8月30日 三川町→酒田市→三川町(38km)
午前中、東北地方を横切る秋雨前線の影響で、猛烈な雨が叩きつけるように降り続いた。駐車場のすぐ近くに落雷があったが、事故にはならなかった模様。様子を見ながら車の中で大人しくしていた。
午後、酒田市にある「土門拳記念館」に行く。HPによると、日本で初めての「写真専門美術館」とのことで、土門拳が故郷・酒田市にあるこの施設に寄贈した作品に加え、土門拳写真賞の受賞作品なども展示されている。
今日は、企画展「土門がとらえた世界遺産・日本遺産」と題して、法隆寺をはじめとする京都・奈良の文化財、平泉の遺跡群や原爆ドームなどの作品が展示されていた。他にも、彼の代表作で、1959年当時の斜陽産業となっていた炭鉱の人々の日常を写し出した「筑豊のこどもたち」、原爆投下の13年後に彼が初めて広島を訪れたときの作品「生きているヒロシマ」も観ることができた。
Yが最も印象的だったのは、展示室の最初にあった「室生寺弥勒堂釈迦如来坐像左半面相(1966年頃)」。第一印象は、自分が見慣れている写真と異なる、絵画のような質感を感じ、顔を近づけてまじまじと見た。仏像の横顔に縦に並んだ木目の暖かさに目が奪われる。そのうち、不思議な感じの源は、仏像の背景が黒一色に沈んでいることではないかと思いはじめた。
土門は助手を従え撮影をする際も、照明だけは必ず自分一人で行うほどこだわりを持っていたという。
今回は展示されていなかったが、彼が戦前・戦中の文楽の全盛期に撮影した文楽人形の作品も、人形なのに不思議な生命力を感じさせるもので、実物よりも実物らしいと言えるかもしれない。実物の大きな作品を見る機会があれば、きっと生々しい迫力を感じることだろう。
今日は、他にも「酒田市立資料館」の見学も予定していたが、行ってみると昨日に引き続き臨時閉館となっていて見学できず。「本日は臨時休館となっております」の立て看板の意味する「本日は」の「は」は、「今日だけ休みで、明日は開いている」という意味だと受け取り、日を改めて出直したわけだが。
何日か閉館するなら、「いつからいつまで休館」とか、「しばらくの間休館」とか書かないとダメなんじゃないかぁ。
ということで、今日は天気も悪いので酒田市内散策は終わりにし、昨日と同じ道の駅に戻る。
少し寒いので、久しぶりに車の中で鍋を囲むことに。雨だと立ち上る湯気を逃すのに一苦労だが、なんとか換気扇と窓を開ける角度を45度ぐらいの傾斜にして切り抜ける。
夕食後、雨も小降りになってきたし、駐車した位置も植え込みの隣で、誰かに迷惑をかけることもなさそうだったので、網戸にしてドアをオープンにし涼んでいたら、暗がりの中から「すみせん。ちょっといいですか?」という声が。
「おやっ? これは『突撃‼︎ 隣の晩ごはん』か?」と思って、戸惑いながら網戸を開けて対応すると、なんと宗教のビラを配っている中年男性だった。日蓮宗系の厚手のビラを一枚差し出して「宜しかったらお読みください」とだけ言って、ニコやかに帰って行った。
こちらは、道の駅の車中泊を禁じられる警告でも受けるでは?と構えてしまったが、いきなりの宗教勧誘とは。そんなこともあるんだと多少驚いた。車上生活者だからかなぁ。渡されたのは厚手の立派な紙に印刷されたビラで、結構お金と労力がかかる事なので、ピンポイントで狙われた意味を考えてしまった。
こうやって、宮沢賢治も同じ日蓮宗の宗教活動をしていたりしたのかも、などと感慨も湧いたりして。
いやいや、その前に、駐車場を巡回するパトカー🚔を見かけたので、おかしな車両を個別に当たって顔確認をしていたのでは? ……などなど、Kの妄想は果てしなく膨らんでゆくのであった。