現代芸術13-月に憑かれたピエロ
2023.09.26 10:47
1912年、シェーンベルクの代表作であり、現代音楽の先駆けである「月に憑かれたピエロ」が演奏された。この曲は、この詩を朗読する女優がピアノ伴奏に満足せず、シェーンベルクに委託したものである。ピエロは世紀末から20世紀初頭にかけて、芸術家達の好みのテーマで、不安定な人間の象徴である。
詩のストーリーとしては、月の幻想に憑かれたピエロがあちこちさまよい、遂には死刑を経験し、その魂は故郷に帰っていくというものである。華やかなベルエポックで、ヨーロッパ人は刹那の快楽に溺れ、人間存在の根源を失っている、この批判はハイデガーがやがて哲学にする。
ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」は夜を聖化し、シェーンベルクも美しい「浄夜」を作曲したが、ここではさらに先鋭化して叫びをあげたり、また鎮まったりを繰り返す。まさに作品世界の不安定なムードを見事に表現したのだ。この詩を音楽化することで、自由な現代音楽がスタートした。
小規模な編成や無調音楽には、もちろん権威主義的で大規模コンサートとなった権力批判が潜んでいる。ウィーンやパリの先鋭的芸術家達は自由主義、無政府主義的で帝国主義は大嫌いだったが、旧来のヨーロッパ帝国主義はもはや歯止めを失い、その坩堝の中でとんでもない地獄が発生するのだ。