心感デッサン
2018.09.05 17:47
『夜歩行』
臼い濁った墨をこぼした中に
蝋燭のろうを垂らした海の闇
舟の進んだ跡が残る波模様
わたくしがどれ程どれ程歩いても
頭上のアンドロメダはどかっと座って
大きな黒いお口を開けたまま
微動だにも動かないのだ
冷たい風が雪礫のよふに
顔や首や指の間に絡まっては跳ね返り
いっそう冷たさが痛くなる
空のインクが地にも降ったから
辺り一面何処を見ても殺風景で
わたくしの息だけがハッハッと
生きて立ち上る
真っ黒な木々の頭は切り揃えられ
夜に生きて這えようとしているのに
カサッと落ち葉を踏んだら
落ち葉は朽ち果て息絶えた
へんてこな夜に生きる獣が通りすぎ
ハッとする 目は垂直に
それでもわたくしは空を仰ぐ
木々の枝がわたくしの頭を触っても
木々の枝がわたくしの袖を
待って、待ってと引っ張っても
わたくしは歩く 途方もない道を
疾風の如く 駆け抜けて…