演奏の原理
2018.09.08 13:25
友人のユーホニァウム奏者のT君が、これからの自分の演奏と指導するにあたり、どんな本を読めば良いかとFacebookで聞いていたので、私はハンス・ペーター・シュミッツ氏の『演奏の原理』を上げた。
この本は自分にとって思い出深き本でもある。学生時代、村松フルートが1年間吉田雅夫先生の『演奏の原理』について講習会を開いてくれた。
吉田先生は、両手に大きな紙袋を持ち、ふぅふぅとご老体に鞭打ってエレベーターの中から現れた。
中身はいろんな専門書であった。
吉田先生は「本当はこんなに本を講義に持って来てはあまり良い講義とは言えないんだなぁ!」と笑いながらおっしゃって席に着かれた。
しかし、あの時の講習会があったから、今でも『演奏の原理』を開くと吉田先生がおっしゃってくださった一語一句を思い出す。
吉田雅夫先生の監修・通訳された前書きや序論、特にモイーズ『ソノリテについて』の訳者あとがきは力強く、そのメッセージで励まされる。
その後、軽井沢で行われたハンス・ペーター・シュミッツの講習会。
吉田雅夫先生が『演奏の原理』の監修者の言葉に書かれた通り、ハンス・ペーター・シュミッツ氏の言葉によって「心の暗闇にひそんでいる無意識の世界にかがやく星のような思い」だった。
講習会の最後、通訳の増永先生が涙ながらに訳されたシュミッツ氏の最後のメッセージを今でも思い出す。
「君たちは、今、自然界の法則から音楽に通じる法則を学んだ。その法則は、いかに自然に歌うことであり演奏することだ。だから逆にその法則を知っているからこそ、本能を信じて自分の音楽を創りなさい。そして常に良い趣味を持ちなさい。」
『演奏の原理』を読むと原点に戻れることが出来る。そして、改めて認識することがある。