第十回:音響監督 長崎行男氏
リズです♪ 今回はアニメファン、声優を志す方なら必読!の、ご回答を頂戴しました!
《おしえて!プロフェッショナル》
『アニメーション』の由来は『アニマ』=ラテン語で〝生命・魂〟。
作画における表情の豊かさ、動きの滑らかさはアニメの柱。だから描き手を〝アニメーター〟と呼ぶのでしょう。しかし、音を発さない生物はいません。
息遣いや衣擦れのひとつまで、音がなければ〝生命・魂〟を充分に現せません。
さらには、同じ台詞でも演出によってキャラクターの性質が変わります。物語の説得力も違ってきます。BGMなど、楽曲も大切ですよね。
それら〝音の演出〟を統括しているのが、音響監督です。
ハイ。今回のゲストさんは、音響監督の長崎行男さんです!
『わたしが見た現場』に限って書きますね (2011年頃/某ドラマCD/脚本を書かせて戴きました)。
まず、長崎さんのコミュ力に圧倒されました。
アフレコでは、シーンごと声優さんのリハを受けてからの相談があります。
セリフの意図について「あのニュアンスでよかったの?」に、回りくどく長々と説明する私。ここで、長崎さんの解釈→通訳がスッと、声優さんに一言で伝わります (詳細になる場合は、対面で話していらした)。
打ち合わせでも、まどろっこしい話を明確にしてくださる場面多々。
〝どうしたらズバッと伝わるのか〟ということをご存知です。しかも空気感が快い♪
そして、精巧さがまた圧倒的。
ダビング作業にて。収録した声と、効果音、音楽を併せるのですが。
「そのセリフ2秒さげて」……この2秒で、全然印象が違ってくるんです。絶妙。〝画のないドラマCDだからこそ〟だったのかも知れませんが、鳥肌モノでした。
楽曲が流れるタイミングもドンピシャで。早朝のタバックでザワーッと感情が波立ちました。
いま、早朝と言ったでしょ。午前中に始まって午前4時頃までかかったんです。妥協なき集中力の持続に、長崎さんって超人?と思いました(笑)
その後も、長崎さんが関わられた作品を拝見するたび〝音〟に感動しております。
作画に気を取られがちだった私。アニメファンとして開眼させて戴きました……!
《今回のプロフェッショナルさん》
- お名前:長崎行男さん
- ご職業:音響監督、プロデューサー、音楽プロデューサー、脚本家
- 『ラブライブ!』『ONE PIECE エピソードオブルフィ』『ノイタミナ枠』など、数々の作品にご参加。
- 小室哲哉氏(当時26歳)が音楽を担当したOVA『吸血鬼ハンター"D"(1985)』のサントラ/ミニアルバムが秀逸だったんだけど、あのOVAのプロデューサーが長崎さんと知って、うお!ってなった。現在『劇場版シティーハンター(2019)』の音響監督も務めていらっしゃいますが、やはり『GET WILD』なんですかね……??
《十問十答》(問7〜9特別版です)
1)ご職業をお聞かせください。また、このお仕事に就かれて何年ですか?
アニメーションの音響監督をやっています。
と言っても、普通の方には馴染みのない職業だと思いますので、簡単に補足すると、アニメ制作に於ける音的なパートの取り纏め役で、具体的には声優のキャスティング&セリフ収録のディレクション、効果音等の指示、音楽の発注と選曲などをしております。
会社勤めを辞めて、フリーランスになってから始めたのですが、かれこれ15年になります。
2)この職種の魅力、社会的役割はなんだと思いますか?
本来、アニメは子供向けのモノで、子供にも分かり易く社会の仕組みや人間関係などを理解してもらう物語性を持った作品だと思います。
ただ、現在は青年向け、大人向けのアニメも量産されており、数としては子供向けの作品を上回っています。 なので、誰でも楽しめて、精神的な満足感を覚えてもらうことに意義を見出しています。
3)職業柄、モテるな~と思うことはありますか?
音響監督をしていて、モテたことはありません。
僕自身がもっと若ければ、話は変わって来ると思いますが・・・。
というのは、制作されるアニメ作品の傾向から、女性キャストの大半が10代から20代なんです。 気分は、父親ですね。
4)この職業を目指し始めたのはいつですか? なぜ目指そうと思ったのですか?
40代後半で、それまで勤めていた会社を辞めた時です。
それまでの経歴(レコーディング・ディレクター、シナリオ・ライター、音楽プロデューサー、アニメ&ゲーム・プロデューサー等々)から、アニメの音響監督になるために必要な経験値を積んでいると、自分なりに判断したからです。
5)「これが誇りだ」と思う、エピソード、モットーをお聞かせください。
「誇り」だと思うことは、特にありません。
ですが、過去に自分が関わった作品を「好きだ」と言ってくれる人に出会うと嬉しくなります。
6)「これだけはやめられない」お仕事と無関係の趣味はありますか?
