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鍛冶の会 不定期報告(9月)

2023.09.25 05:33

鍛冶の会、自称広報の庭竹です。

今年は色々なところで植木が枯れてしまうほど特別に暑い夏でした。我々が活動する鍜治小屋では火炉(ホド)で火を起こしていますので、出入り口にある温度計は40度を超えているのが当たり前となっていました。

勿論火炉の前はより暑いのですが、皆楽しそうに鉄を叩いているのですから来園者も珍しがって見学されています。

こちらは古参が制作中の和包丁二種です。姿も勿論ですがコミ(柄を取り付ける部分)まで綺麗に仕上げてあります。裏はもう少し整え直すそうです。私は包丁を造ったことがありませんが必要となれば造れる技術はあった方が良いとは思います。

こちらの鉄ですが見方によっては鉄屑、見方によっては古そうな鉄、スペシャリストが見れば錆かたからしてあまり良くない古めの鉄でしょうか、今回はこの鉄で切り出し小刀を造ります。

さてこの地金(先程の鉄)に鋼を鍛接した後火造りをします。今回は練習をかねてなるべく完成形に近い形に火造り(赤い鉄を鎚で叩いて形を整える)をしてゆきます。結果的にヤスリなどで削り取る作業料が少なくなりますので作業の短縮化につながります。

火造り後の材料はわら灰の中で一晩冷まします。まずはウラの平面精度を調整してから裏スキを行います。この時点での精度は80%位です。

つづいて成形作業ですが私はこの作業が好きです。ヤスリやセンと言った道具で少しずつ形になってゆくプロセスに面白味を感じています。一番気にしているのは手の馴染みです。常に手に持って角が出ていないか、重すぎないか、重心が変なところにないかチェックしています。手の馴染みが格好良さの中に収まっていることが理想です。鍛冶の会には様々な会員がいますのでそれぞれに楽しみ方があるように見て取れます。

全体の形状やバランスを見ながら最後に各所の精度を上げてゆきます。

焼き入れ行程の前の画像です。肌色に見えるのは砥の粉を塗布してある為です。

焼き入れとは適正温度まで赤めた材料を水で急冷する行程です。材料の適正温度はある程度決まりがありますが、急冷する水温や水の代わりに油を使うなど工夫や秘伝があるそうです。

焼き入れ後は砥の粉の効果で鉄の表面に黒い肌が形成されます。上画像の様に鎚目で装飾した品物は鎚目に入り込んだ砥の粉を落とすのが大変です。

鍛冶作業を最も難しくさせている点が火(熱)による鋼の変質かと思います。成形時に理想的なウラを造ったとしても、焼き入れをすると変形するのです、時には反ったり、時には屈んだり、時にはねじれたりと、また時には変形しないこともあります。

変形は鎚で叩いたりして修正するのですが、焼き入れ後の鋼は硬化していますので割れてしまうこともあります。これまでの苦労が水の泡といった状態です。

それでも誤魔化し宥めてウラをなるべく平面にしてから刃おろしをしてゆきます。刃研ぎの前の段階です。一般的には刃のついたものが売られていますが、鍛冶の会では制作していますので初めは刃がありません。

研ぎの段階になってもまだまだ随分と時間がかかります。荒砥中砥と何日も研いでいる会員もいます。

時には研場が渋滞していることもあります。

すると火炉が無人になります。あまりの暑さに火から逃げているわけではありません。

研ぎは作業工程の中でもかなり時間がかかる作業です。

以上、本業は植木屋の庭竹でした。