五線譜のラブレター/DE-LOVELY
五線譜のラブレター/DE-LOVELY
De-Lovely
2005年2月2日 日比谷シャンテシネにて
(2004年:イギリス=アメリカ:126分:監督 アーウィン・ウィンクラー)
ただ実在の人物を描くのではなく、晩年のコール・ポーターが自分の伝記映画の監督と話しながら、昔を振り返る、という二重構造になっていますね。
だから場面は急に昔にひらりと移ったり、今に戻ったりといった映画的な工夫がとても凝っています。
コール・ポーターがパリで、「パリで一番美しい離婚女性」と言われたリンダ・リーという女性と出会ってすぐに結婚。そして音楽界での成功を華麗な歌や舞台を見せながら語りますが、コール・ポーターというのは同性愛者でもあったのですね。
結婚したあとも、男恋人との関係は続き、妻のリンダもそれを黙認したような関係で、ひたすら純愛的に愛を妻に捧げました、という関係ではないのです。
ただし、この夫婦はきっと価値観はぴったり合っていたのでしょう。そしてリンダの聡明さというのが光ります。
ヨーロッパで成功して、アメリカ、ニューヨークの舞台で成功、ハリウッドに招かれる・・・・そんな成功の階段をひたすら登っていくひたむきな硬さというのはなく、全体の雰囲気はあくまで華麗で、お金持ち感が漂っています。
コール・ポーターをはじめ、洋服や髪に花を飾るのが自然で美しいです。いつもボタンホールに、バラ、カーネーション、ハナミズキ、三色スミレなどの花を刺しているのがなんともお洒落。衣装はアルマーニが担当。
そしてコール・ポーターの手がけた舞台の初日に必ずリンダがプレゼントしたシガレット・ケースといった小物の使い方、ケイリー・グラント主演の伝記映画があるのは知っていたのですが、ちゃんとその映画も出てきますね。
ケヴィン・クラインは吹き替えを使わず、ピアノを弾き、歌を歌い、舞台で培ってきた才能を存分に発揮していますし、リンダのアシュレイ・ジャドはとてもエレガントでそれがきちんと身についています。
様々な歌を、エルビス・コステロやアラニア・モリセットなどが歌いますが、その演出も凝っていてとても贅沢ですね。
贅沢な生活を描いていますが、映画としての贅沢感も堪能できます。