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更夜飯店

雲の南へ

2018.09.09 09:16

雲の南へ

雲的南方(South of the Clouds)

2004年11月21日 有楽町朝日ホールにて(第5回東京フィルメックス)

(2003年:中国:100分:監督 チュウ・ウェン(朱文)

これは、60歳になった1人の男が、過去の夢を追う・・・というものだと思います。

北方に住むダーチンは、娘や友人の反対を振り切って、金もそんなにないのに遠方の雲南地方への旅行を計画する。

何故、ダーチンが雲南へ行きたいのか・・・それはあまり明確には語られないのですが、若いころ雲南地方への転勤を断って結婚したことから、その後の人生で常に「あの時、雲南に行っていれば・・・」という後悔の念があるから、らしい。

「もし、あの時○○していたら(又は○○していなかったら)」という気持ちはある程度の年齢の人は誰でも持っているものでしょう。

そして現実から逃避したくなるとその「もし」は夢になる。

ですから、ダーチンの旅ははっきりとした目的があるわけでなく、雲南で会う人もいない・・・そんなふらふらとした気持ちが、ダーチンだけでなく、周りの人の描き方を含めて、情感を持って語られていきます。

年は同じでも妙に健康元気で、珍妙な気孔を自分で考えたりしている友人、仕事に疲れてなんとか方向転換をしたいと考えてる娘、雲南でダーチンを案内することになる何故か裕福な青年、ダーチンが売春婦にだまされて雲南のホテルに拘留されているとき、妙に親切だが、はっきりとした態度が出せない警察署長(映画監督の田荘荘)・・・といった何故か○○な人々の描き方が上手い。

ふらふらしている人々を、遠景のロングショットで映す、しかし、最後、涙を流すダーチンの顔をアップでじっくり撮る。

監督の親の世代というのは色々と辛い時期を過ごしたはずで、息子の世代から見た親の世代です。

監督は実際は親の世代には反抗的で共感できない子供、青年時代を過ごしたそうですが、親が夢見たものに、ある真実があるのではないか、という模索の気持ちとだんだん自分が、そんな夢を持ち始めたのだろうという共感の念が、実はさりげなく見え隠れしていますね。