。