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会津坂下町「そば処 水車(くるまや)」 2023年 秋

2023.10.27 13:33

新蕎麦の季節。JR只見線の最寄り駅からは遠いが、評判の蕎麦を食べたいと会津坂下町に向かった。

  

「そば処 水車(くるまや)」は、只見線・会津坂下駅から北北東に約5km離れ、左を向いた犬の姿のような形をした田園の中の集落・沼越にある。

 

「そば処 水車(くるまや)」では、自家栽培された蕎麦の実を自家製粉し、極細麺ながらコシがある十割蕎麦を提供するということで、数ある会津地方の蕎麦屋でも屈指の人気店と言われている。

 

「そば処 水車(くるまや)」の営業時間は11時から14時ということで、今回は磐越西線の最寄りとなる塩川駅から輪行した自転車で訪れ、帰りに只見線の列車の乗ることにした。

*参考:

・福島県:「只見線ポータルサイト

・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書(PDF)(令和2年3月) 「復興事業に係る事務の執行について」 p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線沿線の食と酒ー / ー只見線の秋

 

 


 

 

夜勤明け、自宅に一旦帰り、支度をしてから郡山駅に向かった。そして、駅頭で自転車を輪行バッグに収納し駅舎に入った。

 

10:15、磐越西線の会津若松行きの列車が郡山を出発。切符は、有効期限の1カ月以内に只見線に乗り会津若松に行く予定があるため、郡山~会津若松(喜多方)間の「Wきっぷ」にした。

 

 

11:34、会津若松で喜多方行きの列車に乗り換え、塩川に到着。

 

駅舎は鉄筋コンクリート2階建ての立派な建物だった。この駅頭で、自転車を組み立てた。

 

塩川駅を出てまもなく、日橋川沿いに南下し、県道127号(会津坂下湯川)線に入り西に進んだ。そして、山王橋を渡ると、前方に会津平野を囲む山々の稜線が見え、南を塞ぐ会津百名山の「大戸岳」(1,415.9m)や「小野岳」(1,383.4m)の山影が確認できた。

 

12:07、阿賀川(大川)に架かる立川橋を渡り会津坂下町に入った。

渡河後、少し走ってから振り返ると、道の先に「猫魔ヶ岳」(1,403.6m)の山裾越しに、会津百名山「磐梯山」(1,816.2m)の山頂が見えた。

  

 

交通量の多い十字路を左折し町道宇内沼越線に入り、400mほど進むと大きな左カーブ入口に沼越集落の看板があり、その脇に「そば処 水車」と墨書された木板が立っていた。

沼越集落に入り200mほど進むと公民館があり、地区案内図を見ると「そば処 水車」が表記されていて、場所は集落の北西だった。

バス停の時刻表を見ると本数は少なく、スマホで路線図を調べて見ると只見線・会津坂下駅は経由していなかった。*参考:会津乗合自動車㈱「路線バス」坂下⇔御池田⇔坂下(循環) 時刻表 URL: https://www.aizubus.com/rosen/pdf/20231201/03_oikeda.pdf?20231124

「沼越」バス停から道を少し引き返し、右に曲がり集落の中を北の方二進んで行くと、民家倉庫の壁に“そば処 くるまや”とスプレー書きされた文字と矢印が見え、その通りに進んだ。

 

 

 

12:22、「そば処 水車」に到着。「沼越」バス停から400mほどの距離だった。

玄関に設えられた風除室の中に、一枚板に“そば処 水車 くるまや”と墨書された看板が掲げられていた。

風除室の前には、駐車場の案内など複数の貼り紙が掲げられていた。

 

 

 

駐車場の隅に自転車を置き、店に入る事にした。玄関扉の脇には、“本日の食材”としてメニューにある野菜天ぷらの内容が記載されていた。

中に入り、店の奥に声を掛けるとスタッフが来て人数を確認すると、『どうぞ、お好きな席に』と招き入れてくれた。

 

靴を脱いで短い廊下を進むと、右手の厨房では4名の女性スタッフが調理を含めた作業をしていた。客席は左側にあり、テーブルが6卓並び、3組計7人の先客が居た。店の造りは、一昔前の公民館のようだと思った。*下掲写真は食後、客が私一人になった時のもの。

 

空いたテーブルに座り、メニューを拝見。

メニューは写真入りの他に、文字だけのものがあり、“裏メニュー”として「そばの刺身」などもあった。

但し、側面のサッシに“ケガによる営業内容変更について”という貼り紙があり、店主が今年7月30日に指を切ってしまったということで、“かけそばと特盛を中止”、“営業時間は11時30分~14時”となっていた。

私は、「天ざる」の「中盛」と「飛露喜」を注文した。日本酒「飛露喜」の注文に来店手段を訪ねたスタッフだったが、自転車は押して帰りますと告げると安心していた。


まもなく、お通し(無料)に「揚げ蕎麦」が運ばれてきた。

そして、スタッフが「飛露喜」の一升瓶を持ってきて、コップに注いでくれた。酒種は特別純米無ろ過生原酒だった。

町内の「廣木酒造」が世に送り出し、今でも“プレミアム日本酒”として絶大な人気を得続けている「飛露喜」。グラスに鼻を近づけると、冷やの純米酒と思えぬ香りが立った。吞み口はまろやかで、ただのど越しは純米酒らしくさっぱりしていた。期待以上の、旨い酒だった。

