「宇田川源流」 何故まだ準備もできていないのに地図で野心を示した習近平の事情
「宇田川源流」 何故まだ準備もできていないのに地図で野心を示した習近平の事情
中国の新地図が世界から不評を買っている。そもそも地図とは、様々な場面で使われるものである。例えば「道路地図」などは、自動車や自転車、歩行などの移動手段によって道路を利用するときに、その道路によってどこに行くのかなどが見えるために使う。つまり、方向性や方角と行き先、道路のつながりがしっかりと書かれている必要があるわけだし、登山図などは、山道だけではなく高低差なども必要になってくるので、等高線などが詳しく書かれている。路線図は地図そのものの正確性よりも、駅の配置や、どの電車(快速電車など)が停車するのかということの方が重要視される。
さて、では国家が地図を発表する場合というのはどのようなことになるのか。地図というのは、基本的には「戦略物資」である。その地図が正確であればあるほど、戦略上の拠点や戦略上の要衝が明確になり、そのうえで、逆にどこを攻撃すればよいかがわかる。そのような意味で正確な地図ということになれば、軍事的にも国家機密的にも大きな問題になり、江戸時代末期にはシーボルトは正確な日本地図を持っていたことで、「外国人が日本を占領しようとしている」との嫌疑をかけられて罰せられている。
さて、同時に「地図」は「自国の領土」をしめすものである。中学や高校の地図という内容であっても、世界地図の中に「国境線」が書かれており、どこがどの国でどこにどのような境界線があるかがしっかりと書かれている。中には国境に紛争がある場合があり、その国境線は点線で書かれていたりする場合がある。
さて、中国は8月下旬に、新しい実用新地図を発表した。その地図には、「隣国との間で紛争または問題になっている内容が、すべて中国の最大の主張に基づいて作られた地図」を発表したのである。
当然に国境に紛争を抱えている各国は、中国に対して抗議をした。この中には、南シナ海などは、すべて中国領海とされ、また台湾も中国領土として書かれている。同時に、尖閣諸島も中国領土となっているし、インドとの国境やロシアとの国境もすべて中国側の主張でつくられていた。
当然に「国境線が確定していない」状態であれば、点線などで記載することが普通であるが、中国はそのような配慮をするはずがない。「先に既成事実を作る」というようなことになるのである。
当然に各国が抗議することは言うまでもない。この講義に対して、日本が対応がASEAN各国よりも遅れているのは、現在の岸田内閣の外交姿勢があまりにも弱腰であるという非難につながっていることも、確かなのである。
中国「新地図」に加盟国反発 ASEAN首脳会議
【ジャカルタ=森浩】東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が5日、インドネシアの首都ジャカルタで行われた。
中国と一部加盟国が領有権を争う南シナ海問題などが協議された。中国は8月下旬に南シナ海ほぼ全域の領有を改めて主張する新地図を公表し、フィリピンなどが反発。会議では首脳から中国による一方的な現状変更を懸念する声が上がった。
ASEANは全会一致や内政不干渉の原則が足かせとなり、域内外の課題に有効な措置を打ち出せない状況が続く。中国が南シナ海の軍事拠点化を進める中、議長声明などで踏み込んだ批判を示せるか注目される。
7日までASEAN関連の首脳会議が行われ、ASEANと日米中韓などとの会合や、ASEANに8カ国を加えた「東アジアサミット」が開かれる。一連の会合でASEANと中国は、南シナ海での紛争回避のための「行動規範」策定作業を進めるが、新地図を巡る反発が協議に影響を与える可能性がある。
5日の首脳会議では、国軍支配が続くミャンマー情勢も議論され、ASEANと国軍が合意した暴力の即時停止を含む5項目について、引き続き国軍に履行を求めることが確認された。ASEANは首脳会議への国軍関係者の出席を拒否しており、ミャンマー代表は参加しなかった。
首脳会議前のあいさつで議長国インドネシアのジョコ大統領は「ASEANはいかなる大国の代理人にもならない」と言及。激しさを増す米中対立からASEANとして距離を置く姿勢を強調した。
2023年9月5日 19時36分 産経新聞
https://news.livedoor.com/article/detail/24931839/
さてここでは「中国がおかしい」とか「中国の覇権主義が…」などというつもりはない。そのようなことを言って批判しても、そのことは「遠吠え」でしかない。そのようなことを言うのであれば、しっかりと中国大使館か領事館などの前で抗議活動やデモ行進を行えばよいのである。
私が言いたいのはそのような話ではなく、「なぜいま中国がこのような地図を発表したのか」ということである。単純に、中国の外交担当が全く常識がなく、自分の主張を国内の地図だからといって発表して何のクレームもつかないと思っていた「常識外」であるならば問題はないが、いかにダメな国中国であっても、そこまでの常識がないとは思えないし、そのような地図を発表すれば、関係国から非難が来ることくらいは想像しているであろう。要するに、外交問題化するということはよくわかっているはずである。ましてや、ASEAN会議やG20があるというタイミングで、この地図を出せば、そのようなことを会議で直接的に非難されることになることは、火を見るよりも明らかであろう。
では、なぜそのようなことをしたのか。
一つには、「地図」を発表しなければならない事情があり、それは国内の外交上で問題がある以上の重要なことであると考えるべ駅であろう。つまり「国内の習近平の勢力争い」において「そのようにしなければならない事情」が存在したということに他ならない。
そのように考えれば8月上旬に「北戴河会議」というものがあった。これは会議とは言っているものの、単純に共産党の幹部や引退した長老が、北戴河という避暑地に一堂に「避暑」いゆくことによって、その場で様々な打ち合わせや政治的っ課題に関する忌憚の愛意見交換が行われる。正式な会議ではないので、本音の話し合いがなされるということになっているのである。その中で「一帯一路はどうなっている」「経済政策はどのようになっている」ということの突き上げを食らったのが習近平。結局、長老にどうなっているのかと聞かれれば、何らかの結果を出さなければならないが、その北戴河会議が終わってから中国経済の失墜は大きなものであり、政治的にどうにかなるレベルを超えてしまっているし、また、一帯一路なども全くうまくゆかない。中国が支援しているロシアは、小国であったはずのウクライナ愛艇に劣勢に立たされている状態である。
このほかで習近平が公約していたのは「中華民族の復興」であり、そのことは台湾の併合や南シナ海の支配、西太平洋の進出や旧中国の「最大版図の復興」である。そのことを示すために、「実行支配として習近平が地図に示した」ということである。
このような事情だから「許す」というのではない。逆に「この地図のように角田市を狙っているのだから、当然に先に手を打つべし」という事であり、なおかつ、そのようにしなければならない内容を作った「中国国内の反習近平を刺激して習近平の独裁体制を打破する」というような状況を作り出すことが必要になってくるのではないか。
外交上の内容は、このように見てゆくのが普通なのではないか。当然にクレームを言いながら裏でしっかりと対処する。それが政治である。