縁・サーフィン⑤「ジャズ・ピアニスト 渡辺翔太」
縁・サーフィンの5回目で取り上げるのは、今、ノリにノッているジャズ・ピアニストの一人、渡辺翔太さんです。(親しみを込めて、以下、翔太さん/ショータさんと呼ばせていただきます。)
翔太さんは今ブレイク中の新進気鋭の5人組MAY INOUE STEREO CHAMPの一員。ということで、先日、熊本・八代のレストランバーZさんで行われた彼らのライブを聴きに行ってきましたが、そのプレイぶりは眩しかったです。
私が翔太さんのピアノを初めて聴いたのは8年前、名古屋・錦の老舗Jazz Bar マイルスさん。
このお店はいくらママの温かくも妖艶な雰囲気そのままの実に居心地の良いバーで、3回/夜のライブは通常、ピアノとヴォーカルのDUOでしたが、ジャズを全く知らなかった私にとって、このお店、そのライブの楽しさがそのままジャズの楽しさでした。(注1)
そして、その中でも私のお気に入りだったピアニストが「渡辺ショータ」さん(翔太さんのその当時の表記)で、若かりしショータさんの才気煥発、やんちゃでお茶目なピアノは、クラシック畑で育った私にとって本当に衝撃的。
それまでピアノ伴奏はあくまで「伴奏」で、歌手に歌を気持ち良く歌ってもらうためにお膳立てをすることだと思い込んでいたのですが、大先輩に当たる歌手の皆さんに対して「もしこんな伴奏をしたら、どうされます?」「ちょっとこんな感じで歌ってみません?」等々、ピアノで対話を求められ、歌手の皆さんはそれにしゃらっと対応され、また歌手からの「だったら、こんな感じで行くからね!」等の歌いながらの対話にショータさんも過剰なまでに反応され、どんどん変化していく音楽。
うまくいく時もあり、またそうでない時もありましたが、その思いがけない展開に何度も驚かされ、時に笑わせてもらいました。
今となっては、ショータさんがまだ出てきたばかりの愛されキャラで、歌手の皆さんから可愛がられていたから出来た奇跡的なライブだったように思いますが、でも、あれは確かにジャズでした。
ちなみに上の写真は2010年にマイルスさんで撮ったものですが、翔太さん、若い!左隣はいくらママ、右隣はヴォーカルのjunkoさん。その時の記事にはショータさんのことを「ともかく独創的、茶目っ気たっぷり、しかも繊細で、聴いていて飽きない。最高です。」とベタ褒めしていました。笑
また、この当時のショータさんのライブには何度か行かせてもらいました(注2)が、毎回、ショータさんが本当に楽しそうに演奏していたこと、終わった後、「想像以上にスゴいライブが出来た!」という充実した笑顔で挨拶してくれたことがとても印象的でした。
そして私の福岡転勤後はたまにショータさんのフェースブックを見て、「結構、東京でライブするようになったんだ。頑張ってるなぁ」とか「あっ、石若駿さん(ds)とライブするようになったんだ」というぐらいしか、その活動ぶりを追えていませんでした。
そこに昨年、鹿児島・明日の地図さんでの衝撃的なキャッチ・アップ!MAY INOUE STEREO CHAMPの一員にショータさん?!
昨年の鹿児島ジャズ(注3)で井上銘さんが小沼ようすけさんとカッコいいプレイを披露し、その紹介DVDを観て興奮した私がいて、その私にマスターがこの記事を見せてくれた、という流れでしたが、本当に考えられないその展開には感動を通り越して、感無量となってしまいました。
そして、またそこでつながった縁から約1年。約6年ぶりの再会。。。本当に嬉しかった!
これは、翔太さんがこの6月に発表した初のリーダー・アルバム「AWARENESS」。
発売されてすぐに入手しましたが、いいジャズ・バーで流れている音楽と同じで、会話の邪魔にならず気持ち良く鳴らすことも出来る一方、じっくり聴いたらその世界に入れてしまうという親しみやすさと奥の深さを兼ね備えたいいアルバムです。
その作曲は全て翔太さんで、その多種多様な音楽を生み出す才能にも改めて驚きましたが、若井俊也(b)、石若駿(ds)という超強力メンバー(注4)にブラッシュ・アップされ、更に引き立ったという経緯もあるようで。。。やはり、ジャズは対話が大切なんですね。
また、2曲入っているボーカルの吉田沙良さんもいい味わいとなっているこのアルバムは、世間でも好評の内に受け入れられた模様で、Jazz Life誌18年6月号で上の取材記事が取り上げられ、8月号ではレコ発ライブのレポートも掲載されていました。
ちなみに翔太さんはこのアルバム発売を機に、それまでのショータを翔太に改名されたとのこと。。。「ジャニーズJr.の渡辺翔太さんを意識しなかったの?」とお聞きしたところ、「改名してから気づいたんですよね」とあっけらかんとした答えが。。。笑
まぁ、翔太さんらしいというか、こうなったら、「渡辺翔太って、ジャズ・ピアニストだよね?」と当たり前のように言われるまで、頑張るしかない。
翔太さんは今年30歳になったばかりですが、まさに勝負所を迎えたようで、そんないいタイミングでまた翔太さんをウォッチ出来ることが出来る、そんなありがたい縁に感謝するばかりです。
今度は、渡辺翔太トリオでのお越しをお待ちしています!
