偉人『ジュゼッペ・ヴェルディ』

今週は甘いものに関する記事を投稿しているため甘いもの好きな偉人を数人候補に挙げてみた。その中から芸術の秋に相応しく甘いものや料理が好きな人物といえば、誰を差し置いてもオペラ王の異名を持つ作曲家ジュゼッペ・ヴェルディしかいない。彼の紡ぎ出す世界観は格段に美しく、イタリア国民の悲願である祖国統一をする勇ましさがあり、それでいて人間の内面の奥底にある悲哀や憂いを表現した稀代の作曲家だ。彼の人生から就学期の短い集中力が特徴の年齢時に親はどのようにしてその集中力のなさを捉え、どのように対峙するかを学びとってみようではないか。

オペラ王ジュゼッペ・ヴェルディは１８１３年１０月１０日イタリア・レ・ロンコールの農家兼宿屋や雑貨店を営む父カルトと母ルイジアの長子として誕生した。父カルロは当時としては珍しく読み書きのできる人物で、息子が音楽に興味があり熱心に教会音楽を聴いている様子から６歳で中古のスピネット（小型のチェンバロ）を買い与えた。そこからヴェルディはスピネットに夢中になり教会で楽譜の読み方や弾き方を教えてもらいメキメキと演奏の腕前を上げ、８歳で師に代わり代役演奏を行い、９歳には町のオルガニストとして評判を得るほどであった。ここでヴェルディの年齢に注目しておいてほしい。６〜９歳の最も集中する時間が短いと言われるタイミングで彼は将来を決定づける大きく成長を果たしたのである。

音楽的頭角を表したヴェルディの評判は父カルロと商売の取引をしていた大商人のアントニオ・バレッツィの耳にも入った。バレッツィは仕事で得た利益でブッセートの楽友協会の復興に尽力した音楽愛好家で１０歳のヴェルディを自宅に下宿させ息子同然に可愛がり、作曲家フェルディナント・プロヴェーゼのレッスンを受けさせ生涯に渡りヴェルディを支援した人物である。そして自らの娘との結婚を許しヴェルディをバレッツィは生涯支援し援助することとなった。ヴェルディの才能をさらに花開かせようとバレッツィはヴェルディをミラノに留学させた。やがてベルディは援助を受けてミラノ音楽院の試験を受けるも合格できなかった。実はベルディは今でこそイタリアの作曲家として認知されているが、彼が生まれたレ・ロンコールは当時フランス領であった。イタリア国籍でないことそして年齢を理由にミラノ音楽院を不合格とな流。バレッツィはヴェルディにオペラ作曲家のヴィンチェンツォ・ラヴィーニャの個人レッスンを受けることができるように配慮しヴェルディはさらに才能を開花していったのである。

大商人といえども１０歳の少年を自宅に住まわせその才能を育てることに不安はなかったのだろうか？と思うところだが、誰がみてもヴェルディの才能は確かなものだったようで彼に音楽の手解きをしたものは幼きヴェルディの才能を疑わなかったようである。ではなぜ子供発達の過程で集中力が長く続かない年齢時にベルディの才能の片鱗を多くのものが目撃できたのかここから考えてみよう。

ヴェルディが音楽を学んだのは集中力が短いとされる６〜９歳の頃である。絶対的集中力を獲得する前の集中力が短いその年齢にヴェルディはなぜ爆発的な集中力を持ってして音楽を学び取ることができたのであろうか。

それは子供のヴェルディが楽しい好きだと思える音楽に出会えたこと、そしてその楽しさを実践できるスピネットを両親に買ってもらい短時間でも鍵盤を触ることができた環境、そして夢中になることで集中する時間を伸ばし爆発的な集中力を鍛錬することができたということであろう。しかし最も私たち親が気に留めなくてはならない重要なことは、集中している子供に話しかけない、余計な指示はしないなど親がついついしがちな子供の集中力を阻害するような行動を親自らが自制することである。

ヴェルディの親がどのように関わったのかは想像するしかないのであるが、音楽家の子供ではない彼が「祖国の大きな誉れとなる天才」と称されるほどの音楽的才能を開花させることができたのには、親が音楽的アドヴァイスができない立場であったこと、そして専門家に委ねていたこと、そして子供の集中している時に静観していたということが最大の理由であると考えている。

これは私もかなり気をつけていたことであり子供が集中しているタイミングではほぼ静観というスタイルをとっていた。６〜９歳の集中力が短い年齢での学びの時期は絶対的集中力を獲得する前の静けさと理解し、子供がどのようなことに夢中になり、どのくらいの時間集中しているのかを観察する重要なタイミングであると親が理解すべきである。子供にもよるが集中する時間は２０分前後と言われている。就学年齢の子供にとり毎日が予習や復習だ宿題だと学びに追われる学習時間としてはあまりにも短い集中時間である。がしかし原始反射からの働きかけからスタートし年齢ごとに日々効果的に働きかけをすれば、２０分というような短い時間を遥かに超える集中する力を身につけることができると同時に、短時間であっても集中力の質を上げることができる。

しかしこの獲得を促すのは並大抵のことではなく親の努力がかなり必要である。このことができていると思われる親御さんは私の両手で数えることができる数名である。ものすごい計算の上に計算を重ね、子供の行動や心理を理解する学びを行わなければ難しいものだ。

しかしそのようなことができなくても子供の集中する時間や能力を伸ばすかのせいは残っている。それは子供の好きなことや夢中になっているものをまず見つけてあげること、そして子供が集中している時には声を掛けず静観し見守ることである。また子供の体調管理やしっかりと集中できる環境づくりを心がけてほしいものだ。

子供の頃からシェイクスピアをこよなく愛していたジュゼッペ・ヴェルディは、音楽家の家に生まれず教会で耳にしていた宗教音楽の虜になり、そこから彼の才能を導く恩師や恩人に支えられ自らの力を最大限に伸ばし活かしオペラ界の寵児になった。人との出会いもまたヴェルディの活躍には重要な鍵を握っていたのである。子供達の成長は親はもちろんのこと多くの出会いあってのことである。私も未だに子供達のことを考えてのご縁繋ぎをしている立場であり、これは私が生きている間変わらないであろう。子供が本当に望むものを与えることができたらそれは子供自身が自分自身の力で本能に従い伸びていくことをジュゼッペ・ヴェルディが私たち親に教示してくれている。先人の歩んできた道にこそ多くのヒントが隠されているのである。

最後に彼の作品を紹介しよう。椿姫より『乾杯の歌』、リゴットより『女心の歌』、アイーダより『凱旋行進曲』はサッカーの応援歌としてよく耳にする。その彼の作品の中でもナブッコより『行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って』という作品が私の今の心情である。イタリア独立運動を象徴し今でもイタリア国民に愛されている曲、そして２６歳で大成功を収めたこのヴェルディは時代の寵児となったきっかけの作品でもある。子供の躍進を念頭に置きながら皆さんもベルディのオペラの世界に足を踏み入れてはいかがだろうか。