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更夜飯店

青春デンデケデケデケ

2018.09.01 01:53

青春デンデケデケデケ

2005年2月6日 ビデオにて

(1992年:日本:135分:監督 大林宣彦)

最近、60年代を舞台にした映画が多いです。『さよなら、クロ』『69』『パッチギ!』・・・どれも作り手のノスタルジィが出ています。

しかし先日『棒たおし!』という映画を観たときに「青春ってこんなもの?」という疑問がどうしてもわいてしまったので、(何度も観ているのですが)また再見しました。

この映画も1965年の四国、香川県の観音寺市を舞台にベンチャーズのパイプライン、デンデケデケデケ~(正確にはデン!デケデケデケ~であるそうな)という音楽に電気的啓示、エレクトリック・レベレーションを受けた男の子、ちっくんこと藤原竹良くんが友人達とバンドを組む、それだけの話です。

しかし、全編16ミリのドキュメンタリータッチで、やさしくソフトに流れるように、ユーモアたっぷりのちっくんのナレーションを交えて青春を可愛く綺麗に見せているのがいいですね。

原作は芦原すなおの直木賞受賞作ですけれども、大林宣彦監督は、去年、宮部みゆきの『理由』も映画化しましたが、過去に山中恒の『同級生』、赤川次郎の『ふたり』など原作の雰囲気をそのまま映画にきちんと出すことがとても上手く、そういう手法が好きなんでしょうね。

男の子たちも、あれこれいたずらもするけれどもあくまでも健康的で、田舎らしい素朴さがあって、人を見つめる目が優しい。

バンドの男の子たちのキャスティングの妙もあるのですけれど、とても自然で、そして懐かしくて切ない・・・そんな原作の雰囲気がそのままスクリーンに映し出されています。『棒たおし!』になかったのは自然さ、かもしれません。(しかしこれはアイドル映画である為仕方ないことでしょうね)

映画は、ちっくんが東京へ大学受験に行くのを見送るメンバーで終わります。最初はカット割りを細かくして溌剌と、だんだん、ラストに向けて長いカメラ回しになったり、その雰囲気の出し方はやっぱり職人的に上手いですね。

この観音寺の高校生活は平和でのんびりとしたものですけれど、この原作には続編『東京シック・ブルース』というのがあります。

東京の大学に入学したちっくんが出会うのは、学生運動の嵐。そんな中、タイトル通りブルースのように切なく過ごす大学生。

それを読むと、デンデケデケデケに夢中になっていた高校時代がまた切なくなりますが、時代は進むし、ちっくんも大人になる。

原作、続編、映画と三つあわせてもう一回映画を観ると、また違った印象になりますね。