後悔してしまった検査はあるのか?
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NIPTなどの出生前検査を簡単に受けることが、母、赤ちゃんに対して良くないことは、数多く報告されています。
また、検査を受けるかどうかを自分自身で考え、自ら意思決定をするためには、検査前に検査で
分かること。
分からないこと。
陽性と判定された場合の影響など検査の特色について十分に説明する必要があるとされています。
結果が陰性であっても、新型出生前検査を行ったこと自体を後悔することがある。
検査結果をもとに行われる判断が、その後のお母さんの抑うつ傾向につながる場合がある。
ことなど、心理的な負担になることもよく知られているといわれています。
ただ、臨床の現場で働いている医師としては、
「この検査を受けることが妊婦と胎児に対して悪影響を及ぼすことが数多くあるということは少し現実とは違っているのではないか。」
と考えています。
それから、検査結果を知らされた後その後のお母さんの抑うつ傾向につながることがあるというのも、これは検査結果が分かって、抑うつ傾向になるという意味合いなのか、
妊婦自身が陰性であるという検査結果が出るまでの間に抑うつ傾向になるということなのか分かりません。
たしかに、陽性の判定が出た後に、今後のことを考えている間に、抑うつ的になるということは十分に考えられることではないかと思います。
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新型出生前診断は、今では比較的簡単に受けることが出来ます。
夫婦揃って詳しい説明を受けなくても、一回の来院だけで検査結果を知ることが出来ます。
報告によると、こうした簡単に受けられることは母と子にとって良くないと言われています。
結果が陰性だった場合、夫婦は「安堵」「安心」という感覚の方が多いわけです。
受けたことに後悔するというのは、費用的な面で陰性だったら受けなくても良かったと考えているだけのことです。
約20万円ですから、陰性ならばもったいなかったと感じるという真実があるでしょう。
また、陽性の場合、産むまたは中絶する、どちらの選択をしても、妊婦さんは心理的な負担がかかるとも言われています。
だから受けない方がいいと考えるのは、どうかと思うのです。
そもそも、この検査を希望する方は、心理的な負担がかかることが分かって受けています。
それに耐えられるかどうか、ネットで新型出生前診断を受けた方の感想を調べたりしていると思います。
いずれにしても、臨床の現場、新型出生前診断を希望する妊婦さんの多くは、安心したい。
妊娠、出産、育児という流れをスムーズに送りたい。
様々な理由があって受けるのです。
ですから、簡単に受けられるといっても、コンビニに行くような気軽さ、便利さとはまた違う話なのです。
簡単=安易な考え方になる。
というのは、少し世間との感覚に差があると思います。
次のようなデータもあります。(世論調査ではありません。)
やはり、社会で議論されている新型出生前診断に対して、全体の70%は抵抗がないのですから、まずは新型出生前診断が自由に受けられるように整備していくことが大切だと思います。
もちろん、抵抗のある方、どちらとも言えない方は30%も居るわけですので、新型出生前診断の位置付けは重要です。
いずれにしても、新型出生前診断が普及し始めている段階で、社会的圧力がかかると、整備にかかる時間や手間暇が増えてしまい、結局さらなる問題を生みます。
日本の歴史を辿っても、こうしたことであらゆる弊害を作ってきたものもあります。
命の選別が進むと言われていますが、過去の日本では戦時中に決死の策を取り、多くの兵士が亡くなっています。
戦時中は、特に命の選別が激しく行われたと思うのです。
しかし、今は荒れた時代ではありません。
どちらかというと、命の選別というよりか、「生きること」に対する意識が強いと思うのです。
産まれてきたとしても、社会的サポートが充実しているのか?
障がい者差別、虐待についてはどうなのか?
不自由な生活をしなくても良い経済環境か?
生きていくために、産むかどうかを見極めていると思うのです。
命というのは、いつも現在進行形です。
「生きる」を「生きていく」と進行形にできますが、
「産まれる」を「産まれていく」と言い換えることは出来ません。
一度産まれてしまえば、生まれ変わることはできないからです。
命は常に進行形だとすると、産むか産まないかという選択は命の選別とは言えないのではないかと思うのです。
やはり、夫婦がお腹の子どもに対して責任を持って答えを出すこと、
そうした責任から逃れるために選択がなされることが、命の選別であって、
新型出生前診断は、命の尊重を促すものだと思えます。
命と向き合う時間を作り、お腹の子どもの人生設計をする作業だと思うのです。
また、高齢出産が増えていることもこうした検査を希望する方が増えていると思います。
子どもが出来れば、家族を養うためにやりたいことより、収入や安定が求められます。
家を建てたいと考えている夫婦もいるわけです。
やはり、夫婦が置かれている社会環境や生活環境が新型出生前診断の結果に影響していると思うのです。
ですから、夫婦それぞれに合った情報提供であったり、社会的サポートについて知らせることが必要不可欠なのです。