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ロンドンは、まだ故郷ではない

ロンドンお散歩① / Mewのはなし

2018.08.28 19:40


ロンドン中心地の西側・ケンジントンやメイフェア、ナイツブリッジあたりは、高級住宅地&お買い物エリアとして知られています。

有名デパートのハロッズもこの辺にあります。


このエリアを散歩していて、ふいに横道に曲がると、人気が無く静かな小道に出会うことがあります。

小道の両脇に、整然と2・3階建てのお家が並んでいる。


これは、「Mew」と呼ばれる家です。


このMewの歴史を上司が教えてくれて、面白かったので自分でも調べてみました。



Mew(ミュー)は、単語としては「馬小屋・隠れ家」という意味。

歴史は18世紀ビクトリア時代まで遡ります。


18世紀、エリートたちは使用人と馬を所有していましたが、お屋敷に何人もの使用人を寝かしたり、大きな馬を入れておくスペースがありませんでした。



そこで、大きなお屋敷の裏に小さな家を建て、

1階(グランドフロア)は馬小屋、2階・3階は使用人の部屋にすることにした。

使用人の中にも身分があり、一番下の使用人は馬と一緒に寝ていたとか。



家の裏側はお屋敷と繋がっていて、使用人がいつでも主人に仕えられるようになっている。

一方、裏側に窓は一切無く、使用人は不用意に屋敷を覗けない仕組み。




そして20世紀、自動車がポピュラーになり、馬の需要は無くなり使用人の数も減っていったことから、Mewは売りにだされ一般の人の手に渡るように。


売りに出された当初は、ギャングの温床として有名になったようです。

窓が少なく、静かな通りなので、裏取引をするには絶好の場所だったのかもしれません。



20世紀後半になると、ギャング以外にもMewに目をつけ始める人が増えました。

特に高級スポーツカーを持つカーレーサー。元々馬小屋だった1階に車を安全に保管できるうえ、高くない値段で一等地に住宅を買える。



そんなこんなでMewはだんだんと人気を博し、今では非常に高値のついた不動産になっています。

中心地にとても近く、静かで車もほとんど通らないので、住みやすいのだと思います。



ロンドンで突然静かな裏道にあったら、たぶんMewです。

何百年も前、馬や使用人がせわしなく働いていた当時を想像すると、不思議な気持ちになります。