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精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

シオダマリセスジダルマガムシ

2018.08.29 03:00

Ochthebius danjo Nakane, 1990 

ダルマガムシ科 

体長・2mm前後

分布・九州、屋久島、男女群島 

環境省レッドカテゴリ・準絶滅危惧 

楕円形に近い体型をした、ものすごく微少な甲虫。頭部と胸部はメタリックな緑、上翅は黒っぽいが、全体を粗く青緑色の毛が覆うため、ぱっと見は緑っぽい色の虫という印象。

水生甲虫の一群たるダルマガムシ科は、日本からは数十種が知られているが、近年各地から相次いで新種が見つかっており、最終的な種数はまだまだ増えることだろう。かつては同じく水生昆虫(ばかりではないが)として知られるガムシ科に近いと見なされていたが、今は別の分類群のハネカクシ科に近いということになっている。

多くの種が池沼の水底や、川べりの石の濡れた表面といった純淡水域に生息する仲間にあって、この精霊の生息環境は非常に特殊である。すなわち、磯海岸の岩のくぼみにたまった水たまりの中にだけ生息しているのだ。これは、潮の干満の影響を受けるエリア(潮間帯)にできる潮溜まり(つまり溜まった海水)ではなく、潮間帯より上部にある、雨水や海岸から染み出る真水が溜まって、そこに海からの塩分が多少混ざってくる程度の水たまりである。こういう水のことを「半鹹水」と呼ぶ。シオダマリセスジダルマガムシと名付けられてはいるものの、実際には潮溜まりには生息しない。


水たまりの底をゆっくり歩き回るほか、空気の泡を蓄えた腹側を上にした状態で水面下に張り付き、歩き回るといった曲芸じみたマネをする。恐らく、水中の藻類などを餌にすると思われる。


これまで見つかっている生息地は、国内でもわずか数カ所。いずれも、即刻開発で消滅する恐れの低い辺鄙な場所な上、生息地での個体数も決して少なくないが。しかし、生息に要する環境条件が難しい種なので、現在の生息地が温存されることが望ましい。


※引用文献

後日追加。