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覚めない夢の終わる時

2018.09.01 15:24

【覚めない夢の終わる時】 

♂2人 ♀1人 不問1人 計4人 

~60分 

 

 

〈登場人物〉 

大槻 青葉(おおつき あおば) ♂ 高校2年生 帰宅部 

基本的には面倒臭がりで無気力。 

 

高城 海里(たかぎ かいり) ♀ 高校2年生 新聞部 

気になることは、最後まで調べないと気が済まない性格。 

疑問解決のために毎回、幼馴染の青葉を巻き込む。 

 

生徒会長 不問 高校3年生 

真面目で勤勉、しっかり者でみんなに慕われている。 

 

有岡 進(ありおか すすむ) ♂ 27歳 国語科教師 

今年度からこの学校に赴任してきた、青葉と海里のクラスの副担任。 

整った容姿と優しい性格で、すぐに生徒の人気者になった。 

 

 

〈夢の国の住人〉※海里・生徒会長・有岡の人で被り 

・ツインズ 不問 

疑問と解答1セットのしゃべり方をする。 

二重人格で、二つの人格が同時に出ている。 

無邪気な子供。 

 

・帽子屋 不問 

人の話を聞かない。よくわからないことをずっとしゃべり続ける。 

 

・やよい 不問 

夢の国の住人の中では一番まとも。 

しかし、夢の国の住人である。 

帽子屋に呆れつつも、いつも一緒にいる。 

 

 

――――――――――― 

青葉 ♂  : 

海里 ♀  : 

会長 不問 : 

