教育の視点から愛玩動物看護師の可能性を考える Vol.3
獣医療において愛玩動物看護師の革命は起こるのか?
プロフェッショナルインタビューシリーズ
ゲスト
・福山貴昭(ヤマザキ動物看護大学動物看護学部 准教授、博士(学術)、愛玩動物看護師)
■現場主義に限界を感じ、学問の世界へ。発信者として活躍を広げる 続き
生田目:福山先生はメディアでのご実績や飼い主様へのご講演も多いと伺っていますが、様々なメディアに出る理由はどのような背景があるのですか?
福山:最大の利点は発信力です。動物業界に入る時に、キレイごとで済ませられる世界ではないし、やるからには改善していくべきだと考えていました。自分なりに調べた結果、業界を変えるために発信をする最適な場所として知ったのが教壇でした。教壇では純真無垢な学生たちが動物業界の理不尽なことに直面した際に疑問を持つようにしたいと思い、動物福祉の考えを最初に植え付けるようにしました。多くの人が疑問を発信し、業界を改善していく力にしたかったのです。
しかし、教育業界に携わり始めてから20年が経ち、次は飼い主様や一般の方にも気づきを与えたいと思い始めました。それがメディアでの発信を始めたきっかけです。
実際にメディアと関わってみると、ポジティブなことは発信できても、ネガティブな内容は獣医師の方に専門用語を並べられて難しい方向へ進んでしまい、うまく伝わらないという難点があることが分かりました。ですが、動物福祉について発信するきっかけ作りとしてメディアは一番効率が良いと思います。
生田目:そうだったのですね。ネガティブな内容というのは具体的にはどのようなものがありますか?
福山:例えば、私は小学生当時、修行でブルドッグのブリーダーさんの所へ通っていたので、「ブルドッグは呼吸困難な動物」というものを知っていました。しかし、テレビや雑誌で寝ている姿を映す時の表現は「いびきをかいて可愛い!」というものばかりでした。「それは呼吸困難状態だ」と発信しようとしても、なかなかうまく行きません。もともと可愛いものとして認識されていたものを急に変えることが難しいのは当たり前ですよね。
それでも、実はそれはネガティブな状態であるという気づきを少しずつ与える手段として考えると、メディアは本当に効率が良いものでした。分かりやすい言葉で発信しながら動物の扱い方を啓発していくことができれば、将来的に福祉的な感覚を持つ環境作りに結びついていくと思います。
生田目:ありがとうございます。それは福山先生がおっしゃった動物福祉ですね。福山先生は実際にペット業界内外とのご関係も多いと思いますが、今回の動物看護師の国家資格化は周囲からどのように受け取られていると感じますか?
福山:飼い主様やサロン様などから「何が変わるのですか?」という質問を多く受けました。飼い主様にとって、長年自分のコを担当してくれた看護師さんが国家資格を持つか持たないかはそれほど重要ではないと思います。もちろん、私たちも明確に何が変わるのかは手探り状態ではありますが、業界内外から興味を持って見られているのだなと少なからず感じています。
一方で、進路に対する親御さんの理解が得やすくなったという声が学生たちから多く聞かれました。やはり、夢に向かう自分の背中を親に押してもらえるのは、17歳くらいの若者にとっては何物にも代えがたいことなので、国家資格化の影響は大きかったと思います。