積ん読、ですかね。
本を買うという行為自体が、僕にとっては癒しになっているので、これだけはやめられません。
部屋に本を積んで、それが一杯になると、倉庫に移動。
倉庫が一杯になると、倉庫整理と称して、手伝ってくれた若い人に興味ある本を持って帰ってもらう。 ということを繰り返しています。
7)「これだけは観ておいたほうがいい」映像作品はなんですか?
僕にとってのベスト10とかはありますが、それは人それぞれだと思います。
自分で一期一会の出会いを探すべきです。 それから映画は必ず、映画館で観た方がいいです。
一人でもいいし、友だちでもいいし、恋人でもいいですよね。
誰と観たか、その季節、その時の天気、見終わった後に話した会話、すべてが記憶に残りますから。
8)声優を目指す若人に一言、お願いします。
現状がそうなっていないので、少し言い難いのですが、本来、声優というのは選ばれた人がなるべき職業だと思います。
声優の前に、先ず、役者になりたいという想い(人前に立って、形のない何かを表現したいという抑えきれない衝動)があり、更に特徴的な声を持ち、声優としての特殊技能を会得した人だけが生き残れる世界なので。
それから、自分自身を客観的に見る目を養うこと。
声優という夢を追い続けるも良し、きっぱり諦めるも良し。
いずれにしろ、自分自身を客観的に見つめることが出来なければ、不可能なので。
時の流れは思っているより速いので、愚図愚図していると、取り返しがつかなくなりますよ。
9)この職業を目指す若人に一言、お願いします。
アニメの音響監督という職業は、日本独自のモノです。
テレビアニメの黎明期、絵作りの作業と音作りの作業を分業化して、作業効率を上げるために作られた職種であると聞いています。
それ以前、ラジオドラマのディレクターとか、演劇の演出家とか、変わったところでは、フィルムの編集マンなどをやっていた方々が音響監督という新しい職業に就かれました。
新しいとはいえ、既に50年以上の歴史があります。
ここ10年くらいで、テレビアニメの制作本数が圧倒的に増え、また、ゲームなどの音声収録のディレクションも任されるようになったので、音響監督という肩書きを持つ人の数も加速度的に増えました。
まあ、僕もその内の一人という訳です。
とても面白い職業なので、目指す価値はあると思いますよ。
10)天国(極楽)に着きました。神様(仏様)は、あなたになんと声をかけると思いますか?
どう、十分に楽しんだかい?
《まとめ》
おぉ〜! これもう、わたしのまとめとか不要だよね!
6) の倉庫整理。私も参加させて戴いたことがあり、そこでお友達と出会えました。長崎さんのコミュ力は周囲に及ぼすパワーも絶大で、人と人を繋げる力もお持ちです。ご本人は意図されていないのかも、だけど(笑)
若干、脱線します。
8) の『役者になりたい』『人前に立ち、形のない何かを表現したいという抑えきれない衝動』『更に特徴的な声を持ち』で、思い出しました。
旅行など、私は岸田今日子さんとご一緒する機会が多く、岸田さんって普段から岸田さんで。舞台や映画で拝見しても「ああ、今日子さんだな」という感じだったんですね。
〝つまり彼女は、四六時中、常に岸田今日子を表現していた〟
それが解ったのは『ミス・マープル』の吹替を聴いたときでした。
〝表現したい。私だけの表現、私の声を味わって〟が、唯一無二だった。声質もさることながら、声を出すときの〝意識〟が違う。細部の揺らぎまでに、そこにないハズの機微すら孕ませている。
なぜだか、声だけを聴いたとき、そのことに気づいたんです。
長崎さんが仰る『自分自身を客観的に見る目』があったからこそ、だと思います。ひとが望む〝岸田今日子〟を理解し、体現していた。
役者ってそういう生き物なんだな、と。いま、勝手に噛み締めています。
9) 日本独自のモノ!? これは知りませんでした。ディズニーなどの仕組みが知りたいですね。
10) はもう、お人柄が表れています。お仕事でも倉庫整理でも、長崎さんはいつも楽しんでいらっしゃるもの。〝生きる〟が豊か。
なんだか今回は、濃厚になりました。私も興奮気味で書いたもので、走っちゃったかな? 脱線、失敬でした!
『時の流れは思っているより速い』……わたしもこっからがんばるぞっ。
長崎行男さん、お忙しいなか本当にありがとうございました!また倉庫整理にも参加させてください♪
これからも素晴らしい作品を待望しておりますね。
次回予告はTwitterにて♪
こう、ご期待っ(´▽`*)