生豆から作る小豆こし餡!
9月のAdvanceレッスンメニューは、「生豆から作る小豆こし餡」と「麩まんじゅう」でした。まず、小豆は渋きりを3回行い、直煮法で軟らかく煮あげました。Basicレッスンで、「粒餡炊き」を行いましたが、その際、なぜ渋きりをするのか?、その方法は?等、詳しくお話ししましたので、今回は受講生の皆様と復習がてら確認しながら行いました。加えて、今回は3回の渋きりを行いましたが、小豆の風味がお好きな方は1回の渋きりでも良いし、よりさっぱりした餡をお好みの方は4回でも5回でも行っても良い旨を付け加えお話ししました。
さぁ、いよいよ餡粒子(呉)の分離です。小豆は、煮ている間に餡粒子(あんりゅうし)、すなわちタンパク質の殻に包まれたでんぷん粒が形成され、同時にカテキンとシアニジンが縮環した(化学反応のひとつ)2種類の美しい紫色を呈する物質が形成されることが知られています。特に、後者の二つの物質は世の中にまだ知られていなかった新規物質で、2019年に名古屋大学の吉田久美教授らが発表した餡の紫色を担う物質であることをお話ししました。詳しい内容は、当HP「美しい紫色の餡 正体解明」をご覧ください。
確かに、餡粒子を分離した際に紫色を確認しましたが、残念ながら写真を撮るのを忘れてしまいました。そして、砂糖を加え煮詰め、完成したこし餡は紫色というより、若干薄い小豆色でした。美しい紫色のこし餡を作るには、渋きり回数を多くして、さらに分離した餡粒子の水さらしを十分に行う必要があるようです。だから、紫色の餡は高価なのですね。
餡粒子を分離するには、こし器を水の中に沈めて、水の中で濾しだします。水の中で濾すのは、摩擦を少なくして餡粒子を壊さないためです。そして、砂糖を加えて煮詰める際も「餡炊きは、強火でヘラ数を少なく」を合言葉に炊き上げます。これも、餡粒子を壊さないためのものです。餡粒子が壊れるとは、タンパク質の殻が破れて中の小豆でんぷんを出てくることです。そうなると、粘った餡が出来上がり美味しくありません。美味しい餡とは、餡粒子が壊れることなく、くちどけの良い餡のことを言います。
くちどけの良い美味しいこし餡が出来上がりました。冷めてから出来上がり量をはかり、加えた砂糖量から、%糖濃度を計算しました。さらに当教室の小豆こし餡の甘さは、一般に販売されているこし餡に比べ、約10%程度甘さ控えめの餡であることも、%糖濃度の計算からご理解いただきました。また、市販の餡にBrix50°とか糖度50°等の表記されていることがありますが、実際のBrix糖度計を使って説明しました。Brix糖度計とは、その昔Brix博士が太陽光が砂糖や塩が溶けている水の中を通ると、屈折率が変化すること、およびその屈折率は溶けている砂糖や塩の濃度によって変化するが、一定であることをを発見したことに由来します。後年、この理論を糖度計として餡のほかに果物の甘味測定などに利用して現在に至っています。ただし、餡にしても果物にしても、糖のほかに屈折率に影響するものが入っていることから、甘味の指標とはなるものの、正確な糖度をあらわすものではないことをご理解いただきました。製餡理論を学び、自分の好みの餡が作れるようになってほしいと願っています。
続いて、「麩まんじゅう」作りです。麩とは、小麦グルテンのことです。今回は、富澤商店の国産 小麦たんぱくを使いました。