先生 ♂  : 

~~~~~~ 

ツインズ  : 

帽子屋   : 

やよい   : 

――――――――――― 

 

 

青葉「ふわぁ~・・・」(あくび) 

 

海里「おやおや、今日も眠そうですなぁー。さては、また徹夜でゲームですかな?」 

 

青葉「残念。今日はアニメだ」 

 

海里「ちっ、外したか」 

 

青葉「あぁ、そうだ。ほい」 

 

海里「おぉ!青葉ママン特製の手作りお弁当じゃないか!やっぱりあれだねぇ。持つべきものは優しい幼馴染!のお母様♪」 

 

青葉「あー、はいはい。んじゃ、おやすみー」 

 

海里「待った待った!寝るのはまだ早いぞ、青葉くんっ!」 

 

青葉「ん・・・。はぁ・・・。今度は何を見つけてきたんでしょーか・・・、海里さん」 

 

海里「話が早くて助かるな。今私が気になっている事!それは・・・学校の怪談だ!」 

 

青葉「学校の怪談?んなもんこの学校にあるのか?」 

 

海里「ふむ、やはり知らなかったか。じゃあ説明しよう!怪談名は『人喰い図書室』だ。今や生徒の間ではこの話題で持ち切りだぞ」 

 

青葉「図書室なら俺もたまに利用してるよ。窓側の奥の席は日当たりが良いんだよ。そしてなにより、本棚で死角になっていて気づかれにくい。昼を過ごすには最高の隠れ場所なんだよなぁ」 

 

海里「たまに授業に居ないと思ったら、そんなところでサボっていたのか・・・。いや、今はそれは良い。この怪談に出てくる図書室はそこではない」 

 

青葉「図書室じゃないのか?」 

 

海里「今はほとんど使われなくなった旧校舎にある、第二図書室のことなんだ」 

 

青葉「第二図書室?」 

 

海里「旧校舎は少し離れているからな。使われもしないから知らないのも無理はない」 

 

青葉「で、その第二図書室が人を喰ってると?」 

 

海里「そういうことだ」 

 

青葉「へぇ・・・。でもそんな噂、聞いたことないぞ?」 

 

海里「SNSの学校コミュで話題になっているからな。この機会に青葉もやってみないか?」 

 

青葉「あぁ・・・そゆことか。・・・めんどくさいからやらないよ。そもそも何が楽しくて自分の日常を垂れ流さなきゃいけないんだよ・・・」 

 

海里「んー・・・私も見る専門だからわからないが、見てるのは面白いぞ?」 

 

―――(チャイム) 

先生「みんな、席についてー。授業始めるよ」 

 

海里「放課後空けといてくれ」 

 

青葉「はいはい」 

 

先生「じゃあ今日は前回の続き、教科書115ページから」 

 

青葉M「学校の怪談・・・ねぇ」 

 

青葉M「噂、伝承、都市伝説。人間はいつだって、理解ができない不気味なものに恐怖を抱いて、なぜか興味を持つ。怖いなら関わらなければいいだけだろう?・・・なにが楽しくて怖いものを知ろうとするのだろうか」 

 

先生「次、後ろの人、読んでくれるかな?」 

 

青葉M「学校の怪談『人喰い図書室』ねぇ・・・。SNSなんてものはやってないから、どれぐらい流行ってるのか、どんな噂なのかも全然わからんが・・・。きっと面倒臭いことに、なるんだろうなぁ・・・。ふぁ~・・・ねむ・・・・・・」 

 

先生「つまり、この物語から読み取れるのは、過去は消すのではなく受け入れることが大事。それが成長に繋がる、ということだよ。みんなも、それぞれ辛いこととか嫌なこととか、忘れたい過去や後悔とか、いろいろあると思う。でも、それはその経験をした人だけの特別な財産であって、みんなを成長させてくれるんだよ」 

 

―――(チャイム) 

先生「あっ・・・もうこんな時間か。じゃあ今日はここまで。宿題は・・・そーだな。次回までにもう一度、読み直してみること。感想を次の時間に聞かせてもらうからなー」 

 

 

 

海里「青葉ー?いつまで寝てるんだい?」 

 

青葉「んー・・・。あー、学校終わったのか。んじゃ、帰るかー・・・」 

 

海里「その前に、第二図書室に行くぞ」 

 

青葉「第二図書室・・・?なんで?」 

 

海里「はいはい。どうせ覚えてて面倒臭がってるだけ、ってことは知ってるよ」 

 

青葉「やりづれぇ・・・」 

 

海里「幼馴染だし、青葉の扱いならだれにも負ける気がしないな」 

 

青葉「てか、旧校舎って勝手に入っていいものなのか?」 

 

海里「それは確認済み。別に立ち入り禁止って訳じゃないし、普段使われないってだけで使えるらしい。あ、でもサボりに使うのは無しだぞ」 

 

青葉「はいはい。で、目的の部屋はここか?」 

 

海里「あ、うん。そうみたいだね」 

 

青葉「失礼しま・・・、なんつーか・・・すげーな、ここ・・・」 

 

海里「本の海・・・、森?って感じかな」 

 

青葉「でもこの古書独特の匂いと不思議な雰囲気。俺は嫌いじゃないな・・・。よく寝れそうだ」 

 

海里「だから、サボりに使うのはダメだと・・・」 

 

青葉「けど、ここに居たら喰われるんだよな・・・。普通に入っちまってるが、大丈夫なのか?」 

 

海里「では、まずは内容の把握からだな」 

 

青葉「海里は知ってるのか?噂の内容」 

 

海里「概ねはな。一通りはSNSで情報収集をしておいた」 

 

青葉「んじゃ、いつも通り質問していけばいいのか?」 

 

海里「それでいいぞ」 

 

青葉「怪談名は『人喰い図書室』、場所はこの第二図書室。つまり、この部屋が人を食べる。要は、神隠しみたいなことだろ?」 

 

海里「そのようだな」 

 

青葉「実際に行方不明になっている人がいるのか?」 

 

海里「それはわからない。ただ、放課後に一人でここに来ると、食べられるらしい」 

 

青葉「なるほどな。だから今俺たちは喰われないってことか」 

 

海里「噂からするとそのはずだ。確証はないがな」 

 

青葉「誰かが居なくなったりしているわけじゃないなら、なぜそんな噂が出たんだ?」 

 

海里「食べられた人の記憶は、皆の記憶から消えるらしい」 

 

青葉「なんだそりゃ。つまり、消えた人が居ても気付かないってことか?」 

 

海里「さて、青葉。この怪談、どう思う?」 

 

青葉「いや、どう思うって言われてもなぁ・・・。人が消えるなんて、そんなオカルトありえないだろう。学生なら不登校、家出、誘拐、自殺?とかか」 

 

海里「でも、それだと皆覚えているし、不登校以外は事件になる。そもそも場所が図書室ってのも、わからない」 

 

