待合室の絵
2023.09.23 02:14
時々、患者さんから待合室の女性が草原にいる絵は誰の作品ですかと聞かれる。アンドリューワイエスという米国を代表する画家だ。2009年に亡くなった。私はニューヨークに行った時に、この作品「クリスチーナの世界」を知った。それ以来、ワイエスのファンだ。
彼の故郷のペンシルバニアも訪ねたことがある。
私が開業するときに、もっと明るい絵にした方がよいとか叔母から言われたが、結局ワイエスにした。クリスチーナはシャルコーマリートゥース病で下肢の進行麻痺だった。必死で家に行こうと草原をはっている。「生きる」強さがある。行かねばいけない、生きねばいけない。
私の母親も片足が動かなかった。幼い頃の怪我で細菌が入り膝が曲がらなかった。座る時は片足を前に出していた。不自由さを抱えながらも生きた母が無意識にあって、この絵に惹かれたのであろう。
開業してから産婦人科と連携することも増えた。佐藤病院というところで母は私を産んだわけだが、片足が曲がらない状態での出産は大変だったし危険だったのだろう。私が障害もなく生きているのは母がいたからであり、佐藤病院で安全に生まれたからだと思っている。
開業していた祖父(祖父は外科医、内科医、産婦人科医)だったが、当時、専門性が高かった佐藤病院の院長先生に母の出産を頼んだらしい。
今の院長先生が何代目なのかわからないが、遙か昔のことも思い出す日々だ。