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森Dragon's Room

グラム gram

2023.09.28 08:23

中世・バイキング時代 ドイツ・北欧

所有者 シグムント シグルド

長さ 2m以上?
出典 「エッダ」「ヴォルスンガ・サガ」「ニーベルンゲンの歌」

※画像は、滝瓶太郎の想像図です。森Dragonにも売っていません。残念!

↑「グラムの切れ味を試すシグルズ」(ヨハネス・ゲールツ、1901年)


 この剣は、中世初期のドイツ、及びヴァイキング時代の北欧における最大の英雄ジークフリート(北欧名はシグルド)の所有した剣です。「ニーベルンゲンの歌」では(グラムはこの話の中ではバルムンクと呼ばれています)、柄まで含めて2mを越える剣として描かれています。「ヴォルスンガ・サガ」にはそのような記述はありませんが、物語が成立した当時のヴァイキングの剣は、刀身の長い両刃のロングソードであったことから、グラムもそのような剣であったと想像されます。(それにしても、2mは長大すぎますが)

 画像の剣は、想像上のものであり、別項のヴィーキング・ソードの形状の方が、実際のものには近いかもしれません。ヴァイキングたちが最高の剣と考えていたものは、ライン川沿岸の職人の手によるものでした。ライン川沿岸ルール地方は現在でも刃物産業が盛んで、特に有名なのがゾーリンゲン地方の刃物です。ハサミやナイフなどで「ゾリンゲン」というのを持っている人も多いと思いますが、意外にもその祖先は「グラム」かも知れませんね。

 ちなみに、刃物の3Sと言えば、ドイツのゾーリンゲン、イギリスのシェフィールド、日本の関、だそうです。




<物語>

グラムの登場

「ヴォルスング・サガ」は、北欧の古い叙事詩である「エッダ」が、ヴァイキング時代アイスランドで散文の形に書き直されたものです。

 物語はシグルドの祖父ヴォルスングという王の話で始まります。ヴォルスングは主神オーディンの子孫であり、その妻は神の僕のワルキューレのひとりフリョーズでした。2人には双子の息子と娘がいて、息子は比類無き勇者であるシグムント、娘もまた比類無き美女でシグニーと言いました。一家は大きな木を囲むようにして作られた家に住み、その木を「子供の幹」と呼んでいました。

 あるとき、長年ヴォルスングの部族と対立していた部族の王シゲイルは、シグニーの美しさにうたれ妻にしたいとヴォルスングに申し出ました。彼はそれで平和が訪れるならと快諾したのです。

 シグニーとシゲイルの婚礼の日、みすぼらしいマントと帽子に身を包んだ片目の男が現れ、子供の幹に持っていた剣を突き刺し、「この剣を抜くことができたものに、褒美としてこの剣を与えよう」と言い残し去っていきました。この男こそが主神オーディンであり、その剣こそがヴォルスング一族に勝利をもたらすグラムだったのです。

 そこで、皆が試しましたが結局剣を抜いたのはシグムント一人だったのです。シゲイルはその剣も欲しくなり、剣の重さの3倍の黄金と交換しようと申し出ましたが、シグムントは「貴方が持ち主としてふさわしいのなら抜けたはずです」とその要求を突っぱねたのでした。これに腹を立てたシゲイルは軍を起こし、シグムントとシグニーを残して皆殺しにしてしまったのでした。

シンフィヨトリ

 シグムントとシグニーは、シゲイルに対する復讐を誓いヴォルスングの血を引く息子を得るために結ばれました。そして生まれたのがシンフィヨトリです。シンフィヨトリはシグムントの元でたくましく成長し、いよいよ復讐のときというときになりましたが、そのたくらみをシゲイルに悟られ、父とともに岩牢に閉じこめられてしまったのです。シグニーによって岩牢に密かに届けられたのがグラムでした。シグムントとシンフィヨトリがグラムを岩に突き立てると、岩はいとも簡単に切り裂かれて二人は脱出に成功したのです。その足でシゲイルの屋敷に火を放ち、復讐は見事なされたのです。しかし、シグニーは夫とともに運命をともにしたのでした。

 シグムントはこうして王になったのですが、シンフィヨトリはある時、毒によって死んでしまいました。

シグルドの誕生

 愛する妹と息子を亡くしてしまったシグムントでしたが、一族のためにヒョルディーズという美しく賢明な女性を后として迎えることになりました。しかし、同じくこの女性を妻に迎えようとしていたリュングという王と戦わざるを得なくなってしまったのです。

 シグムントは、聖剣グラムを振るいリュングの軍とよく戦いましたが、彼の勝利を快く思わなかったオーディンの槍グングニールによってグラムを折られてしまい、戦いに敗れたのでした。(なぜオーディンが彼の敵に回ったのかは不明です)

 彼は死の直前、愛する妻となったヒョルディーズに剣のかけらを託し、息子に渡すよう頼んだのでした。そして、彼の死後ヒョルディーズは無敵の英雄シグルドを産んだのです。

ドラゴンスレイヤー

 シグルドは、レギンという男に育てられました。レギンにはファーフニルという兄がいました。兄弟はかつて神々がドワーフから盗んだ黄金を与えられたのですが、それを兄が独り占めにして自らは竜となってその財宝を守っていたのです。(実はこの黄金にはドワーフの呪いがかかっていたのですが) レギンは、たくましく成長したシグルドを使って財宝を取り戻そうと考えました。シグルドは竜を倒せる剣を鍛えてもらうことを条件としてその申し出を受けたのです。レギンは刀鍛冶として優れた腕を持っていましたが、何度鍛えても、シグルドが金床に剣を打ち付けると折れてしまったのでした。そこで、シグルドは母からグラムの破片を受け取りそれを元に剣を作ってくれるようにレギンに依頼しました。そしてできあがった剣はシグルドが金床に打ち付けると、それをも真っ二つに切り最多のです。グラムの復活です。

 シグルドは、復活グラムを使い見事ファーフニルの変化である竜を退治しました。竜の心臓を食べたことにより鳥の声を聞き取れる用になったと言われている。(ニーベルンゲンの歌では、竜の血を全身に浴びて不死になったと言われている。ただ、肩の中央にのみ月桂樹の葉が落ちたため、そこだけ血を浴びず弱点になったとのことである)

↑ジークフリートの竜殺し(『ジークフリートと神々の黄昏』の挿絵、アーサー・ラッカム、1911年)


剣以外の画像は、『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用