Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

inokichi`s work(ラグビーとライオンズと小説)

あかねいろ(38)フラストレーション ー1ー

2023.10.05 06:28

 

 3月末からの春の公式戦に向けて、期末テストの終わった後には練習試合が詰め込まれていた。ここでしっかりと初戦に向けて、そして想定される鷹川工業戦に向けてチームを整えていかないといけない。



  春休みの前の土曜日には、貞桜高校のグラウンドで貞桜と緑川学院と僕らでの3つどもえの練習試合が組まれていた。貞桜はこの年のレベルは僕達とおなじくらいと目され、大会のブロックは反対側で決勝まで行かないと当たらない。緑川学院は東京の大学の附属高校で、大学のラグビーレベルはそれほど高くはないけれども、高校は都大会でベスト4ぐらいまでは行くようになっていた。毎年展開に徹したアグレッシブなラグビーをするチームを作っていて、特に今年は10番に、僕らと同学年の石橋という選手がいて、この子は中学時代から全国に名の通ったプレーヤーで、2年生になれば高校ジャパンに呼ばれるのは間違いないと言われていた。

  共に私立大学の、それもミッション系の名門大学の附属校とあって、練習試合とは言えギャラリーは結構賑やかで、それぞれの学校の父母やら何やらで、合わせて60人くらいはいた。それに比べると僕らの学校は、父母の観戦者は一人もいず、チームとしての僕らがいるだけだった。その雰囲気は、よく言えば少し華やいだ雰囲気であり、悪く言えば、男子校の僕らにすればが浮ついたような感じに見えて、グラウンドの横で着替えている時から、僕らだけ場違いなところに迷い込んでいるような感じがあった。



  9時半からの1試合目が僕たちと貞桜で、25分の一本勝負。基本的にはお互いにファーストチームでの試合ということになっていた。

  僕らと貞桜は同地区のライバル同士ということもあり、毎年数回は練習試合をしている。去年は明らかに貞桜の方が強かったが、今日は様子が大いに違った。 


 出だしの貞桜のキックオフをしっかり確保した僕らは、スクラムハーフからハーフウエー付近にコンテストキックを蹴る。そこに僕と東田さん、そしてブラインドから鹿原も競りかけていく。相手の14番はプレッシャーを受けてか、ジャンプのタイミングを誤ったか、手だけで取ろうとしてあっさりノックオンをする。そのスクラムで僕らはプレッシャーを掛けて、ナンバーエイトがサイドをつき大きくゲインを切る。22m付近でできたラックで貞桜は倒れ込みの反則をし、そこからタッチに蹴った僕らは、ラインアウトからモールを組む。後10mちょっと、というところから組んだドライビングモールは相手のペナルティを2回誘い、2回目のペナルティのあと、横田さんが素早いタップキックからポスト右5mくらいのところに飛び込んだ。



  その後も同じような展開が続いた。

  キックオフを確保してハイパント。相手のバックスリーのキックへの対応が今ひとつということもあり、蹴るたびにマイボールになっていった。そこからは、サイド、サイド、ダメならまたパント。ペナルティがもらえればタッチからドライビングモール。この、絵に描いたようなFW戦がよく決まり、僕らBKの出番は一回しかなかった。それは、ハイパントがミスキックになり、相手の15番がオープンサイドで余裕を持って確保すると、11番にパスをしカウンターを仕掛ける。僕と左ウイングが対峙したがあっさり交わされて、9番が必死に追ったけれども一発でインゴールまで持っていかれてしまったときだけ。谷杉から怒号が飛んできたのは言うまでもない。


  結局僕らはそのカウンターで1トライを失ったけれども、モールとサイドアタックで4トライをとりきり、内容的には完勝した。