青葉「ふむ・・・。少なくとも、物事には原因と理由がある。とりあえずこの怪談が本当か嘘かは置いておくとして。噂を流した人物が居て、何らかの目的があるはず、なんだろうな」 

 

海里「その通りだ。だから私は、この怪談の犯人と目的を知りたい!」 

 

青葉「はぁ・・・。やっぱそーなるよなぁ・・・」 

 

海里「ということで!本日はここを調べに調べつくそう!」 

 

青葉「はぁ・・・めんどくせぇ・・・。にしても、いろんな本があるなぁ・・・。図書室は向こうにあるってのにさ」 

 

海里「ここには、専門書や古くなって傷んだ本などが置かれているそうだよ。だから、取り扱いには注意が必要だぞ?」 

 

青葉「専門書って、無駄に高いのとかあるもんな・・・。って言ってる傍から、お高そうな難しい本ばっかだな・・・」 

 

海里「こっちは文学系の棚のようだ。有名な文豪の作品から、海外のものまでいろいろあるようだな」 

 

青葉「へー・・・。本なんて普段あんまり読まねーが、こうしてみると少し興味も湧いてくるものだな・・・」 

 

海里「こらこら、私たちは本を読みに来たわけじゃないのだぞ」 

 

青葉「分かってるよ。ってかさ、これも新聞部の活動の一環、なんだろ?」 

 

海里「その通りだとも!全校生徒を騒がせている恐怖の怪談の真実!最高のネタだろう?」 

 

青葉「今月はこないだあった文化祭の記事で行くんじゃなかったのか?特集は美男美女コンテストの裏側、とかなんとか」 

 

海里「・・・あぁ、それは」 

 

青葉「まさか、取材目的で潜入したお前が優勝しちゃうんだもんな。美男コンテストで」 

 

海里「それを言うなぁ!あれは、私の一生の恥だ・・・。というか!あれは全部青葉のせいだろう!!!」 

 

青葉「さぁ?なんのことだったかな」 

 

海里「勝手に美男コンテストにエントリーして、執事服なんて用意していただろう!」 

 

青葉「取材に夢中で自分のエントリー部門を気にしてなかったお前が悪い」 

 

海里「もうこの話は終わりだ!」 

 

青葉「でも、面白いよな」 

 

海里「ちっとも面白くない!不愉快だ!」 

 

青葉「違う違う。美男美女コンテストなのにさ、女装・男装での異性枠へのエントリーも可。なんてさ」 

 

海里「そのおかげで私はあんな屈辱を・・・」 

 

青葉「今じゃファンクラブもできて、有岡先生と1、2を争うモテ男だもんな」 

 

海里「私は女だっ!もう知らんっ!」 

 

青葉「あれ?帰るのかよ?」 

 

海里「ここは君一人で調べろ。私は別の方法で探す」 

 

―――ガラガラ――ピシャン(ドアを開けて閉める) 

青葉「あーあ。ちょっとやり過ぎちまったか・・・。ん・・・待てよ・・・?放課後の第二図書室に一人・・・。これってヤバいやつじゃね!?」 

 

―――ドサッ(ほんが落ちる音) 

青葉「ん?ったく、海里のやつ・・・。本、出しっぱなしに帰るなよな・・・。しかも勢いよくドア閉めるもんだから、床に落ちたじゃねーか。大事に扱えって言ったの誰だったよ。この辺でいいか・・・?んじゃ、俺も帰るとするか」 

 

 

 

海里「おはよう、青葉くん」 

 

青葉「海里・・・」 

 

海里「少しは反省したかな?」 

 

青葉「一人で残していきやがって、俺が喰われてたらどうするつもりだったんだよ?」 

 

海里「・・・あぁ。そう言えばそうか。でも、その様子では何もなかったようだな。また一つ情報が増えたな」 

 

青葉「そうですねぇ・・・。あの噂が嘘だってのがわかったな。現に俺は喰われてない」 

 

海里「そう決めつけるのはまだ早いと思うが?他にも条件があるのかもしれないしな」 

 

青葉「そもそも、噂ってのは人から人に伝わるごとに、尾ひれがついて大きくなるものだろ。だから、そもそもの話は他愛もない愚痴みたいなものだったりするんじゃないか?」 

 

海里「さぁ?どうだろうな。それは今日の昼休み、わかるんじゃないかな」 

 

青葉「昼休み?何があるんだよ?」 

 

海里「昨日あの後、もう少し情報が無いか調べてみた。そして、おそらく情報の発信源の一人であろう人物を見つけ、コンタクトを取ることに成功したよ。その待ち合わせが、今日の昼休み、という訳だ」 

 

青葉「なんだよ・・・。じゃあ、もうほとんど解決したも同然じゃないか。俺の出番はなかったな」 

 

海里「もちろん、青葉にも同席してもらうぞ?」 

 

青葉「デスヨネ・・・」 

 

 

 

青葉「待ち合わせ場所はここですか・・・」 

 

会長「君たちかな?私を呼んだのは」 

 

海里「私は新聞部部長、高城海里です。こっちは助手の青葉」 

 

青葉「おいっ、助手って何だよ。たしか、生徒会長さん・・・だよな?」 

 

会長「えぇ、そうですよ。まぁ、今は一人の生徒としてここに居るから、そんなに畏まらなくていいよ」 

 

海里「取材の件、お受け下さりありがとうございます」 

 

会長「とりあえず、中に入ろうか。その方が話しやすいこともあるしね」 

 

 

会長「それで、『人喰い図書室』について聞きたいんだっけ?」 

 

海里「単刀直入に聞きます。噂を流したのは会長ですか?」 

 

会長「うん。まぁ、そうなるね」 

 

海里「あっさり認めるんですね・・・」 

 

会長「別に隠しているわけじゃないからね。それに、その方が私に情報が集まるでしょう?」 

 

海里「情報が集まる?どういうことですか・・・?」 

 

会長「それじゃあ、まずは私の体験したことを話しましょうか」 

 

海里「お願いします」 

 

会長「あの日、生徒会の仕事で使った資料を返しに、この第二図書室に来ていました。運んできた資料は机の上に置き、私はお手洗いに行きました」 

 

青葉「ここには一人で?」 

 

会長「記憶上ではそうです・・・。でも、戻って来たとき、何か違和感を感じました。一人で来ていたはずなのに、誰か居ないような・・・。はっきりとはわからないけど、もやもやする、そんな感じでした」 

 

海里「その時に居たのが消えた副会長、だと?」 

 

会長「確証はありません。でも、誰かが一緒に来ていたのは自信を持って言えます。なぜなら、その時に返しに来ていた資料の量は私一人では、どうやっても一度で運べる量ではなかったのですから」 

 

海里「それが、『人喰い図書室』の噂を広めた理由ですか?」 

 

