第8回十字軍11-聖王の犠牲聖地十字軍終了
2018.09.09 05:08
ルイより少し先に妹が帰天している。福者イザベル、彼女はフリードリヒ2世の子との政略結婚を拒否して修道女になり、兄の援助でロンシャン修道院を設立して、貧者と病者に生涯を捧げ1270年2月に帰天。そして兄の最期の命令も戦争の継続ではなく平和だった。
兄の死に間に合わなかったシャルルは、疫病にやられた軍をシチリアに帰還させた。しかしここでさらに不幸が襲う。大嵐が到来し、船が沈没し、千人単位で兵が死亡した。航海中にやられなかったことだけが不幸中の幸いだった。
上陸したとはいえ、アフリカで罹った疫病で、王族が次々に亡くなった。新王フィリップ3世は先に帰路についたが、南イタリアで洪水に遭遇して、王妃が落馬、身重のまま亡くなってしまった。ローマからフランスに帰る十字軍はまさに葬列そのものであった。
1271年、ルイ9世の遺体はパリのノートルダムで公開され、ミサを受けて彼がつくったサンドニ大聖堂の王家の墓に葬られた。ヴァチカンの落胆は察するに余りある。結局ルイ19世の犠牲によって約200年続いた「聖地奪回」の十字軍は終わりを告げた。それは神の御業かどうかは神のみぞというものである。
下はルイ9世の柩を運ぶ息子フィリップ3世