変身
2018.09.09 09:14
変身
Die Verwandlung
2004年11月18日 渋谷 ユーロスペースにて
(2002年:ロシア:90分:監督 ワレーリィ・フォーキン)
不条理小説といわれるカフカの『変身』
これをどう映像化するのか、理由なく突然毒虫に変身してしまったグレーゴル・ザムザをどう描くのか・・・とても興味ありました。
最初に雨の降るプラハの街に汽車が着く。石畳の上に雨が降り注ぎ、汽車からは水蒸気がたちのぼる・・・という風景が重厚で美しい。そして雨の中を家に帰った青年、グレーゴル・ザムザ。
そして朝起きると変身、していて本人も家族もびっくり驚愕なのですが、台詞は少なくパントマイム風に描いているのですね。
何故、こんなことが・・・というのは家族にとっても災難。しかし本人はもう人間ではない。人間として接していた家族が、だんだん虫けらとしてグレーゴルに接するようになる、その変化をブラック・ホームドラマ的にしています。
観ていてグレーゴル役のエヴケーニイ・ミローノフの変身ぶりが最初は、ユーモラスなのですが、だんだん怖くなってくる。
そしてグレーゴルが見る夢。その夢はとても閉鎖的で息がつまるような狭い悪夢。時には真っ白に光り輝く外の世界。この夢がマグリットの絵のようにまた不条理なんですね。不可解を通り越して不条理。
家族から見放されてしまった主人公と、突然、厄介者になってしまった主人公から解放される家族。最後のプラハの市電の中での両親と妹の至福の顔がまた怖い。美しくて、ユーモラスで、哀しく、残酷な映画となっていました。