会長「もう一つ、私が存在しない副会長にこだわる理由があるんです。君たちは、生徒会の構成人数を知っていますか?」 

 

海里「生徒会長一人、副会長二人、書記一人、会計一人の計五人。ですよね?」 

 

会長「えぇ。年度によって書記と会計が増えることはあるけれど、五人以下になることはありませんでした。では、今年の生徒会はどうでしょうか?」 

 

青葉「副会長が一人しかいない」 

 

会長「そう、でも私の記憶の中にはもう一人いたはずなんですよ。例年通り今年の生徒会も五人でした。しかし、どれだけ探しても書類を見てもどこにも見当たらないのです・・・姿どころか、名前すらも」 

 

海里「情報が集まるって言うのは・・・、人喰い図書館で消えたはずの副会長を探すために・・・」 

 

会長「でも、残念ながらほとんど何もわからずじまいですけどね・・・」 

 

青葉「何か知っていること、気付いたことがあれば教えてくれないか?どんな些細な事でもいい」 

 

会長「あまり大した情報は持ってはいませんが・・・。私の他に3人、同じような経験をして違和感を感じている人が居ましたね」 

 

海里「話を聞いたんですか?」 

 

会長「ええ。その中で共通した内容を元に作ったのが『人喰い図書室』の噂なのですよ」 

 

青葉「じゃあ、あの噂以上のことは知らないってことか?」 

 

会長「他に知っていることといえば・・・、本。かな?」 

 

海里「本、ですか?それはもちろん図書室ですから、本はたくさんありますけど」 

 

会長「違和感を感じた人は皆、図書室で一冊の同じ本を見てるんですよ」 

 

青葉「っ。・・・同じ本?」 

 

会長「その本は『不思議の国のアリス』。置いてあった場所は違いますが、机の上や床などに一冊だけ出しっぱなしにされていたんですよ。」 

 

海里「共通するのであれば、なぜ噂に書かなかったのですか?そんな一致はキーとなるアイテムとしか・・・」 

 

会長「そう思って私も何度も読みました。不自然な点が無いか、なにか手掛かりがないかと。でも、何もありませんでした。私が消える、ということも」 

 

 

 

海里「ありがとうございました。私たちももっと調べてみます。何かわかりましたら、またご連絡いたします」 

 

会長「ありがとう。私もなにか分かれば伝えますね」 

 

青葉「さて・・・。どうする?」 

 

海里「みんなが見たっていう本が気になるところだな・・・。不思議の国のアリスって言えば、あれだろう?少女がうさぎを追いかけて不思議な世界に迷い込むっていう。つまり!消えた人はその不思議な世界に!」 

 

青葉「あほか。あり得るわけないだろ」 

 

海里「えー。でも、噂の出どころと目的が分かって、噂が嘘じゃないってことが証明されたわけだぞ?まさか会長様が嘘を言って私たち、いや、生徒全員を騙してる。とでも言うのか?」 

 

青葉「さぁな。でも確かめる方法はあるだろ?同じような経験をした人、教えてもらっただろ?そこに取材すればわかるんじゃないか?」 

 

海里「なるほど、それもそうだな。すぐに連絡を取ってみよう」 

 

青葉「残念だがもうすぐ昼休みが終わる。教室に戻るぞ」 

 

 

 

先生「みんなちゃんと読んできたかな?順番に感想を言ってもらうよ」 

 

青葉M「ん?なんだそれ・・・。まずい、昨日寝てて聞いてなかった・・・。これの感想、か。感想ねぇ・・・」 

 

先生「みんなが感じたことはどれも正解だから、自信を持って発表していいからね。どんな視点で見るのか、誰に共感したのかでも感想は変わってくるだろうし。もし自分がこの世界に入ったとしたら、なんてのも面白いものだよ」 

 

青葉M「読むかぁ・・・。そういや、不思議の国のアリスって主人公が不思議の世界に迷い込むんだったよなぁ。そこでおかしな登場人物に出会って、結局は夢オチだったっけかな・・・」 

 

先生「面白い視点だね。物語もよくとらえてるし、良かったよ。じゃあ次は、大槻君」 

 

青葉M「海里がさっき、消えた人は不思議な世界に、とか言ってたが・・・。もし俺が迷い込んだら・・・」 

 

先生「大槻君?大槻青葉君」 

 

青葉「えっ、あ、はいっ!」 

 

先生「感想、言ってもらえるかな?」 

 

青葉「あー・・・。えっと・・・、すごく興味深いお話で深いと思います」 

 

先生「具体的にはどんなところがかな?」 

 

青葉「それは・・・、あの・・・その・・・」 

 

先生「座っていいよ。読んでこないとダメだよ?一応宿題にしてたことだからね。今回は見逃してあげるけど、次の時間の最初に発表してもらうから、今度はちゃんと読んできてね」 

 

青葉「はい、すみません」 

 

先生「じゃあ、次は杉野さん。お願いします」 

 

 

 

―――(チャイム) 

海里「バカ青葉。なにやってんだか・・・」 

 

青葉「うるせぇ・・・。ちょっと考え事してたんだよ」 

 

海里「まぁ、そんなことより取材に行くぞ。青葉まずは隣のクラスの木辺さんだ。早くしないと部活に行ってしまうからな」 

 

青葉「あぁ、悪い。今日はちょっと用事があるんだよ。取材は一人で頼む」 

 

海里「む。そうか・・・。それならば仕方ない」 

 

青葉「じゃあな。また明日」 

 

海里「青葉の分までしっかり情報収集してくるよ」 

 

 

―――ガラガラガラ(ドアを開ける音) 

青葉「一人で何やってんだろうな・・・。でも、俺の想像通りなら・・・やっぱりあった」 

 

青葉M「昨日ここに落ちていた本。そして今ここに落ちている昨日俺が棚に戻したはずの・・・『不思議の国のアリス』」 

 

青葉「どう考えてもこいつが原因の一つ。なんだけどな・・・本当にこの本みたいに不思議の国に迷い込んでるとか?ははっ、ありえねぇ」 

 

青葉M「不思議の国ねぇ・・・。ほんとにそんな所があれば、こんなめんどくせぇ事考えずに、あのバカにも巻き込まれずに済むのかねぇ・・・」 

 

青葉「って、俺も焼きが回ったか?・・・ん?は・・・?」 

 

青葉「どこだよここはっ!?」 

 

ツインズ「誰か居るよ?誰だろうね」 

 

青葉「落ち着け・・・、すー・・・はぁー・・・。森。だよな・・・?」 

 

ツインズ「アリスかなっ?アリスじゃないね」 

 

青葉「まさか、ほんとに不思議の国に来ちまったのか?嘘だろ・・・ありえねぇ・・・」 

 

