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奈良下北山村・森林林業地域おこし協力隊

協力隊 金原博之

2023.09.29 08:00

1966年生まれ。愛媛県松山市出身。下北山村に来る前は愛媛県東温市在住。県立高校の建築科を卒業して、東京の建築会社に就職。その後、東京のデザイン学校にてインテリアデザインを専攻。卒業後、輸入住宅のハウスメーカーに勤務。1998年から林業に携わり、2018年3ヶ月ほど奈良県吉野の清光林業(株)で岡橋清隆さんにお世話になっていたことも。長年、自伐型林業を学びたいと思い続け、2023年4月より下北山村の地域おこし協力隊となる。


林業業界に入ったきっかけは?

東京で輸入住宅のメーカーに勤めていて、現場監督として長野県に行くことが多く、長野の山の風景、別荘地での仕事で林の中に住宅があるのを見て、環境のいい山の中で住みたいなと思いました。ちょうどその頃、東京で林業のガイダンスが始まっていた時期で、こういう形で山の仕事につけるのだなと林業のことを知りました。その後、地元の近くの久万高原町(四国の軽井沢と呼ばれる地)に、第3セクターの林業担い手会社があり、林業祭をやっていたので一度見に行ったところ、その場で面接、合格!になりました。研修期間をへて社員になって、それが林業をはじめたきっかけです。

自伐型林業を知ったきっかけは?

2017年12月です。愛媛県東温市での自伐型林業のフォーラムで知り、ガーン!ときました。その時に、自伐型林業推進協会代表の中嶋健造さんに直接お会いして、自伐をしたい!と話をしました。その場で岡橋清隆さんに連絡してくれました。年明け2月に清隆さんが佐川町に来られるタイミングで会いに行き、清隆さんに「岡橋学校があるから来るか?」と言われ、仕事を休職して3ヶ月行くことになったんです。3ヶ月道づくりについて学びました。

もともといた林業の会社は、最初は自伐林家を育てるような会社でした。林内作業車をつかって、小さな林業をしていました。5年経ってから、市町村が合併して、会社の形態が変わり効率重視でどんどん機械化になっていき、ユンボも大型になっていきました。最初のあの頃の小さな林業がいいなと思っていました。楽しかった頃の林業を知っているので、自伐型林業を知って「これだ!」と思いました。

下北山村に来たきっかけは?

2018年、3ヶ月ほど奈良県吉野の清光林業(株)で岡橋清隆さんに奈良型作業道を学ぶため、お世話になっていた時、3ヶ月の間に清隆さんといろいろな場所をまわりました。一度、下北山村に来たことがあり、その時に北さんにもお会いました。こんなに熱心な人がいるのだな、という印象がものすごくあって、下北山村が頭の中に残っていました。もしまた、奈良型作業道を習えて地域おこし協力隊として来れるのなら、下北山村がいいな、下北山村しか頭になかったです。昨年12月に、東温市で自伐研修があり清隆先生が来られていたときに行って相談して下北山村の募集を知り北さんにご連絡しました。清隆先生とのご縁は大きいです。実は、愛媛の東温市の森のようちえんの現場をつくるのに携わっていたとき、清隆先生にお願いして来ていただき2日間で森のなかに道をつくっていただいたこともあります。大変お世話になっています。

村に来て半年、下北山村の生活はいかがですか?

いまのお家の環境は気に入っています。(川がそばにありとても静か)。ただ、村で雨が多いのはびっくりしました!買い物もこんな感じかなとおもっていましたので慣れてきました。


下北山村で好きな場所はどこですか?

