リトアニアへ5~ケルナヴェに行く
ヴィリニュスからバスで1時間ほどのケルナヴェ古代遺跡に出かけました。ケルナヴェはネリス川の丘陵にあり、かつてのリトアニア大公国の首都で、旧石器時代(約200万年前)から定住がはじまっていたとされています。
遺跡、豊かな自然、そしてアクセスの悪さから観光客はほぼ行かない=人が少ない、よって私の好物だらけです。
アクセスが悪いと言っても、バスの本数が極端に少ないという事だけ(特に帰って来る時、1本見送ったら次の便まで4時間くらい空く。たったそれくらいの事です。)で、乗り換えなしの気楽な小旅行です。
トラカイや空港に向かう時はバスのチケット売り場で座席の確保が必要でしたが、ケルナヴェに向かう時も同じ手配かしらと窓口に向かうと「バス停に行って運転手から直接チケットを買ってね。10番よ。」と言われました。
なるほどやって来たのは可愛いベンツ、そして自動車教習所の送迎バスを彷彿とさせる大きさ。
車内は家族旅行の様な雰囲気で揺られること約1時間、途中ローラ・インガルスが走ってきそうな丘の風景を越え、強制的にスピードダウンさせる盛りあがった横断歩道をゆっさゆっさと越え、なんのアナウンスもない自由降車区域のようなところも越え(アナウンスはヴィリニュスを境にない)ケルナヴェに到着しました。
停留所代わりの目印です。ちなみに停留所は行きはあるけど帰りはテキトー(!)
バスを降りたら教会まで続く通りを進みます。
この通りは夏至祭の時は大変賑わうそうですが、催し物がない平日はとても静か。大きな木が時折風に揺れて奏でる葉音と、シジュウカラなどの小鳥のさえずりが聞こえてくるだけ。深呼吸が気持ちいいです。
教会にたどり着きました。
この教会の手前を左に向かうと、ケルナヴェ古代遺跡の始まりです。
レンガ造りの教会は1920年に建立されていますが、遺跡内には14世紀頃に建てられた教会の跡地として基礎部分が残っています。また木の間に建てられた可愛らしい木製の礼拝堂は1930年代にリトアニアの古典的な建築様式を残すために移設されたものだそうです。そう言えばトラカイのお城もこんな円錐の屋根でした。
一番高いところからケルナヴェ古代遺跡の全景。
奥の流れるのがネリス川。12,3世紀頃にはもこもことした丘の上に木造の要塞が建造されていたそうです(この地に攻め入ったドイツ騎士団により記録されている)。
おそらくネリス川の浸食によってつくられた広大な河岸段丘を利用してつくられた要塞だと思います。
ものすごく地元の話と前置きしますが、私の住む相模原市でこの光景を例えるならば、女子美術大学や北里病院や県立公園辺りから、民家もろともなかったことにして相模川を臨むとこんな感じではなかろうかと(興味がわいたらグーグルマップで各々みたら良い)。都市部から車で1時間の河岸段丘・・・途端に込み上げる親近感。
リトアニアの国土には大きな山が無く比較的平らな国で、そのおかげで交易拠点にもなったし、反面ドイツやポーランド、スウェーデン、ロシアなどに攻められたり占領されたりと争いの多い国でもあったから、いつの時代も河川の段丘は護衛の要だったと思うんですよね。
もし攻め入られたらこの道に石なり槍なり鉄砲玉なり飛んできたのか・・・想像膨らませつつお丘を渡り歩きました。
誰もいないとスケールがイマイチ伝わらないと思うので夫が丘の一つに登っているところがこちらです↓。暢気に歌を口ずさみながらハイキングのレベルではないアップダウン。
ネリス川に最も近い丘から川の方角を見た風景がこちら。丁度誰かが歩いてゆきますね。
視界が広い。もう広すぎて丘を転がってしまいたい気分ですが、丘については階段以外、進入禁止です。
川のほとりでは旧石器時代の遺跡が残っているとのことでしたが、残念ながら行って帰ってこれる程体力に自信がなかった(丘を全制覇して疲れた)のであきらめました。
近くの博物館の展示によると、旧石器時代の集落の生活体験ができるイベントがあるようで、土器を焼いたりして面白そうでしたよ。
13世紀にドイツに攻められ焼き払われて以降、丘は堆積物で埋まるだけだったことが功を奏し、遺跡を昔のままの姿でとどめることができたケルナヴェ古代遺跡。200万年前から人が生活し続けている土地をほぼ変わりない姿で体感できるなんて実に嬉しい体験でした。だって町なかに○○史跡と石碑があるだけとはまるで違うのですから。
それにしても風がよく通る気持ちのいい場所でした。夏至祭で賑やかになるケルナヴェも観てみたいなぁ・・・・。
で、帰りのバスは来た時と同じバス同じ運転手さんでした。チケット買う時に目を合わせたらお互いにフフッてなりました。
<アナウンスなきバス>
初めて行く場所へアナウンスがないバスに乗るのはなかなかの緊張感があります。
バスに乗る際「このレーンかな?隣にも同じ時間発のケルナヴェ経由があるね」と戸惑っていたら並んでいた地元のお母さんに「ケルナヴェ(+ジェスチャーでこっち)」と教えてもらいました。
そしてそろそろ降りる頃じゃないのかとそわそわしていたら、先ほどのお母さんがおもむろに力強く振り向き「ここ!!!」と眼ヂカラで教えてくれました。ありがとう!!アーチュン!!