ツインズ「誰だろうねー?初めてみる顔だね」 

 

青葉「あの本が無い・・・。俺のカバンはあるな。ケータイは・・・安定の圏外か。ほんと・・・どこのファンタジーだよ・・・」 

 

ツインズ「困ってるみたいだねー?いきなりここに来たら戸惑うよ」 

 

青葉「おいっ!」 

 

ツインズ「ひぅっ!?・・・僕達に気付いたのかな?見えてるはずないよ」 

 

青葉「見えてはねぇよ。でも声は聞こえてるんだよ」 

 

ツインズ「気付かれてるよ!どうしよう?隠れてれば大丈夫」 

 

青葉「声が聞こえるのはこっちだな・・・」 

 

ツインズ「近づいてきてるよ?大丈夫」 

 

青葉「じゃないようだぞ?」 

 

ツインズ「見つかったよ!?見つかったね」 

 

青葉「お前は誰だ?」 

 

ツインズ「名前を聞かれたよ?僕はツインズ。じゃあ僕もツインズ?僕らは二人でツインズ」 

 

青葉「ツインズ?まぁいい、此処は何処だ?」 

 

ツインズ「ここは何処だろう?ここは驚きの森だよ」 

 

青葉「ここは本の中か?」 

 

ツインズ「本ってなんだろう?文字や絵などを綴じてまとめたものだよ。ヤマネが枕にしてるやつかな?それだね」 

 

青葉「ちっ・・・めんどくせぇ。なんでそんな喋り方なんだ?」 

 

ツインズ「僕のしゃべり方おかしいかな?全然ちっとも全くおかしくないよ」 

 

青葉「なんなんだこいつ・・・」 

 

帽子屋「今日は吾輩のなんでもない日♪楽しく楽しくお祝いしましょう♪」 

 

やよい「なんだって、なんでもない日をお祝いしなきゃいけないのさ・・・」 

 

帽子屋「そんなこと言っても、毎日お茶会に参加してくれるじゃないか」 

 

ツインズ「誰か来たよ?帽子屋とやよいだね。二人はいつも一緒にいるね?恋人だからね」 

 

帽子屋・やよい「違う!(違います!)」 

 

青葉「また変なやつが増えた・・・」 

 

帽子屋「ところでツインズ。彼は誰だい?」 

 

ツインズ「誰だろう?さっき会ったばかりだね。名前なんだろう?聞いてないや」 

 

やよい「新しいお客様なんだね。お名前は?」 

 

青葉「青葉だ。此処は何処だ?どうすれば帰れるんだ?」 

 

やよい「青葉くん・・・。うん、覚えたよ。でも残念、またアリスじゃなかったや・・・」 

 

帽子屋「外からのお客様でしたかっ!それはそれは、では一緒にお茶会をするとしよう」 

 

青葉「いや、だから俺は帰る方法を・・・」 

 

ツインズ「今日のお菓子は何だろう?この匂いは・・・バームクーヘンかな」 

 

帽子屋「よくわかったな。ではツインズにも準備を手伝ってもらうぞ」 

 

やよい「ボクは机のセッティングだね」 

 

帽子屋「ほら、キミも突っ立ってないで手伝ってくれたまえ」 

 

青葉「俺は帰りたいんだが・・・」 

 

やよい「無駄だよ。帽子屋は人の話、聞かないからね」 

 

 

帽子屋「よし、じゃあ始めようか。今日はなんでもない日だ。みんなでお祝いしようじゃないか♪」 

 

青葉「結局巻き込まれちまった・・・」 

 

帽子屋「どうした?吾輩の入れた紅茶は口に合わなかったかな?」 

 

青葉「いや、それはすげー美味いんだけどさ」 

 

帽子屋「それはなによりだ。この紅茶は、信頼の丘一番の高級品種を吾輩自ら選別したものだからな。味・香り・色全てにおいてパーフェクト!何杯飲んでも飽きることない最高の」 

 

やよい「いやー、ごめんねぇ。でも、せっかくの楽しいお茶会なんだ。そんな難しい顔ばかりしていては、もったいないよ?」 

 

青葉「俺の想像通りなら、ここは本の中なんだろう?どうやったら帰れる?」 

 

やよい「さぁ?どうなんだろう。そーゆーことはボクは詳しくないんだ。答えて上げれなくてごめんね」 

 

青葉「でも、お前らはアリスに出てくる登場人物だろう?」 

 

帽子屋「んんっ!アリスッ・・・。吾輩たちが心より求め!愛し!すべてを捧げるお方!キミは知っているというのか!?アリスを!」 

 

ツインズ「アリスを知っているの?知ってるなら早く答えて」 

 

青葉「待ってくれっ!いきなりなんなんだ!」 

 

やよい「もしアリスを知っているというなら、ボクも落ち着いてはいられないんだが・・・。青葉くんはアリスを知っているのかな?」 

 

青葉「は?アリスはこの本の主人公で、白ウサギを追いかけてここにやってくるんだろ?」 

 

ツインズ「何言ってるのかな?頭がおかしいんだよ」 

 

青葉「ちゃんと全部読んだことあるわけじゃないから、詳しくは知らないけど。大まかなあらすじは合ってるはずだぞ・・・?」 

 

帽子屋「最初から期待などしていなかったがな・・・。紅茶が冷めてしまった。淹れ直すとしよう・・・」 

 

やよい「えーっと、ね。アリスって言うのはボク達のご主人で、ボク達はアリスのために存在しているんだ。だから、冗談でもアリスの名前を出すのはやめてほしい、かなー」 

 

青葉「・・・つまり、俺と同じように外の世界からアリスってやつが、ここに来てたのか?」 

 

帽子屋「吾輩たちはアリスを喜ばせるために、こうしてずっと待っているのだよ」 

 

やよい「アリスが来なくなって、十年。ボク達はアリスが帰ってくるのをずっと待っているのさ」 

 

青葉「そのアリスは、どうやって帰ってたんだ?」 

 

ツインズ「帰り方?知らないよ」 

 

やおい「ボクたちは青葉くんたちの世界には行くことが出来ないからね。帰る方法ってやつは、わからないんだよ」 

 

帽子屋「まぁ、もしかすれば・・・。女王なら、あるいは・・・。お勧めはしないがな」 

 

ツインズ「なんでお勧めしないのー?女王に関われば殺されちゃうからね」 

 

青葉「女王・・・ね。そこには、トランプの兵士がたくさんいたり・・・か?」 

 

やよい「あれ?知ってるのかな?」 

 

青葉「いや、俺が知っているのは、この世界によく似た本の話だよ」 

 

帽子屋「トランプってのはわからないが、女王の手下はたくさんいるな。殺しても殺しても増えるって噂だ」 

 

ツインズ「誰が殺すの?それは、女王だよ」 

 

青葉「女王には近づくなってか・・・。そういえば、俺とアリス以外にここに来たやつはいないのか?」 

 

帽子屋「代り映えのしない繰り返されるだけの毎日を、楽しく彩るものは何だ?それは一つ。イレギュラーだよ」 

 