西の川の流れ、眺めのいいところ。水のきれいなところを見たら普通に道を歩いているだけでいいな!と思います。あと、吉野みたいな山でなくてもいいけど、村の中で巨木のある手入れされた山を見つけてみたいです。

ある日の金原さんを教えてください。

最近は山主さんへの提案書をつくるにあたり、山に入って森林調査をしたり、データを分析したり、これまでやってきたことがないことをやれているのが、自分でもびっくりです。今後もこのようなことはしていかなくてはいけないけれど、ちょっと焦りながらやっています。

現場に行く日は、朝、お弁当をつくることから始まります・・・(お弁当の彩が綺麗だと評判です) 熊野のおいしいお魚を焼きたいがために、お魚焼きグリルを買いました!(嬉しそう)朝から現場に入って、1日仲間と作業をしています。

自伐型林業そのものについては、どうおもっていますか?

山守さんという考え方をベースにした自伐型林業をやれたらなと思います。自伐型林業をやっている人の中には生活のためにやって儲かるようなやり方でやっている人もいるでしょうが、この村では、森づくりやいい山にするといった考えをもった林業をやれるのかなと思います。下北山村に来て、協力隊の目指していることを知って、すごいところに来たなと思っています。一般的な自伐型林業の壊れない道づくりや持続可能な林業というのは理解はしますが、この村は少し違う。それだけじゃない、林業ができるのかなと思っています。

道づくりの好きなところは?

道づくりの工程を築き上げていくのは性に合っているかなと思います。目の前の傾斜に沿った山の断面を、少しずつ削って道にしていくのは気持ちいいです。


岡橋一嘉さんにこの半年、指導いただいていかがですか?

あんなに柔らかい感じで人に教えれるのはすごいなあって思います。大抵、林業ができる人は、慣れてくると安全よりも効率にウエイトがいって仕事をこなしていくことのほうが多いかと思いますが、一嘉先生は安全を第一に作業をする。あのキャリアで、そのやり方をやり続けられるというのはすごいです。一嘉先生ですらそうなのだから、自分はちゃんとしなくては、手を抜いたりしてはいけないな、と思います。そういう先生に教わっているのだなと思います。今後、一嘉先生の弟子として、後ろ指さされないようにしないといけない。そのうち一嘉先生が引っ張りだこになるだろうから、一嘉先生に教わった!と胸を張って言えるようになりたいと協力隊の谷内さん、長柄さんとも言っています。笑 

7月、8月に原田勤先生、山口祐助先生それぞれから学んだ研修はどうでしたか?

望んでいたことなので、こういった活動は続けていきたいとおもいますし、自分の今までやってきたこととは違うことをもっとベテランの先生から丁寧に教えてもらえる研修は、楽しかったです。幅も広げられたとおもいますし、新しいことはやってみて、引き出しは増やしたいなと思います。原田さんの仕事の現場にも行ってみたいです。疑問があったら訪ねていけるような関係を作れたらと思います。山口先生の山の現場もまた行きたいです。ちょっとしたときに仕事を手伝えるように、そして先生からも選んでもらえるように、声がけしてもらえるようになれたらなと。簡単ではないけれど、思います。

原田勤先生から林内作業車をつかっての研修を受けた


どんな森づくりをしたいとおもっていますか?

民家に近い、里山に近いところで「生産林」「環境林」「生活林」3つをどう配置するか、ゾーニングは大事で、まずは生活に密着した森づくりから変えていき、最近はいわゆる生活林がなくなってきたというのがあるのですが、薪炭林(しんたんりん)を活用していたようなちょっと昔の生活スタイルが下北山村はいいのではと思っています。落ち葉をひろい、化学肥料を使わない畑をしたり。落ち葉を拾って運べるようにも道があるといいのだと思います。「生産林」「環境林」「生活林」をうまく配置する森づくりをしたいなと思います。

山、森、そのものについてはどのようにおもっていますか?