   

肝心の「天そば」は、他の客の給仕が終わっていることもあってか、思いのほか早く運ばれてきた。揚げたての天ぷらの香りが立ち上がり、胃袋が鳴った。

  

まず、お椀の水蕎麦を頂いた。ツルんとしたのど越しで、極細麺ながら噛むとコシがあり蕎麦の風味も残っていて驚いた。

 

天ぷらは、全てがカラッと揚がっていて、ゴボウは柔らかく風味があり、オカノリは初めて食べる味で絶品だった。「飛露喜」との相性は良く、最高だった。

 

麺つゆはタレ瓶から好みの量を自ら注ぐ方式のようで、そば猪口は空だった。また、薬味のワサビ、ネギの表面の乾いておらず新鮮で、それぞれから良い香りが立っていた。

 

蕎麦を食べる。細く切ってあるためどうか、と思ったが、コシがあり香りや風味とも想像以上に良く、旨い十割蕎麦だった。箸は止まらず、一気にたいらげた。

   


〆に移る。蕎麦湯は湯桶で出され、濃厚で旨かった。

お茶はセルフサービスで、ポットにはアツアツのそば茶が入っていた。茶碗からは新鮮な蕎麦の香りが立ち、店主の手抜かり無さに感心し、食事を終えた。

  

 

13:20、会計を済ませ、表に出る。駐車場の端に立つと、青々としたヒコバエが生える広大な田園越しに、会津平野の北東辺を塞ぐ山々が見えた。


 

「そば処 水車(くるまや)」を出た後は、自転車を押して会津坂下駅に向かった。

田んぼの間を通り、国道49号線を越えて市街地に入った。途中、御稷神社に立ち寄り「台ノ宮の大ケヤキ」を仰ぎ見た。葉は色付き途上だったが、見応えがあった、



県道33号(会津坂下河東)線を進み、密集する3つの酒蔵の前を通った。

「一生青春」「天明」の曙酒造㈱

「學十郎」「豊久仁」の豊国酒造

そして、「そば処 水車」でいただいた「飛露喜」の廣木酒造本店。*参考:福島県南酒販㈱「新・酒蔵探訪42」合資会社廣木酒造本店 

 

この3つの酒蔵のほぼ中心にある五ノ井酒店では、明日の只見線全線乗車で恒例となっている“”会越の酒“吞み比べの地酒を選び、四号瓶を購入した。

  

五ノ井酒店を後にし、県道33号から左折し、県道222号(会津坂下停車場)線を進むと、まもなく幅広の道の先に駅舎が見えてきた。

 

 

14:15、只見線の会津坂下駅に到着。「そば処 水車」から約5kmの道のりを、寄り道をしながら約1時間で自転車を押しながら歩いた。

この後、駅頭で自転車を分解し輪行バッグに入れて、待合室で到着を待った。
会津坂下~会津若松間は一日7往復の列車が走っているが、朝夕の高校生の通学に合わせたダイヤで、日中帯は13時41分のみで、その次は3時間後の16時45分発になっている。しかし、今日は紅葉の見頃ということで臨時列車「只見線満喫号」が15時20分発で運行されているため、待ち時間は1時間ほどで済んだ。

 

列車の到着時間が近付き、輪行バッグを抱えホームに向かった。会津坂下~会津若松間の運賃は420円。

 

ホームから、小出方面に新設されたバリアフリーの通路と遮断機を眺めた。只見線内で列車行き違いを行う会津坂下・会津宮下・会津川口の各駅では構内踏切の改良工事が行われているが、県立会津農林高の生徒が多く利用するためか、会津坂下駅ではいち早く供用されているようだった。

  

列車の到着を告げる構内放送が流れる中、七折峠に列車の汽笛がこだまし、まもなく列車が姿を現し、ゆっくりとホームに入線してきた。

15:20、「只見線満喫号」が会津坂下を出た。車両はキハ110系3両編成で、指定席2両はほぼ満席で、自由席最後尾車両も多くの客で席は埋まっていた。漏れ聞こえる会話から、大半が観光客のようで嬉しくなった。

 

 

列車は若宮を出て会津坂下町から会津美里町に入り、新鶴根岸と刈田の間を快調に進んだ。左(東)の車窓からは「磐梯山」が見えた。

“高田 大カーブ”で進路を真南から真東に変えた列車には、会津高田で県立会津西陵高の生徒が乗り込んできた。


会津本郷の直前で会津若松市に入り、大川(阿賀川)を渡り始めると、列車の後部からは、「明神ヶ岳」(1,074m)を最高峰とする西部山地の稜線が見えた。

そして、渡河途中で上流に目を向けると「大戸岳」の雄大な山塊が見えた。

 

 

15:49、「只見線満喫号」は西若松七日町を経て、無事に終点の会津若松に到着。2ー3番線ホームは混雑した。

連絡橋に上り、乗ってきた列車越しに「磐梯山」を眺めた。

 

駅舎を抜けると今夜の宿に向かった。明日は、小出まで只見線全線乗車して、私選“只見線百山”の候補である「笠倉山」(907m)の検証登山を行うため、早めに休む事にした。

  

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」 *2008年放送

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金

・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

 [寄付金の使途] 

 (引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

  

以上、宜しくお願い申し上げます。