やよい「女王様はワガママだからねー。なんでも力づくで手に入れちゃうんだよー」 

 

ツインズ「まだ生きてるかな?どうだろうね、女王様は気まぐれだからね」 

 

青葉「そーゆーことね・・・。お前ら、俺を女王に売るのか?」 

 

ツインズ「どうしよう?何もしないよ」 

 

やよい「ボクたちは何もしないけど、守ってもあげれない、かなー?」 

 

帽子屋「さぁ、コーヒーが入ったぞ。物騒な話はお終いにして、楽しいパーティーの再開といこうか」 

 

 

青葉N「夜が過ぎ、日が昇り、時間だけが過ぎていった」 

 

やよい「大丈夫?また考え事?楽しんでないと帽子屋がまた変な事言い始めるよー?」 

 

青葉「お前たちはいつもこうなのか?」 

 

やよい「帽子屋が言ってたでしょう?変わらない繰り返されるだけの毎日だって」 

 

青葉「楽しいのか?」 

 

やよい「もちろん楽しいよ?ボクたちは自由だからね。やりたいことをやりたいだけ、楽しくやってるんだもの。あ、でも!青葉くんみたいに新しいお友達が出来るのはもっともっと楽しくなれるね!・・・アリスが居ないのは寂しいけど」 

 

青葉「なぁ、アリスの話。聞かせてくれないか?」 

 

帽子屋「アリスはとても優しい子だよ。気が弱くて臆病だけど、誰かのために動けるとても優しい子なのさ」 

 

ツインズ「アリスの凄い所?学校一の美女なんだよ!優勝したんだもん!」 

 

やよい「っ!?びっくりしたぁ・・・。いつからいたのー?」 

 

ツインズ「いつからだろう?アリスって聞こえたから来たんだよ」 

 

青葉「学校一の美女・・・優勝・・・。それって美女コンテストのことか?」 

 

やよい「あ、うん。それ聞いたことがあるよ」 

 

帽子屋「アリスの美しさはこの世の物とは思えないのだよ」 

 

青葉「たしか、歴代優勝者の資料は新聞部の部室にあるとか言ってたよな・・・。でも・・・、その前にここから帰らないと・・・ってか。くそっ」 

 

帽子屋「まぁまぁ、落ちつきたまえ。ここにはどうやってきたんだ?」 

 

青葉「確かなことはわからない。でも、大方予想はついている。本の世界に行けたらって考えた。たぶん、それがこの世界に来る方法なんだろうな」 

 

帽子屋「では、その逆をすればいいのではないか?」 

 

青葉「俺もそう考えた。でも無理だった。そもそも、アリスがこの世界を作って何度も出入りをしていたとすれば。この世界から出たい、この世界はいらない、この世界は嫌だ。なんて考えるのはありえない。それを思えば、この世界はこうやって存在してないだろうからな」 

 

帽子屋「そうか・・・。答えはきっとあるのだ。焦らず世界を見れば・・・あるいは・・・」 

 

ツインズ「ねーねーお腹減らない?減ったよ。もうすぐ夜だからね。今日の晩御飯はなんだろうね?昨日はカレー、一昨日はオムライス。あおばくんが来てからボクの好物ばっかり」 

 

やよい「もうそんな時間かー。そーだなぁ、青葉くんは何が食べたいかな?」 

 

帽子屋「吾輩は、香しい匂いと紅き雫が織り成す、良質なたんぱく質と脂質のコラボレーションによる」 

 

やよい「お肉でしょ、わかってるよ。今は青葉くんに聞いてるの」 

 

青葉「あぁ、俺は特に好き嫌いはないからなんでも・・・」 

 

やよい「なんでもが一番困るんだよー!」 

 

青葉「じゃあカレー」 

 

ツインズ「今日もカレー?ボクは美味しいから好きだよっ!」 

 

やよい「もう・・・そんな適当だとご飯抜きにしちゃうよー?」 

 

青葉「なぁ・・・。この世界の時間と元の世界の時間の流れは同じなのか?」 

 

帽子屋「時間の流れは同じ。最も、時間というものは感覚で長くも短くもなるものだがな」 

 

青葉「じゃあ、空腹も満腹にもならないのはなんでだ?」 

 

ツインズ「ご飯食べる理由?美味しいからだよ!」 

 

やよい「そーだねー。この世界は、別に食べなきゃいけないわけじゃないんだよ。美味しくて楽しいから食べる。それだけかなぁ?ボクの料理美味しいでしょ?」 

 

青葉「お前らが寝ないのも、この世界だからか?」 

 

帽子屋「ここはアリスが作った夢の世界。夢に必要なのは楽しい事だけなのだよ」 

 

やよい「夢の中で寝るなんておかしいし、寝るなんて勿体ないでしょ?」 

 

青葉「夢・・・?」 

 

やよい「ほら、ボクたちだけじゃなくて、青葉くんも眠くならないでしょ?」 

 

青葉「・・・夢」 

 

ツインズ「ねぇご飯まだー?まだメニューすら決まってないよ」 

 

やよい「あぁ、ごめんごめん。すぐ作るねー」 

 

 

 

青葉「明るくなってきたな・・・。ここにきて二回目の朝、か・・・。ははっ、眠くもならない食事も要らない。夢の世界・・・ね。夢・・・夢から覚める方法・・・」 

 

帽子屋「浮かない顔してどうしたんだい?」 

 

青葉「ん?・・・あぁ、帽子屋か。おはよう、何か用か?」 

 

・・・・・・ 

 

青葉「え・・・、あれ・・・。なにが・・・?・・・ここって、図書室?」 

 

青葉「出られたってことか・・・?でもなんで・・・おはよう?夢から覚める、朝の挨拶・・・。それが出るためのキーワードってことか?」 

 

青葉「まぁ、それはおいおい考えるとして・・・。今何時だ?時計は・・・えーっと7時・・・。朝・・・か?じゃあ、あの世界とこの世界の時間はやっぱり同じで良い、ってことだろうな」 

 

青葉「7時なら学校他の生徒も来はじめてる頃だろうしな、教室行ってみるか・・・」 

 

 

海里「あれっ、青葉じゃん。今日は早いねぇ、雪でも振るんじゃないかー?ところで、なぜだろうね。毎日会っているはずなのだが、久しぶりな気がするぞー?」 

 

青葉「海里・・・。俺はこの二日間どこで何をしていた?」 

 

海里「なんだい藪から棒に。どこで何を、なんて言われてもねぇ。そんなのは君自身が一番知っていることだろう?」 

 

青葉「良いから、昨日俺と会ったか?俺と話したか?」 

 

海里「んー・・・昨日も学校はあったわけだし、話ぐらいはしてるんじゃないか?」 

 

青葉「消えてた時の記憶はあいまいになるってことか・・・」 

 

海里「消えてた?なんだそれは?」 

 

青葉「いや、気にするな。そうだ、ちょうどいい。今部室の鍵は持ってるか?」 

 

海里「部室?あぁ、それは持っているが」 

 

青葉「行くぞ」 

 

