芝うらの風景 ーしばうらのふうけいー
2023.09.12 07:03

歌川広重名所江戸百景、冬の部より
芝うらの風景
水彩にて 模写絵師つねきち
現在の東京都中央区にある
浜離宮の辺りから、
品川方面を向いた景色です。
芝うらとは
「芝の前面の海」という
意味があるそうです。

絵の向かって右側にある、段々になった場所には
「御浜御殿」と呼ばれた
将軍の別荘がありました。
戦後、米軍によって破壊されたそうですが
その後復旧され
現在は「浜離宮恩賜庭園」(はまりきゅうおんしていえん)
として、特別史跡に指定されています。
左側に立っているのが航路や潮の干満を示す”澪標”(みおつくし)。
この澪標は、海が浅瀬であることを示しています。
”みおつくし”という言葉は
「身を尽くす」にもかけられ
「わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ」
(小倉百人一首・元良親王)
という歌にも登場しています。
※歌の意味:あなたとの関係が露呈してしまって、苦しむことに変わりはない。
難波にある澪標のように、この身を滅ぼしてもお逢いしたいと思うのです。
そして絵の中央から前に向かって飛んでいるのが
「都鳥」=ゆりかもめ、といわれています。
ゆりかもめは冬の季語にもなっている渡り鳥で、
絵のように冬場は薄いグレーと白っぽい見た目をしています。
夏になると顔や羽根部分が黒く染まり、
ちょっと雰囲気の変わる鳥です。
つねきちの描いた都鳥たちが
無心な目をして海上を飛んでいる姿が、
何となく微笑ましい感じです。
野生の鳥たちにしては、人(?)の良さそうな顔つきをしています。
今回の絵の主役は、やはり
このゆりかもめさん達なのでしょう。
つねきちの生き物に対する思いが
伝わって来る一枚です。