オーバー・ザ・レインボー
オーバー・ザ・レインボー
Over the Rainbow
2004年11月9日 キネカ大森にて
(2002年:韓国:109分:監督 アン・ジヌ)
『イル・マーレ』→建築デザイナー、『情事』→義理の姉に恋をする青年、『純愛譜』→さえない公務員、『ラスト・プレゼント』→売れないコメディアン、『黒水仙』→刑事(デカと読んでください)・・・と私が観た映画でひとつも同じ役をやっていないイ・ジョンジェさん。
今回は気象予報士!です。いいなぁ、イ・ジョンジェさんの気象予報士。これまたいかにもっていうリアリティあります。
固定したキャラクターイメージを持たないカメレオン的な役者さんは個人的には大好きですね。
この映画ではなんと初の大学生役もやっていてそれが1990年代前半の大学生でなんとももっさりしているところも良し!
事故で記憶を失うのではなく、部分的に思い出せなくなってしまってなんとも不安な社会復帰をした気象予報士さん、ジンス。
家に戻ると知らない女性からの意味深な留守電が・・・同居している弟は「兄さんの恋人がくれたんだろ?」というシーズー犬、プップを抱えて出てくる。さっぱり思い当たることがない。しかもその恋人とのことは友達にも内緒にしていたらしいので、誰もはっきり言い切れない。
そこで再会した大学時代の写真サークルの同級生、ヨニ(『菊花の香り』のチャン・ジニョン)達と「恋人探し」が始まる。
小物・・・電話、写真、スライド、時計、フリージアの花、英語の詩、「虹の彼方に」の曲、そしてキーワードの「虹」・・・あらゆる所に過去のヒントが潜んでいて、するりとジンスやヨニがわいわい楽しくやっていた大学生生活の様子に切り替わります。その切り替わり方がとても上手くてビリー・ワイルダーの映画のよう。
ジンスは明日を予想する仕事に対して、ヨニは地下鉄の遺失物係で「忘れ去られてしまったもの」を大事に保管するのが仕事。
誰も取りに来ない忘れ物にはたきをぱたぱたかけるヨニです。
『菊花の香り』でもサバサバとした表情が爽やかだったのですが、ここでもちょっとボーイッシュで目がくりくりと動く表情が可愛らしい。
シリアスな場面より、馬鹿馬鹿しい大騒ぎをしている大学サークルのおちゃらけた雰囲気(同じ役者さんがやっていますから、ちょっと老けてる大学生)と、大学を出てそれぞれ仕事を持つようになっった大人のつきあい・・・が交互にきちんと描かれていて、脇のキャラクターも厳しい割には自分に甘い先輩、おちゃらけ友達、変わってしまったまたは全くかわらない友人それぞれの様子がとてもほのぼの。。。
今の大学生が見たらわからないかもしれないのですが、私は同じくらいの時に大学生だったので、あのわいわい、がやがや、きゃ~きゃ~の雰囲気が微笑ましくて懐かしくて。
ジンスの恋人探しをすることによって周りの人間も「楽しかったあの頃」を思い出すという仕組みにもなっていますね。
気象予報士ということで、天気がとても重要な役割を果たしていて特に雨のシーンはとても綺麗です。
ニュースの天気予報の視聴率を上げろ!と言われて、あれこれ工夫、『雨に唄えば』のジーン・ケリーのような雨のダンスを取り入れてみたり・・・と仕事の奮闘ぶりもいいですね。
とてもファンタジックなラブ・ストーリーなのですが、現実をきちんと描いているので見ていて違和感なく、小物使いや伏線のはり方も緻密であっても、とてもささやかで懐かしく微笑ましい所が好感。