現代芸術8-ミュシャ「スラブ叙事詩」
2023.09.11 11:19
1910年パリで成功したミュシャは故国チェコに戻った。そこで彼は愛する祖国のために壮大な「スラブ叙事詩」を描く。この絵画にインスピレーションを与えたのはスメタナの「我が祖国」だと言われている。この交響詩はチェコの人々に深く影響を与えていたのである。
19世紀後半から工業に欠かせない石炭がチェコに豊富に採掘され、それを起点に産業革命が起こっていた。そしてプラハでは人口が急増した。オーストリア帝国ではハンガリーは二重帝国として同等の自治を勝ち取っていた。しかし帝国の3都の1つにもかかわらず、チェコのスラブ人の地位は低かった。
独立運動の集会を禁止されていたチェコ人達は、何とソコルという体育運動協会をつくり、それを隠れ蓑に民族独立の意識を高めた。1912年には全スラブソコル大会が数万人の規模で開催された。ソコルの体育館には図書館もあり、講演会も行われて、民族教化の役割を果たした。
1911年プラハの市民会館が建設され、ミュシャはその市長の間の壁画を無償で引き受けた。そして最大の仕事は、チェコの守護聖人聖ヴィートを記念するプラハ城内側の聖ヴィート大聖堂のステンドグラスである。この大聖堂は1300年から建て増しが進みまだ未完成だった。そしてチェコ人によって完成されるのだ。