海里「あ、ちょっと。今日はなんだか強引だな・・・。そんな君も悪くはないが・・・」 

 

 

 

青葉「なぁ。コンテストの資料はどこにある?」 

 

海里「コンテスト?」 

 

青葉「美男美女コンテストだよ。ここに保管されてるって言ってただろう?」 

 

海里「あぁ、それなら・・・これだな」 

 

青葉「あいつらは10年アリスを待ってるって言ってた・・・。ってことはアリスがこの学校に居たのは10年前ってことだから・・・。あった」 

 

海里「んー?何を言っているのかさっぱりわからんが・・・」 

 

青葉「美女コンテスト優勝者、アリス。・・・何だよこれ」 

 

海里「それはきっと、登録名で乗っているからだろうね」 

 

青葉「くそっ・・・手がかりを掴めたって思ったのに・・・」 

 

海里「手がかり?この人が何か関係しているというのか?」 

 

青葉「あぁ。関係している、なんてものじゃない。こいつが人喰い図書室の元凶なんだ」 

 

海里「人喰い図書室の元凶?なぁ、青葉。さっきからずっと話が見えないんだが。詳しく説明してくれないだろうか?」 

 

青葉「あ、あぁ・・・。そうだったな、悪い・・・。えーっと何から説明すればいいんだ・・・?」 

 

海里「青葉でも悩むことがあるんだな。でも、思うままに話してくれればいいさ。どんな突拍子もない事だろうが、青葉が本当だと言うのなら、私は信じるよ」 

 

 

青葉「・・・と言う事があってだな。この神隠しの原因は『不思議の国のアリス』の本だった。そして、それを作り出したのは」 

 

海里「10年前にこの学校にいた、アリスという生徒・・・」 

 

青葉「信じるのか?本の世界だぞ?」 

 

海里「あぁ。信じるとも。青葉はそんな嘘を吐くようなやつじゃないからな」 

 

青葉「そうか。・・・でも手掛かりは、この写真だけだ。アリス・・・」 

 

海里「でも本当に綺麗な人だね・・・。んー・・・偽名か・・・。でも、なぜアリスはそんな世界を作ったのに、それから行かなくなったんだろうね?」 

 

青葉「そりゃ、ここが学校だからだろ。卒業すればここにはもう来ない・・・。そうか。アリスがここの生徒なら、卒業アルバムに顔と名前があるはずだ!」 

 

海里「卒業アルバムか。それなら職員室に保管されていたはずだな」 

 

 

 

先生「なんだー?お前たち、もうすぐ始業時間だぞ」 

 

青葉「あ、有岡先生。ちょうどよかった」 

 

先生「ん?」 

 

海里「あの、今度の新聞の資料を集めたくて、卒業アルバムって見せてもらえたりしませんか?」 

 

先生「卒業アルバム?あぁ・・・、見ることはできるが持ち出しは出来ないぞ?」 

 

海里「今、少し見せてもらえませんか?」 

 

先生「ん?まぁ、始業時間までならな・・・。にしても新聞部も大変だな。毎月いろんな事調べてて・・・。ほら、入っていいぞ」 

 

海里「失礼します」 

 

青葉「失礼しまーす」 

 

青葉「なぁ、新聞の資料って何だよ・・・」(小声) 

 

海里「怪しまれなくていいでしょ?」(小声) 

 

青葉「まぁ・・・な」(小声) 

 

海里「これね・・・こっちが新しいのだから・・・」 

 

青葉「10年前・・・10年前・・・あった」 

 

先生「今月は何の記事を書くんだ?毎月なかなかに鋭い切り込みをした記事で、先生結構好きなんだよ」 

 

海里「学祭の美男美女コンテストの特集を組もうと思ってまして」 

 

青葉「・・・アリス・・・アリス」(小声) 

 

先生「あぁ!そういえば高城、優勝だったよな。いやぁ・・・すごくカッコよくてびっくりしたよ」 

 

海里「あはは・・・ありがとうございます」 

 

青葉「ん?これ・・・有岡・・・進・・・」 

 

海里「あれ?これって・・・」 

 

先生「ん?あぁ、僕もこの学校の卒業生だったからね。・・・懐かしいな」 

 

青葉「先生って、10年前の卒業生だったんですか!?」 

 

先生「あぁ、そうだよ。誰か探しているなら、力になれるかもしれないが・・・」 

 

青葉「あの・・・アリスって生徒知りませんか?」 

 

先生「っ!」 

 

青葉「美女コンテストで優勝された方なんですけど」 

 

先生「すまない。あまり覚えてないな。思い出したら教えてあげるよ。さぁ!ほら、もう時間だ!教室に行くぞ」 

 

青葉「え?ちょっ、先生?」 

 

先生「大槻ー、今日は寝るんじゃないぞー?」 

 

青葉「急にどうしたんですか?まだ10分もありますよ」 

 

先生「ほら、高城も早く」 

 

 

 

青葉「くそっ・・・手掛かりはなしか・・・。もう少し見られれば見つけられたかもしれないんだがな・・・」 

 

海里「なぁ、青葉。アリスの正体がわかったかもしれない・・・」 

 

青葉「え?でも、あのコンテストの写真の人は見当たらなかっただろ?」 

 

海里「有岡進・・・」 

 

青葉「ん?先生がどうかしたのか?」 

 

海里「ありおかすすむ・・・。あり・・・す・・・」 

 

青葉「え?名前の始めを取ってってことか?」 

 

海里「それにあの先生の態度」 

 

青葉「でも、じゃああの写真はどうなる?」 

 

海里「美男美女コンテストには男装も女装も可能だ。不覚にも私が優勝してしまうぐらいにな」 

 

青葉「・・・じゃあ、あのアリスは」 

 

海里「学生時代の先生の女装姿・・・だとしたら、アリスという偽名を使った理由にもならないだろうか?」 

 

青葉「・・・そんなことがあるのか?・・・無いとは言い切れない、か」 

 

海里「どうする?確証はないけどもう一度先生に・・・」 

 

青葉「その前に、確認しておきたいことがある・・・。海里、30分後に第二図書室に来てもらえるか?」 

 

海里「え?第二図書室?」 

 

青葉「もう一度本の世界に行ってくる。まずはアリスが男なのか確かめてくるよ」 

 

海里「・・・わかった」 

 

 

 

 

青葉「よしっ!入れた!」 

 

帽子屋「おや?おやおやおやおや?」 

 

青葉「帽子屋!他の2人はどこだ?」 

 

帽子屋「吾輩は帽子屋。今日は吾輩のなんでもない日♪楽しく楽しくお祝いしましょう♪」 

 

ツインズ「他の二人って誰だろう?僕達の事じゃないかな」 

 

青葉「ツインズ!それにやよいも」 

 