2017年までは、正直、木しか見てませんでした。日々、林業をやっていてノルマがあるので、なるべく残存木を傷つけないようにはしていましたが、どんどんやり方が変わっていき、効率を選んでやるようになっていきました。同じことをやり続けるとどうしても人間誰しも、手を抜いていくもの。(一嘉さんは変わらず安全第一にされているのが素晴らしい)木を伐って出すことはうまくなりたいとは思っていましたが、2017年に東温市での自伐型林業のフォーラムで鶴見武道先生に出会いさまざまなことを教わりました。鶴見先生のおかげで、四国山の日に登壇される藤森隆郎先生、森林業の著者であり立木乾燥法について教えてくれた村尾行一先生にお会いできたり、愛媛大学名誉教授の泉英二先生の存在を知り(下北山村では林政アドバイザーとして大和森林管理協会・泉先生に大変お世話になっている)、森を見る目が大きく変わってしまいました。そして、吉野で3ヶ月道づくりを勉強して愛媛に戻ってからは、大型機械を使って森林整備をすることが嫌になってしまいました。そこからは、別の部署に変えてもらい、林業は続けてきました。


協力隊の仕組みについてはどう思っていますか?

現場と事務作業のバランスにはびっくりしました。今は提案書づくりをしているので、現場に行くのは少ないですが、やらなくてはいけないことが多いです。僕が思ったより、協力隊として月に16日勤務することは必要ですが、他の時間は組み立てられるのでやりやすいです。副業もしていいというのはありがたいです。今後の生き方を考えて動いていきたいです。

協力隊の時間は3人で動いているとおもいますが、チームとしてはどうですか?

3年目の谷内さんは、大人しいです。長柄さんは竹を割ったように元気なので、仕切ってくれます。意思疎通が大事なので、朝、今日やることを書き出して、目標をもってやりたいなとは思います。3者3様、仲良くやっています。

最近、嬉しかったことは?

山口先生の研修が楽しかったです。山の手入れの仕方、人柄など影響されたいな、理論的な面を学びたいなと思いました。


この3年間で道づくり以外でやってみたいことは?

これまでやってきたツリークライミングの技術は、引き続き取得していきたいと思います。村の中での危険木などの処理などの技術をもって対応できるようになりたいです。あと、木を製材して製品するためには乾燥が大事なので、山側からできることとして、葉がらし、まきがらし、立木乾燥の実験をはじめました。昨日からその作業をしていて、含水率の数字を取っていきます。満月から新月の間の新月期に伐採するのがいいと聞いて、その間に作業しました。

大事にしていることはどんなことですか?

上手に木を伐ったり、道をつくることは大事にしたいです。道づくりをするためにここに来たので。


最近、興味があることは何ですか?

混交林ですね。生産林に向かない森林を環境林へ導く、混交林誘導整備事業が気になります。田んぼに植えられた木を樹種を変えていくなど、卒業された石丸さんからもっと学びたいです。石丸さんに興味がありますね、笑 


得意なことは何ですか?

体を動かすこと。サーフィンもしてきました。横のり系が好きでスノボとかも。木工はしてみたいです。絵を描いたり、デザイン学校にも行っていたのでやってみたいです。枠のなかで考えるのが好きで、条件があるなかでやるのは得意かも。逆に、自由すぎると困ってしまいます。(笑)

夢はなんですか?

船に乗って旅行したいです。瀬戸内海をクルーズするような船です。一人じゃなあー笑

そういうゴージャスな旅をしてみたいです。


これまで、転機に岡橋清隆さんとのご縁がありますね?

清隆先生と一嘉先生とでタイプの違いにびっくりしました。清隆さんは元気でパワーがありますよね。元気で長生きしてほしい、年に一度は研修などでお会いしたいです。前はハガキとか書いていましたが、また連絡します!

後記

奈良型作業道を学びたいと思い続けて何年?!ようやく辿りついた下北山村で道づくりをはじめた金原さん。小さな林業の楽しさ、面白さを忘れずに自分の大事にしたいことが明確です。これから道づくりをはじめやってみたいことにどんどん迷わずに挑戦していつもにこにこ楽しく過ごしてもらえたらと思います。