(注1)マイルスさんにそう頻繁に通える環境になかったことから、聴きに行く日はライブのメンバー表を見て、ピアノはショータさん、後はヴォーカルの司いつ子さん、牛嶋としこさん、junnkoさん、ギターの湯田大道さんの日を選んで通っていました。
本当に楽しい時間を過ごさせていただきましたが、唯一悔やまれるのが、後藤浩二さん(p)を聴けなかったこと。ピアノをショータさん、と絞ったため起きた現象ですが、宮崎のcafe take5さんを訪問した際、しまった!と。次回、マイルスさんを訪問する時は後藤さんのライブ!と思ってはいるものの、そもそも最近は、マイルスさんに行く機会すら作れません。苦笑
(注2)特に思い出深いライブと言えば、名古屋・Varentine Driveでのライブ。演奏も良かったのですが、画家のNOVOLさんとのコラボという企画自体がとても面白かった。。。でも、懐かしい!
そして、名古屋 覚王山・スターダストさんでのライブ。別グループで「しあわせな夢のジブリ」というアルバムを発売していた若井俊也さん(b)との初めてのツアーだったと思うのですが、かなり盛り上がったライブとなり、終演後のショータさんが物凄く興奮していたのを覚えています。
翔太さんからもこの時の縁で渡辺翔太トリオのベーシストが決まり、今回の「AWARENESS」につながったとお聞きしたので、あのライブを聴けたこと自体、ちょっとした宝物になりました。笑
(注3)今年の鹿児島ジャズ・フェスティバルもついに今週末!少し天候が不安ですが、いいフェスになりますように!楽しみにしています。
【付録】私の持っている渡辺ショータ参加アルバム
Ⅰ.赤門 5th CD「AGRICULTURE」
1.Buzzed / 2.El Sol / 3.Mrs.Dee / 4.Ostrich / 5.Redman / 6.Stevie
赤門は2003年に名古屋で結成された3人組のインストゥルメントジャズファンクバンドで、メンバーは小川翔(g) 、 渡辺ショータ(p) 、 村上聡志(b)。
リード・ギターの小川さんが強烈に引っ張る音楽にメンバーが追随し、スタジオ録音ながらもグルーヴ感を醸し出しているアルバム。。。きっとそのライブは思い切り盛り上がるバンドだったのだろうと思われます。
尚、ショータさんが作曲したEl SolとOstrichの2曲は、共に出だしがカッコいいタイプの違う曲で、その多彩な引き出しはこの頃からお持ちだったということがよくわかりました。
Ⅱ.eN(エヌ) 1st mini album 「My First Note」
1.春かぜ / 2.レインソング / 3.ゆれる / 4.月がみてる / 5.たからもの / 6.Tiny / 7.雨があがれば
eN(エヌ)は2007年に地元名古屋で結成され、2013年に解散した3人組のバンドで、メンバーはkao(vo)、渡辺ショータ(p)、大久保寛之(b)。
ボーカルのkaoさんの歌声、詞、曲は実に独特な味わいで、しっかりとした重量感のある聴き応え十分のアルバム。ここではショータさんのピアノ/キーボードが存在感抜群で、音楽の流れをしっかりリードされています。
また、ショータさんが作曲した2曲、春かぜとレインソングで魅せた叙情性は、今聴き直してみると、その後の「AWARENESS」につながるものを感じさせられます。
尚、2013.12.29に行われた「eN LAST LIVE!!@SunnySide(注4)」のライブ録音がこちらからダウンロード出来ます。ライブだけにこのアルバムとはまた違った流れのある演奏ですが、5年程前の翔太さんのプレイも含め、かなり楽しめました。是非一度お聴きください。
(注4)kao:vocal 渡辺ショータ:piano,keyboard 大久保寛之:bass 山下佳孝:drums 小川翔:guitar 伊藤英彦:Recorded&Mixed
Ⅲ.司いつ子 2nd Album「Page i」
1.The way we were / 2.East of the sun(& west of the moon) / 3.Blame it on my youth / 4.Take Five / 5.In the wee small hours (of the morning) / 6.You'd be so nice to come home to / 7.(They long to be) close to you / 8.瞳を閉じて / 9.No more blues / 10.Everything must change / 11.East of the sun(Quartette version)
司いつ子さん(以降、いつ子さんと呼ばせていただきます)は恐らくマイルスさんで私が一番よく聴きに行った百戦錬磨のジャズ・シンガー。そして福岡転勤後、久しぶりにマイルスさんに行った時にも聴かせていただき、「2枚目のアルバム」とお聞きして、喜んで購入させていただいたのですが。。。寺井尚子さんの帯のコメントを読んでびっくり。
「司いつ子が愛する名曲達に新進気鋭の渡辺ショータのアレンジが華を添える、新たな人生の1ページがここに・・・」
まさか、いつ子さんがショータさんのアレンジで、そのデュオを中心にしたアルバムを出されるとは?!これまでいつ子さんのアルバムと言えば、ピアノの大家 花田利明さんの悠揚迫らぬどっしりした伴奏でのしっとりした歌のイメージが強かったため、このショータさんの起用は本当に新鮮!全然音が違って、何だかキラキラしている感じ。このアルバムを聴いてみて、再度驚かされました。
今回このアルバムを聴き直してみて、改めて思いましたが、以前とはレベルが違うとは言え、時々お茶目が顔を出したり、どこへ行くのかワクワク出来たりと、やっぱり翔太さんの一筋縄ではいかない(?)伴奏ぶりは健在。。。これからどう変わっていくのか、いかないのか。本当に楽しみなピアニストです。