やよい「やぁ、青葉くんじゃないか。また遊びに来てくれたのかい?」 

 

ツインズ「遊ぶの?楽しいこと!?きっと楽しい事だよ」 

 

青葉「お前たちに聞きたい事があって来たんだ!アリスの事で!」 

 

やよい「・・・青葉くん、前にも言ったよね。ボク達にとってアリスはとても大事な存在なんだ。そんなに簡単に口に出されても困るんだよ?」 

 

青葉「そのアリスに、会わせてやるって言ってるんだ」 

 

帽子屋「なんとっ!吾輩はまたアリスのためにお茶会を出来るのですね!」 

 

ツインズ「アリスが来るの!?本当に!?」 

 

帽子屋「今日は吾輩の何でもなくない日~♪アリスに再び会えるかもしれない記念日~♪」 

 

やよい「それが本当なら・・・、どんなにうれしい事でしょうか・・・」 

 

青葉「そのために、質問だ」 

 

ツインズ「何聞かれるのかな?知ってることなら答えれるよ」 

 

青葉「アリスは、男なのか?」 

 

やよい「えぇ。そうですよ。アリスは男性です」 

 

ツインズ「男の子なの?でもとても可愛いんだよ」 

 

青葉「そうか・・・じゃあやっぱり・・・」 

 

やよい「アリスを知っているのですね?」 

 

青葉「あぁ・・・」 

 

 

 

 

海里「青葉ー?戻ってるか・・・?んー・・・あっ・・・。これ・・・」 

 

先生「誰か居るのか?」 

 

海里「えっ!?」 

 

先生「高城じゃないか、こんなところで何をしているんだ?」 

 

海里「え、えーっと。先生こそ、こんなところで何を・・・?」 

 

先生「少し用があってな。ん?その本・・・」 

 

海里「えっ、あっ・・・」 

 

先生「なんだ。別に隠さなくてもいいだろう?」 

 

海里「え・・・いや・・・、なんとなく・・・」 

 

先生「その本、先生に貸してくれないか?」 

 

海里「え?ど、どうするんですか・・・?」 

 

先生「先生は『不思議の国のアリス』がすごく好きでね。少し読みたくなったんだ。ほら、それを渡して」 

 

海里「だ、だめですっ」 

 

先生「うるさいなぁ・・・。いいから渡せって言ってるだろ!!!」 

 

海里「ひっ!!!」 

 

先生「ほら、良い子だからそれを先生に・・・」 

 

 

青葉「やめろ!」 

 

先生「ん・・・?大槻じゃないか・・・いつから・・・。そうか・・・お前、本に入ったな?」 

 

青葉「やっぱり、先生がアリスだったんですね。中のみんながアリスが近くにいるって騒いで居たので、急いで出てきて正解でしたよ」 

 

海里「あ、青葉・・・」 

 

青葉「悪い、少し遅れたな」 

 

先生「まぁいい。なら、その本がボクのものだって知ってるんだろう!さぁ!渡せ!」 

 

青葉「・・・先生は、この本をどうするつもりですか?」 

 

先生「・・・そんなことはどうでもいいだろう?」 

 

青葉「この本は・・・。先生の消したい過去、そうですね」 

 

先生「っ!?・・・さ、さぁね。一体何をわけのわからないことを」 

 

海里「青葉・・・どういうこと?」 

 

青葉「先生は学生時代、いじめられていた」 

 

先生「やめろ・・・」 

 

青葉「あの美女コンテストも自分で応募した訳じゃない。当時、中性的で華奢だった先生は、勝手に応募され女装をさせられた。きっと、それ以外にもいろいろなことがあったのでしょうね」 

 

先生「やめろ、やめろ・・・やめろやめろ!」 

 

青葉「そんな中で自分の居場所を求めて作った世界が、このアリスだった。そうですね?」 

 

 

先生「やめろぉぉおおお!!!もうボクは!昔のボクじゃないんだ!!!生徒たちから慕われる人気者になったんだ!!!」 

 

青葉「別に先生を責めるつもりはありませんよ。それだけきっと努力したのだと思います。尊敬しますよ」 

 

先生「なら・・・それを渡せ・・・。それを消せば、ボクの過去は終わらせれるんだ・・・」 

 

青葉「この本の中に、まだ生徒が閉じ込められています。先生なら、アリスなら救えますよね?」 

 

先生「・・・ボクはもうその本には」 

 

青葉「あなたは教師でしょう!生徒に慕われる良い先生なら、生徒を助けることが出来るはずだ!」 

 

先生「・・・それ・・・は」 

 

青葉「先生が教えてくれたんですよ。『過去を受け入れることが成長に繋がる』って」 

 

先生「・・・あぁ、そうか。・・・そうだった、な。ははっ・・・いつも授業中寝ている君に、教えられるなんて」 

 

青葉「海里、本を先生に・・・」 

 

海里「いいの・・・?」 

 

青葉「本は返します。皆を解放してあげてください。それから先は先生にお任せします。・・・でも、ツインズもやよいも帽子屋も。みんなが先生を待ってましたよ。この本は、消さなきゃいけない程辛い過去だけでは、なかったんじゃないですか?」 

 

先生「・・・ありす・・・みんな」 

 

 

 

 

青葉「ふわぁ~・・・」(あくび) 

 

海里「おやおや、今日も眠そうですなぁー。さては、また徹夜でゲームですかな?」 

 

青葉「残念。昨日は12時には寝た」 

 

海里「寝てるのにまだ寝る気か!」 

 

青葉「俺はいくらでも寝れるぞ・・・」 

 

海里「あぁ、そうだ。本に捕らわれてた生徒だが、みんな無事に帰って来たそうだぞ」 

 

青葉「・・・そうか」 

 

海里「ちなみにあの本は、有岡先生が引き取ったらしい」 

 

青葉「・・・そうか」 

 

海里「興味なさそうだな・・・。君が解決したってのに・・・」 

 

青葉「・・・そうか」 

 

海里「はぁ・・・ぜーんぜん聞いてないや・・・。まぁいい。青葉!これを見てくれ!」 

 

青葉「なんだよ・・・俺は今から寝ようと・・・」 

 

海里「『夢神様』だ!」 

 

青葉「んー・・・?またSNSかよ・・・」 

 

海里「まぁ・・・SNSなんだけど・・・。これ!人喰い図書室なんてレベルの話じゃないっぽいんだよ!」 

 

青葉「ふーん・・・」 

 

海里「なんでも、実際に会って夢を叶えてくれる神様、らしいんだよ」 

 

青葉「また夢ね・・・」 

 

海里「人喰い図書室はネタにできなかったし・・・。ほら!興味湧くだろ!!!」 

 

青葉「あー・・・そーだな・・・」 

 

海里「よし!んじゃ今日の放課後からまた調査開始だ!」